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新入生の実力

「おう、クエスト!お前も無事にA組か!」


教室のドアを開けると椅子に座っていたジャッジの能天気な声が飛んできた。

この野郎…こちとらお前のせいで悪目立ちしたんだぞ…!


「ほら座りなよクエスト、君の席は僕の後ろだよ」


「おうサンキュ…よっこいせっと」


ロンに指定された席に腰かける。

周りの生徒も全員席に座っている様だ。


とりあえずオレは一通りの筆記用具が入った筆箱を取り出す。

すると、勢いよく教室のドアが開いた。


「よし、全員いるようだな」


そう言って緑色を髪をした男性が入ってきた。

おそらく、このクラスの担任の先生だろうか。ていうか、あの人…


「なあロン、あの人ってさ」


「うん、教頭の長話を止めた人だね」


あ、やっぱりそうか。他の奴ら(ジャッジ以外)も気付いているようだ。


「今日からこのクラスの担任を務める『マソート・クロム』だ。よろしく頼む」


『マソート』か…『マソート先生』って呼ぶかな。


「それと、突然だが今から君たちの能力の確認の為、模擬試験を行うぞ、全員外に出ろ!」


…は!?

いやいきなりすぎだろ。初っぱなから試験かよ。

そう言い終わった先生はさっそく教室から出ていった。

ていうかあの人ドアの扱い雑すぎだろ…


「さーて、早速授業か!腕がなるぜ~~!」


「何を聞いてたんだお前…授業じゃなくて試験だよ」


「別に変わらねえよ、要はいいとこ見せりゃいいんだろ?いいからさっさと行こうぜ!」


そう言うとジャッジは教室を飛び出し、走っていった。


(…ていうかアイツが走っていった方向…)


「なあロン」


「うん、逆方向だね」


あれだけ迷惑をかけられたのだ。

オレとロンに、ジャッジを追いかけるという選択肢はあるわけがなかった。






 * * * * *








「よし!全員揃ったな!」


ぜえぜえと肩で息をしているジャッジを確認した先生は仁王立ちでオレたちの前に立っている。

因みに、ジャッジは先程まで、先生に説教を食らっていた。

おめでとうジャッジ。お前は初めてA組に入り初めて先生に怒られた生徒だ。ざまあみろ。


「試験内容は簡単。これから俺がランダムに二人選ぶ、その二人組で10分間の模擬戦闘を行え!因みに、この試験で俺がこのクラスにふさわしくないような戦い方、実力を見せれば即座に別クラスに転入させるからな!覚悟して挑め!」


うわ早速かよ…入学初日からずいぶんハードな試験だな。

周りの生徒も少し緊張しているような顔をしている。

そりゃそうだ、この状況でいつも通りの奴なんて…


「なあロン、ちょっと背中痒いんだけどかいてくんねえ?」


「僕に話しかけるな!ちょっとは空気読めよ!」


はい、前言撤回。よかったジャッジの隣にいなくて。


「ほう、そこの三人組、随分余裕があるようだな…?」


三人組ってオレもかよーーーーー!今オレ何にも喋ってなかっただろーーーー!!


「早速、実力を見せてもらうとしよう、『ジャッジ・クルベス』と『エーリ・シュルク』お前らで組め!」


「最初から俺か!いいぜ先生、俺の実力みせてやるよ!」


意気揚々とジャッジはいつの間にか作られていた戦闘フィールドに走っていく。

それをみた青い髪の『エーリ』と呼ばれた男子も、フィールドに近づいていった。


「このフィールドは誰が入って10分たつか、どちらかが戦闘不能になれば出ることができる魔法式が組み込まれている。それにどんな魔法を使ってもフィールド外に影響はない。安心して思う存分戦うといい」


それを聞いたジャッジが腰にかけた剣の柄を握り、エーリは両の手を握る。


「ねえクエスト、ジャッジは勝てるかな?」


「個人的には腹立つから負けて欲しいが…まあ勝つだろ」


「だよねぇ」


エーリには悪いがオレ達はジャッジの事をよく知っているからこそそう考える。

見たところエーリは何も武器を持っていないため、おそらく能力系魔導士だろう。

個人的な差はあるが、能力系…つまり武器を必要としない魔法を使う魔導士は接近戦に弱い。

そして、肝心のジャッジの魔法は…


「えっとエーリだっけお前?よろしくな!」


「こちらこそ、でもこの勝負勝たせてもらうよ、僕のプライドにかけてね」


そういって両者がそれぞれ臨戦態勢にはいる。

さあ、勝負の始まりの合図は……






「始めええええぇぇぇぇ!!!!」






先生の鶴の一声だ。







「はぁっ!!」


エーリの周りから紫の電気を帯びた魔法の玉が10個ほど発生し、ジャッジに凄まじいスピードで襲いかかる。

確かにA組に入ったのは伊達じゃない実力はあるようだ。発生させるスピードもだが、一つ一つの魔力も高い。

しかし、その魔法はジャッジには届かない。何故なら…


「遅いぜ!!」


ジャッジは腰の剣を抜くが速く、エーリの魔法を瞬時に切り裂いた。


「やるな、、ならこれはどうだ!!」


エーリが右手を前に掲げると同時にジャッジの周りに雷の檻が発生する。


「うおっ!何だ!?」


「これなら斬ることもできるものか!」


いつの間にかジャッジの周りには無数の雷の玉が発生していた。

確かにこの数は並みの剣士では防げないだろう。


「行けっ!!」


エーリが右手の指を鳴らすと同時にジャッジの周りの雷が爆発した。


ズガアアアン!!!!


