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魔法学生の非日常茶飯事  作者: 岩原和鳴
一年生・一学期編
6/110

自習と噂と三人組と

「だぁ~終わったあぁ~」


七時間目の終了を知らせるチャイムが鳴り終わり、ジャッジが大きく背伸びをする。

彼は元々、勉強は得意ではない。むしろ壊滅的といえるレベルだ。

そのうえ、この一週間でわかったことだが、この学校の授業レベルは非常に高い。

勉強は得意な方だと自負している僕でも、うかうかしていられないほどだ。

やはり、世界トップクラスの国立高等学校という看板は伊達ではないという事だろう。


「さて、部屋に戻ろうぜー二人とも」


「へいへい」


ジャッジとクエストが鞄を肩にかけ、椅子から立ち上がる。

それを見た僕も、鞄を持ち、腰を上げる。

すると、誰かからポンと右肩を叩かれた。

なんだろう、と思い叩かれた方を振り向く。そこにはエーリとリファーダが教科書とノートを抱えて立っていた。


「ごめんね、ロン。君って今日の放課後、何か用事あるかい?」


「もし暇だったら、私たちの勉強にちょっと付き合ってくれないかな?」


二人が少し困ったような顔で訪ねてくる。

まあ僕も今日は部屋で授業の復習をしようと思っていたしちょうどいいだろう。


「僕でよかったら別にいいよ。どこでする?」


「ありがとう!じゃあ、一階にある学生広場でどうだい?」


学生広場か。確かにあそこならお互いに教え合うにはいい場所だろう。

学生広場とは、一階にあるどの学年の生徒も自由に使える広い談話室のことだ。

まだ、入学してから一週間しかたっていないが僕も一度だけ行った事がある。

オレンジ色の照明や木でできた温かみのある机や椅子は非常に雰囲気がよかった記憶がある。


「分かった、じゃあさっそく…」


「おーい何やってんだ?ロン」


教室の外で僕を待っていたらしいクエストが僕を呼びに教室のドアを開ける。

なんだか「待ちくたびれた」とでもいいたげな雰囲気だ。


「ああ、ごめんクエスト。僕ちょっとこの二人と勉強してから部屋に戻るよ。」


「ふーん了解。相変わらず勉強熱心だなーお前は」


そう言うと彼は「じゃーな」と言ってドアを閉め、寮の部屋へと帰っていった。


「さて、じゃあ行こうか」


「うん、よろしく頼むわよーロン先生」


「せ、先生って…そこまで期待されるとなんだかプレッシャーが、、、」


そんな僕の弱気発言をきいたリファーダは「冗談よ」とクスクス笑い、教室のドアを開けた。





 * * * * *







「ねえロン、この計算って…」


「ああ、それはその解き方よりも本当はこっちの公式を使う方が…」


僕らが教室を出て、あれから一時間後。

エーリもリファーダも、なかなか理解が早く、思ったよりもスラスラと問題を解いていく。

どうやら、二人とも主に数学が分からなかったようで、その肝心な分からない問題も、かなり高度な部類の問題だった。


(まあ、僕もいい復習になるな…)


当初は一人でやるつもりだったが、他人に教えながら問題を考えたほうが自分の理解も深まりやすい。

今度からは、ジャッジ辺りに無理やり勉強を教えようかな、などと考えていると、問題を解き終わったらしいリファーダが顔を上げ、緑色の瞳でこちらを見てきた。


「どうしたの、リファーダ?」


「いや…ずっと気になってたことがあるんだけどね」


なんだろうか。この一週間の間、僕はそこまでリファーダを話した回数は少ない。

それなのに、疑問なんて全く検討もつかない。


「気になってたこと?」


「ロン達三人組ってさ、中学から同じなの?」


えっ?と予想していなかった疑問に思わず。すっとんきょうな声が出る。

隣に座っていたエーリも「あーそれ、僕もちょっと気になってた」と問題を解く手を休め、顔を上げる。


「まあ、中学からじゃなくて、だいたい五歳ぐらいからの知り合いだけど…」


「えっ!?そんなに昔からの知り合いなの!?」


「へー幼馴染みってやつだね」


「まあそうだね…何だかんだでもう、十年以上も一緒にいる訳だからね」


ふと、昔の記憶に思いを張り巡らせる。

そうか、もうそんなに経つのかと時の流れの速さに驚く。

いつの間にかもう高校生になっていたのだ。


「そういえば、三人ってどうしてこの学校に入学してきたの?」


「えっと…簡単に言えば魔法を鍛えるため、かな」


リファーダの質問攻めにややしどろもどろになりながら答える。


「というか、何で急にそんな事聞いてくるの?」


このままでは質問の嵐になってしまう。

そう判断した僕はこっちから質問を投げ掛ける。


「だって、入学式から有名よあなたたち。『とんでもない三人組の問題児が来た!』てね」


「あーどうやら上級生達の間でも噂になってるらしいね。この一週間、どこでも君たちの噂を聞くよ

何でも、『中学時代にその学校の教師全員をたった三人で倒した』とか色々ね」


突然告げられた事実に驚愕する。

いつの間にそんな噂が流れてたんだ…ていうか三人組って入学式の時に変な事をしたのはクエストとジャッジじゃないか…!!

