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竜生、初デート(保護者)する(予定)

コンコン



「? はーい」


「お出かけの時間だゴラぁ!!」


「ッ!」



いきなり謎の言葉を吐きつつ鍵の開いた部屋のドアを蹴り破ってきたのは龍斗だった。竜生は反射的に手をこすって涙を拭き、龍斗の方を見る。龍斗はと言えば、どこか底意地の悪そうな邪悪な笑みを浮かべている。



「おう竜生、おはよう」


「ぁ、オハヨゴザイマス……」


「あっ、お前鏡割っちゃってんじゃん! どうすんのコレ?」


「あ、すみません、すぐ片付けます……」


「あーあ、洗面台とかの部分修理って結構手間かかるんだよなぁ。何で壊した? 木の棒とかモノで? それとも手? それとも頭突き?」



 不思議なことに龍斗は壊した理由でなく壊すのに使ったものを聞いてきた



「ごめんなさい……その、手です」


「見せてみそ、ん、ま大丈夫か。んで、責任取ってまず片付けな。あとでお前に罰を与えるからな~?」



鏡を割るのに使った右手を出すと、龍斗は手を掴み傷がないか確かめた。



「はい……えっと、理由を聞かないんですか?」


「何が?」


「鏡を壊した理由ですよ!」


「あぁ、正直モノが壊れたりするのはよくあるんだよな。力加減間違えた、ここに入りたての龍化者とかがよくモノを壊すんよ。一番ヒドかったのは床をブチ抜いたやつがいたな。ありゃあさすがに大変だったな」


「そういうことですか……」


「ホラ、ボサッとすんなって。僕はホウキとチリトリと取ってくるから破片の大きいの集めときな。幸い土間だし、ガムテはいらんでしょ。クツん中に破片入ってるかもだから注意して片付けとけよー」



 その後竜生はホウキとチリトリを取ってきた龍斗と二人で割れた鏡の片づけをした。今思えば、わざわざ片づけを手伝ってくれていることにお礼を言っておくべきだったと、龍斗が立ち去った後で気づいた。




▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



 その日の夜、龍殺しの寮の食堂で竜生が夕食を食べていると龍斗が隣に座った。御盆を持っていないのでここで夕食は食べないのだろう。今日は別の人が夕飯当番なのだろうか



「おう、昼間は災難だったな。洗面台直るまで小っちゃい鏡が支給されるはずだが、届いたか?」


「はい、正直小さいので十分なんですけどね……」


「まー男にはあんまり必要なもんじゃねーわな。あ、そうだそうだ。鏡割れてたインパクトで完全に忘れてたんだけど、ホレ」



 龍斗がポケットから取り出したのは封筒だった。どこにでもある茶封筒だ。特にハンコや封がしてあるわけでないようだ。フタを開けてみる



バララララララ!!



「っひぃ?!」



 ドッキリ封筒だったようだ。フタを開けようとすると中にある仕掛けが動いて封筒が激しく振動する。それを見て口元抑えて笑いをこらえながら別の茶封筒を取り出す龍斗



「おーすまんすまん、こっちだったわー(棒読み)」


「………」



龍斗はまた似たような茶封筒を取り出し竜生に渡す。茶封筒を受け取り開けてみると



バララララララ!!



「…………」


「おーすまんすまん、こっちだったわー(棒読み)」


「天丼は2回までのほうがいいと思いますけど?」


「…………こっちが本物な」



 普段は大人しい竜生の珍しいジト目に見られた龍斗は、気まずそうに先ほど取り出した茶封筒を仕舞い別の白い封筒を取り出す。この微妙なイタズラにかける執念はなんなのだろうか


 竜生が封筒を開けると、そこにはシンプルに紙一枚が折りたたまれて入っていた。そこに書かれていたのは



『白石竜生へ

 貴殿へ割り振られた部屋の洗面台の鏡を割った咎は以下の罰をもって帳消しとする

〇月×日に行われる、アリス・ウロボロス及びイヴ・ウロボロスの外出時の保護者を務めることを命じる。

詳細は赤羽龍斗に聞くように。  ソロモン・レクター』



「これって……?」


「カンタンに言えば幼女二人とデートだな。病室が爆発して掃除したの覚えてる?」


「はい、僕が入院して初日の」



 竜生の手をにぎにぎしてきた金髪と銀髪の幼女姉妹のことだ。髪色やその時に起こったイベント(病室爆発)も相まって脳裏に焼き付いている。何の忌避もなく竜生に接し、無垢な笑顔で元気そうだったのを覚えている



「そそ。まぁ大概インパクトあったからなぁ。その時居た双子の姉妹なんだが、最近能力も安定してきたことだしソロモンと僕とで外出許可を出そうと思ってな。やっぱ子どもを閉じ込めとくのは人間としてアレだし。ということで外で色々と学んできてほしいんだが、さすがに幼女二人だけで外に出すのは躊躇われる」


「それで、僕に二人の保護者をやれと?」


「そういうこと。お金は姉妹とは別に渡す、残ったらそのままもらってくれていい。ただ二人から目を離さないでほしいんだよ。子どもとはいえ龍化者だ、本気になりゃ一人で一般人3桁はオダブツにできる。お前の能力は属性に耐性が高いらしいし、双子とは相性もいいだろう。いろんな意味でな」


「その相性というのはよくわかりませんけど、わかりました」


「まぁその前に念の為顔合わせして友好は深めてもらうがな。ホラ、女の子って色々とめんどくs……フクザツだろ?」


「普段あの寮で苦労されてるみたいなんで、聞かなかったことにしておきます……」


「ありがとう……女の子ってホント怖いんよ……」



そう言って机に突っ伏した龍斗の背中は、龍斗の能力関係なく煤けていた




 鏡を割ってから数日後、竜生はとある公園へ来ていた。龍殺し本部の敷地内にある公園でウロボロス姉妹と待ち合わせだ。龍殺し本部は局長ソロモンたちによって特殊な処置を施され一般の立ち入りはもちろん施設の位置などはG●●gleマップすらも欺けるようになっている


 忘れ去られ、さらにソロモンたちによって地図上から抹消された広大な土地にかなり大きな施設が数棟立っており、ここから全世界にある龍殺し支部へ指示や戦闘員を送り込んでいる。竜生の住む寮も、入院していた病院もここにある



 その敷地内にある公園は龍殺し局員たちや社会復帰を目指す龍化者たちの憩いの場となっている。竜生は待ち合わせ場所のひときわ大きな木の下で涼みながら待機していた



「そろそろ時間だけど……ん、来たかな」



こちらに向かってくる影が3つ。二つは目立つ髪色の少女たち、そしてもう一つは



「……げ」



竜生が入院したときに出会ったあの白衣の女性だった




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