凄まじい砂煙が上がる。

しかしフィールド外への影響はなくオレ達にまでその砂煙が届くことはない。


「すげえ、、随分高度な魔法だな」


「ああ、雷の檻でジャッジの動きを抑え、その隙にあれほどの数の魔法を発生させるなんて、、」


素直に感嘆の息が漏れる。オレもロンも今の戦い方は素直に凄いと思わざるをえなかった。

砂煙の僅かな間から、エーリの勝利を確信した笑みがちらと見える。

確かにあれは、少し強いぐらいの魔導士なら耐えられないだろう……







そう、『少し』強いぐらいなら。






「あ~邪魔だなこの砂煙、うざったくてしょうがねえ」


その言葉が言い終わったのと同時に今までフィールドを囲っていた砂煙が瞬く間に吹き飛ばされる。

いや、正確には『剣を振った衝撃』で吹き飛ばされたのだ。


「な…!?」


「悪いなエーリ、斬れねえと思ったら大間違いだぜ?」


驚きを隠せないエーリに向かって、走っていくジャッジ。

しかし、エーリも冷静さを取り戻したのかすぐに雷の閃光を発現。しかし、それら全てをジャッジは迷いなく斬り裂いていく。


「馬鹿な、、どうやって!?」


「答え合わせは勝負の後でなっ!!」


ジャッジはその勢いのまま、エーリのすぐ前まで踏み込む。

エーリもすぐに危険を察知し、バックステップで距離をとる。が…


「だから遅いっての!!」


目にも止まらぬ速さで剣を振るい、エーリを空へと浮かび上がらせる。

すぐに体制を建て直すエーリ、そのまま、空中で下にいるジャッジに向かって右手を掲げる。


「まだだ…!!『紫電キャノン』!!」


エーリから紫色の雷のビームが放たれる。

しかし、ジャッジに慌てる様子はない。

むしろ、その目は非常に落ち着いている。


「『刀神流技』…」


剣を掲げ、一直線にエーリの魔法へと向ける。

ジャッジが斬ろうとしているのはエーリの魔法でも、エーリ自身でもなく……








純粋な、ただの、『一直線』だ。








「『雷閃斬』!!」



ジャッジの雷を帯びた剣はエーリの魔法、そしてその先にいたエーリ自身すら貫いた。


「がはっ…」


そのまま、エーリは重力に従い地に落ちる。

それと同時に、フィールドを包んでいた結界がフッと消えた。


「勝負あり!勝者、『ジャッジ・クルベス』!!」


先生により、ジャッジの勝利が確定される。

周りの生徒達もエーリの魔法にも、そしてジャッジの剣の速さにも、驚きを隠せないようだ。


「おいエーリ、楽しかったぜ、お前すげえな!」


ジャッジが倒れたエーリに駆け寄り、手を伸ばす。

エーリも、そこまでのダメージではなかったようでその手を持ち、ゆっくりと立ち上がった。


「君こそ凄いね…まさか負けると思わなかったよ」


「まあ、俺から剣を取ったら何にも残らねえからな!」


笑い合いながら、ジャッジとエーリは握手をかわす。

少しハラハラしたが、やはりジャッジが勝った。オレもロンも少し安堵する。

ロンがジャッジに駆け寄っていき、オレもそれに続くようにジャッジ達のもとに近づいた。


「さすがジャッジ。『聖剣術士(ソードマスター)』の称号は伊達じゃないな」


「まあな、途中ちょっとヤバい場面もあったが、、、」


聖剣術士(ソードマスター)!?」


オレの言葉を聞いたエーリが急に大声を上げる。

周りの奴らも心なしかざわざし始めたようだ。


「ん?聖剣術士(ソードマスター)がどうかしたのか?」


「ソ、ソードマスターって…剣術士の最上位の階級じゃ…?」


「へ?…あーそう言えば二年前、『聖剣術士試験』受けに行ったときに試験官が何か言ってたなぁ…」


「お前、二年前にあの試験の詳細を知らずに受けに行ってたのか?」


「おう、ていうかこの試験を俺に勧めたのロンじゃなかったか?」


「いや、僕もあの時冗談のつもりで言ったんだけど、、、まさか受かるとは思ってなかったよ。」


衝撃の事実。

通りであの時のロンが吃驚(びっくり)していたはずだ。

因みに、説明しておくと『聖剣術士』てのはさっきもいった通り剣術士の最上級の階級。

簡単に言えば超難しい国家資格だ。

だからジャッジが合格したと聞いたときは驚いたのだが…


「おい、お喋りはそこまでにしておけ。すぐに次に戦う奴らは決まっているんだ」


先生がオレ達の会話をさえぎり、他の生徒の名簿を見る。


「次は『ガブレフ・ドワート』と『フェニー・スカッシュ』!両者、フィールド前に出ろ!」

名を呼ばれたガタイのいい男子と随分明るそうな雰囲気を放つ女子が前に出る。


「お、もう次の試合か!今度は見る側だから楽しみだ!」


「そうだね、僕らも早くフィールドから離れよう」


エーリに促され、オレ達はフィールドから離れ、他の皆と同じ場所に移動する


「さて…今度はどんな魔法だろうな?」


思わず出てしまったオレの言葉にロンは少し笑って「さあ?」と呟いた。



ジャッジの魔法

 刀神流技といわれる剣術で、剣に属性が付いた魔法を宿し、攻撃する魔法。


剣術士の階級

 簡単に言えば資格みたいなもので位の順番は

初級剣術士<中級剣術士<上級剣術士<高等剣術士<王宮剣術士<聖剣術士(ソードマスター)

です。右に行くほど位が上になります。

一応、高等剣術士以上で他人に剣術を教える資格があるという設定です。


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