閑話休題(教頭は問題を起こしたくない)
ずるぺったんずるぺったん
誠史郎が廊下を歩いていると、
「あー桜井先生」
呼び止められ、ん?と振り向くと小林教頭がいた。
『うへー、めんどくせー』
顔には出さないが心の声が叫ぶ。
「どうですかお仕事のほうは」
教頭がにじにじと近づいてくる。
「いやあ、ヒマですねぇこの学校は」
引きつりを隠しながらニッコリ微笑む。
「本当ですか?」
「本当ですよ~。ちょっと北斗先生と話をして
少し寝ていくとだいぶ
落ち着いていくみたいですねえ」
「どんな話をしてます?」
「それはプライバシーがあるので親にも担任にも
余程のことがないと話せませんねえ」
「じゃあやっぱり、何かわが校にも問題がありそうですか?」
「あのですねー教頭先生、いまどき悩みを抱えてない中学生なんていないですよ?
大なり小なり問題はあると思いますし、大人になろうと一生懸命もがいている年齢です。
大人はまだ子ども扱いするし、そのギャップに挟まれて、
自分は何者か?なにをすべきか?と、自己同一性に悩み苦しんでいる世代ですよ」
「担任とかが保護者にビクビクしてる場合じゃないですね
頼れる存在にならないと北斗先生や私に話したくないときには
心の電話センターや子供相談センターのポスターを大きく貼ってありますしね」
「そ、そうですか。とにかく問題だけは起こさないでくださいよ」
そう言って教頭はスタスタと去っていく。
「あんたみたいなのが変に事を大きくするんだけどね・・・」
ため息ついてずるぺったんずるぺったん誠史郎は保健室に戻っていった。