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第二十一話 決戦、関ヶ原(下)

 狼煙を上げ、今か今かと待っていると、南宮山の毛利軍が動き始めた! 背後から、家康本隊を突こうということらしい。


 毛利勢の下山開始をみたせいか、小早川軍も松尾山から駆け下りてきた。史実通りの大谷隊攻撃のためではなく、東軍の横腹を突くために。


 今まで傍観していた例の四将も小早川軍に呼応して、大谷隊と交戦中だった藤堂・京極隊に攻撃を始めた。


 西軍全てが参戦したというわけである。関ヶ原の戦いは西軍が鶴翼の陣を敷いていて、裏切り者が出なければ必勝の戦いだったと聞いたことがある。その言葉通り、どんどんこちら側が押し始めた。


 南宮山を駆け下りた毛利軍、そしてその後方に陣を構えていた長宗我部盛親・長束正家軍は抑えとして配置されていたらしい池田輝政、浅野長政らに襲い掛かったようだ。

 毛利秀元、吉川広家、安国寺恵瓊、長束正家に加え、史実では、大津城攻略隊に参加していた毛利元康の兵も加わり、兵数は優に三万を超える。抑えの部隊の壊滅は時間の問題だろう。


 毛利軍が抑えの部隊と交戦を始めたころ、笹尾山付近では大きく情勢が変わった。


 大谷、立花、鍋島、小早川、四将の攻撃を受けた、藤堂・京極隊が耐え切れず退却を開始。それに奮い立った宇喜多隊も福島隊に猛攻を仕掛け、押し始めたのである。


 藤堂・京極隊が退却すると次に目標となったのは福島隊であった。宇喜多隊に押され続け、もとから劣勢だったところを横から大軍に突かれ、さすがの福島隊も大打撃を蒙ったようで、退却していくところを追撃していると「おのれえ!」という正則君の叫び声が聞こえてきたそうである。


 俺の陣がある笹尾山の麓で猛烈な攻撃を掛けてきていた黒田さん、細川さん、加藤さん、田中さんといったみなさんと左近の軍との戦闘も、友軍の大活躍に奮起した兵士たちのおかげで盛り返し始めた。


 次々と退却を始める東軍諸隊に焦ったのか、家康本隊が本格的に前線に繰り出してきた。退路が毛利軍に塞がれてしまったので、ここで勝つしか方法はないと考えたのだろう。


 だが家康にとっては悲しく、俺にとって嬉しい出来事が家康本隊が前進し始めたときに起こった。毛利軍を食い止めていた池田・浅野両隊が壊滅したのである。


 まだ、山内一豊と有馬豊氏の両将の軍は残っていたのだったが、有馬隊はあっという間に壊滅、なんと山内隊は戦わずして敗走を始めた。


 結局、戦いは一日で終わった。もちろん歴史通りの東軍の勝利ではなく、西軍の勝利で。


 一番の敵と考えていた家康本隊も退路を断たれた状態で宇喜多、大谷、立花、鍋島、島津、小早川の軍と毛利、長宗我部、安国寺、長束の軍に挟撃され激戦の末、壊滅した。

 東軍に加担する諸将もことごとく全滅。たいがいの指揮官クラスの将はわずかな手勢を連れて逃亡を始めたらしい。

 

 総大将である家康は討死にした。自ら刀を持って、戦ったそうであるが……多勢に無勢だった。

 

 戦闘が完全に終わった夜、俺は西軍諸将全員を招いて祝勝の宴を開いた。


 宴が始まって、まっさきに話し掛けてきたのは宇喜多秀家だった。


「石田殿、こたびの戦は大勝利でございましたな。内府めも運の尽き、首になってしもうたわけじゃ! ハハハッ!」

 

 酒を飲みながら豪快に笑う秀家。事実、家康の首は木箱に収められてこの笹尾山の陣に送られてきていたのだが……到底、俺は見る気にはならない。


「ハハハッ! 左様ですな。これで太閤様のご恩に報いることができました」

「石田殿も忠義者ですの。ところで、内府めに加担した諸将の処分は決めておいでですかな? 主力だった福島、加藤といった輩は石田殿を殺そうとしていたほどの奴らですが」


 戦いに必死でなにも考えていなかった……チラリと金吾殿のほうを向く。どうやら四将の誰かひとりと酒を飲みながら話し合っているようだ。味方してくれた諸将の加増、恩賞や逆に敵対した諸将の処分も考えておかないと。徳川家……どうしよう?



 

 


 


 

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