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忘れようのない最悪な入学式

多くの学生で賑わっているこの道は、今日で三回目だ。

一回目は学校見学、二回目は受験、そして今回は……


「おい、クエスト、お前ちゃんと入学証明書は持ってきてんのか?」


「ほらこの通り、お前こそちゃんとあんのかよ?」


「へへ、ちゃんとここにあるっての」


そういってオレの親友であるコイツ、『ジャッジ・クルベス』は制服の胸ポケットから入学証明書を取り出す。

するとオレの左にいる金髪の青年が口を開いた。


「いっておくけどジャッジ、くれぐれも余計なことはするなよ?」


「なんだよロン、それならクエストにだって言えよ」


「それこそなんでだよ、オレよりお前のほうが危なっかしいっての」


「んだとコラ!なんならここで今すぐ白黒つけてやっても……」


「言ったそばからやめてよ二人とも!ここ、校門の前だよ!」


オレのもう一人の親友、『ロン・マグナカルト』に言われて気が付いた。

オレたちが言い争っている間に、どうやら目的の場所の入り口まで来ていたようだ。


「うわ、、なにあの三人組」


「入学早々変な奴ら」


「あいつらとは関わらないでおこうぜ」


オレ達と同じであろう新入生からの視線が痛い。

なんかコソコソ悪口言われてるし。


「ほら見ろ言ったそばから!ていうか『三人組』って僕も含まれてるじゃないか!」


「いやあ悪い悪い、もうさっさと行こうぜ」


「そうそう、入学早々に変な目で見られるのは御免だしな」


「もう遅いよ、、だから言ったのに全く、、」






 * * * * *








「入学おめでとう新入生諸君、私がこの学校の教頭である『グルーダ・ポルポス』だ。君たちは今日、この名誉ある世界でも有数の高等学校『フォーラム学園』の記念すべき第300期生として迎えられた。君たちも存じていると思うが、我が校では武術、座学、魔法といった全てにおいて世界トップレベルの授業を行っており君たちも我が校に恥じぬような生活を云々ーーー」


長い、長すぎる。

もうこの話、四回目だぞ。

ていうかなんだ『我が校』って。お前教頭だろ。お前の学校じゃないだろ。

ふと、横を見ればジャッジは一時間程前に「終わったら起こして」と言ったきり全く起きる気配がない。

左にいるロンはさっきからずっと左上にある窓の外を見ている。何が見えているんだコイツは。

すると、後ろにいた若い男の先生が教頭を止めだした。

よかった。このままだと五回目にいくところだったぞ。


「えーという訳で、この辺で今年度の入学式は終了とする。新入生はこのままここに残り、クラス分けを行う。」


やっと、終わった。耳がしんどい。今までこんな表現使ったこと無かったけど耳がしんどい。

さて、気持ちを入れ直そう。やっとクラス分けか。

この学校のクラス分けは成績によって決まる。

武術系が得意ならE組、座学が得意ならD組、魔法が得意ならC組。

そしてそれら全てがまんべんなくできる奴らはB組。

更に、総合成績が上位30人は、A組に分けられる。

今回は受験のときの成績を吟味して分けられるらしい。


「やっとクラス分けか、、ねえ、クエスト。A組じゃなかったらどうする?」


「不安になるようなこと言うなよ、、」


「でも君、純正魔法試験0点だろ?」


そう、オレは魔法そのものの力を図る『純正魔法試験』では0点だ。

結果はまだ見ていないが絶対にそうだ。何故ならオレの魔法は『そういうもの』だからだ。だが、、、


「大丈夫だよ、他は満点に近い自信がある。オレよりもジャッジのほうが心配だろ。」


「まあ、筆記試験で10点あるかないかだからね、ジャッジは、、、」


大丈夫。オレは、いや、オレ達はA組に選ばれる。この日の為に3年間頑張ったんだ。報われたっていいはずだ。


「それでは、A組の生徒を発表する!呼ばれた者から教室に行け!」


ついに来た。心臓が鼓動でうるさい。隣のロンも冷静に見えるが少し汗をかいているのが分かる。

大丈夫だ、オレ達は絶対に……


「一人目!『ジャッジ・クルベス』!」


いきなり呼ばれたのはジャッジか。心配だった一人が早々と発表されオレも安堵する。

さあ、行けジャッジ、お前がA組の一番乗り……




……あ、起こすの忘れてた。



「『ジャッジ・クルベス』!!早く来い!!!」


「うわあああああああ!!!なんだ!?地震か!?火事か!?」


「来いと言っている!!せっかくのA組行きを白紙にされたいか!!」


「えっ?A組?何の話だ?俺がA組行きって……マジで!?いよっしゃああああ!!!」


「早く来いと言っているのが分からんか……!!!」


「あっやべ!!えっととりあえずクエスト!ロン!先行っとくぜ!」


そう言って走っていくジャッジを周りの生徒はくすくす笑っている。

いや、ジャッジだけに対してではなく、正確にはオレとロンも含めた三人組を笑っているのだ。


「あの馬鹿、、」


「まあ、いいじゃんか、後でシメようぜ」


「そうだね、、一度痛い目見てもらおう、、」


ロンよ、目に光がこもってないぞ、、、


「次!『ロン・マグナカルト』!!」


「はぁ、、て、え!?ハッハイ!!」


急に呼ばれたロンがあわてて前に出る。

またしても、周りで小さな笑いの渦が生じた。


(てゆーか、もうオレだけじゃねえか、、!)


不味い、この状況でオレ一人は辛い。周りの奴らの視線と興味は完全にオレに向いている。

いや、あの二人はすぐに呼ばれたんだ。オレもすぐに呼ばれ……


「次!『ムーニィ・テラー』!」


「ハイ」


くそ!!オレじゃねえのかよ!!

オレとは全く関係にない女子が前に出る。いや、まだ三人しかよばれてない。


(大丈夫、、ジャッジが選ばれたんだからオレだって……)


オレに今出来ることは周りの視線に耐えながら、自分の名が呼ばれるのを待つことだけだった。






 * * * * *





 

「次!『サラム・グルニル!』」


「ヨッシャ!!」


はい、28人目。

今のめちゃくちゃいい返事をした赤いトゲトゲの髪の奴で28人目だ。


(まてまて、何でまだ呼ばれねえんだ!?)


まさか本当にオレはダメだったのだろうか。

いや、まだ二人残ってる。まだチャンスはある!


「次!」


(頼む頼むお願いします何でもします神様がいるのであれば神様お願いしますオレはA組に行きたいんですマジでお願いしますホント何でもしますから神様仏様悪魔様ああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーー)


「『クエスト・マジカント』!!」


「いよっしゃ見たかコラーーーーーーーー!!!!」






…………あ。







オレは今何をしているんだろうか


何故、オレは大声を出したんだろうか


何故、オレの座っていたイスが倒れているんだろうか


何故、オレは拳を上に掲げ立っているんだろうか


何故、オレの周りのやつらはそんな鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているのだろうか


そしてなによりも……


何故、教頭は顔を真っ赤にしてオレを睨んでいるのだろうか




「『クエスト・マジカントォォオオオオ』!!!」



「あああ、すいません!!すいません!!ちょっとテンション上がっちゃったんです!!マジスイマッセンでしたぁぁぁあ!!!」




これがオレ達『三人組』の忘れようのない最悪な入学式だった。





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