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第十一話 領内巡視

 次の日俺は昨日、伏見城下へ向かった時に連れて行ったメンバーを引き連れ、領内巡視へと出かけた。


 まずは、城下町へと向かう。見た感じ、なかなか栄えているようだ。茶屋や料亭、雑貨屋に米屋、魚屋がところせましと立ち並び、露天商もたくさんいる。


「この町が栄えているのも殿のおかげでございます」


 途中、立ち寄った茶屋でそんな感謝の言葉を店主から掛けられた。三成も人望はともかく、内政に関する才能があったことは確かなようだ。


 城下町を一通り見て回ると、次に俺は郊外へ向かった。城下町をうろうろするのも楽しいのだが、領主としては領内をくまなく巡察して、農民の生活にも気をかけなければならない。


 農村のほうに向かっていると、平三郎が説明をしてきた。


「殿! これから向かうのは、古橋村という村でござる。飢饉に襲われたとき、以前の殿が米を援助したり、年貢を免除したりしたので、村人はみな、殿を慕っております」


 そんなことを話していると農作業をしている領民を見かけた。熱心にやっているようなので、邪魔をしないようにそのまま通り過ぎようとした。が、領民のほうがこちらに気づいたらしく、こちらに向かってきて平伏してきた。


「石田様! このような村にまた、おいでくださいまして……」

「いやまあ、領内の巡視をしていてね」

「それで、こんな村まで……まことに畏れ多いことで」

「ところで、お主の名は?」

「はい、与次郎と申します」

「与次郎か……農作業、頑張ってくれ」

「私のようなものにまでお言葉をかけてくださるなんて……やっぱり、石田殿でございます」


 本当に慕われていたようで、村の巡察を続けていると、何回もこんな場面に出会った。


 領内巡視を終えたその夜、俺はまたもや計五人で飯を食うことにした。


「殿、これで御領地のことはだいだい分かりましたな」と勘兵衛。

「ああ、そうだけど……一年後に迫ってる合戦のことで頭が」


 そう、関ケ原の合戦のことである。成り行きに任せていたら、絶対に敗北する。今のうちにもっと策を練らねば……



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