僕別になんにもしてないのに…!!


(まあ、中学時代に教師全員を僕ら三人で倒したっていうのは本当だけどさ…)


でもあれも僕は悪くない。あれはジャッジとクエストが火種で始まった事件であって僕は一緒に罪を着せられそうになったから、反撃しただけだ。そもそもあれは結局先生達の勘違いで僕たちは何も悪くなかったし。


「いや…別に僕たちはそんなに変なことはしてないよ、ああいうのは基本ジャッジが…」


ドゴオオオオオォォォン!!!


そう言い終わる前に談話室の隣から耳をつんざくような爆音が飛び込んできた。

驚いた僕たちは、会話を一旦止め、談話室を飛び出した。


「いったい何が…!!」


なんとか冷静に現状を把握することを試みる。

すると、巻き起こる煙のなかから非常に聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「オラァ!!クエスト!!いい加減オレのアイス返せやコラァ!!」


「はぁ!?ふざけんじゃねえ!!名前書いてねえお前の管理能力が悪いんだろうが!!」


「んだとこのコソドロがぁ!!」


「やるかオラァ!!上等だよ、お前のその剣ごとオレの魔法でかき消してやるよ!!」


「やれるもんならやってみろよザコがぁ!!てめえこそ、二度と再生できねえ位に切り刻んでやるからな!!」


お互いにブチギレながら、周りの事など全く気にせずに、クエストはその常人を越えた身体能力で暴れまわり、ジャッジは所かまわず剣を振り回している。


ひとまずこの二人を止めなければ。

今までの僕の経験上、こうなった二人を放っておくといつもロクな事がないのだ。


「おい、こんなところで何やってんだよ二人とも!一旦落ち着いて…」


「「うるせえ!!!!」」


急にこちらにクエストが投げた壁の破片とジャッジの剣で壊された廊下の破片が飛んできた。


「痛った!!」


その二つは見事に僕の額にクリーンヒット。

思わず目が眩み、膝を折る。

全く仕方ないな。ここは僕が穏便に…







なんてことが、できるわけがなかった。








「何やってんだよ二人とも!!僕が止めろっつってんだから大人しく止めろよ低脳ども!!」


「ああ!?うっせえなロン!!邪魔すんならお前もぶった斬るぞ!!」


「ああもう全員うっぜえなぁ!!こうなったらロンもジャッジもまとめてぶっとばしてやるよぉ!!」


「なんだと!?やってみろよ僕を本当にぶっとばせるんならな!!」


そのまま、僕は感情にまかせて、地面に手をつき無数の壁を錬成し、二人をぶっ飛ばす。

すると、ジャッジが剣の衝撃波を飛ばしてくるもクエストにかき消され、殴られる。

その隙に僕がクエストを蹴り飛ばすが、すぐさまジャッジの飛び蹴りが僕の頭に命中。

そして、僕が壁に手をつき、ジャッジが剣を振り上げ、クエストの足元にヒビが入った瞬間……







「何をやっているのだ?お前らは」








飛び込んできたドス黒い怒りが含まれた声に僕たちはピタっと動きを止める。

恐る恐る、声のした方を降りむくとそこにはおぞましい程の魔力を放っているマソート先生の姿があった。



「いい度胸だな…クエスト、ロン、ジャッジ」


先生がゆっくりとこちらに近づいてくる。

まずい、これは怒っているというレベルじゃない…!!


「いや、これは…」


「なんといいますか…」


「僕は止めようとしていただけで…」


「あっ!お前ずりいぞ!!元はといえばジャッジが!!」


「はあ!?ふざけんなよ!お前が俺のプリンを食うから…!つうかロンだってめちゃくちゃ壊してんじゃねえか!!」


「僕が悪いってのか!?そもそも君たちがこんなところで暴れるから、、!!」


再び僕たちの言い争いが始まる。

ふざけるな、僕は止めようとしていただけだ。なぜこんなことに巻き込まれなくてはならないんだ。

悪いのは僕じゃなくてこいつら二人が…


「『クエスト・マジカント、ロン・マグナカルト、ジャッジ・クルベス』お前ら三人には今後一週間この学校中の清掃の罰則を与える。精進するように」


先生が目が一切笑っていない笑顔で告げる。

そう告げると先生は振り返りさらに一言付け加えた。


「もしサボるようなこと、もしくは今回のようなことがあれば…」


先生がゆっくりとこちらをふりむき、僕たち三人を見て…








「……お前ら三人。地獄行きな」






それだけ言い残すと、先生は来た道を引き返して帰っていった。

僕たちは、ガクンと膝をおり脱力する。


「…やっちまったな…」


「「…ああ…」」


クエストが呟いたその言葉に僕とジャッジは脱力しながら返事を返す。

その時に、いつのまにか集まっていた生徒や他の先生達に気付く。

しかし、それに気づいたところでもはやどうすることも出来ない。

ヨロヨロと立ち上がり、僕たちは半ば放心状態でフラフラと寮の部屋へ帰っていった。



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