そして青年は闘う者へ
ちょっと立て込んでてあんまり書けてないです、申し訳ない
「神はここにいませり……さぁ、祈るのです。世界を救済するために生まれた、この私に……さすればあなたたちは永劫の幸福を得るでしょう……」
某所に存在するとある施設。そこでは怪しげな白装束の集団が定期的に集まり、なにかに祈りを捧げている。いわゆる新興宗教だ。広大な敷地の中には大きく歪な十字架を掲げた教会らしき建物と、同じく巨大な豪邸が建っている。集会はその教会の礼拝堂で行われていた。
檀上では若い男が大仰な仕草で信者たちを煽り、自分に祈りを捧げさせている。太陽の光を透過し輝く天井のステンドグラスのデザインは、巨大な触手を侍らせ、黒い翼を広げ、この世を呑み込まんとする邪悪な龍が描かれていた
ガシャァァァァン!!!!
突如、協会の中にガラスの割れるような音と悲鳴が響き渡る。それに続く怒号、信者の混乱の声、緊急事態を現すアラート。天井のステンドグラスを粉々に打ち砕き、金剛の流星が墜ちてきたのだ。
鳴り響くアラートを意に介さず、墜ちてきた青年は教祖を睨む。その眼孔に押されつつも信者の前なので必死に取り繕う教祖
「き、きききき貴様!! 俗人風情が!! こんなことをして」
「悪いけど、邪教(お前)に容赦はするなって言われてるし、個人的にも容赦はできないと思うから……ごめんなさい」
青年の周囲を囲むように、金剛の槍が浮遊する。万物を貫くその切っ先をまっすぐに教祖へ向けて
「大人しく投降して。でないと、大けがだけじゃ済まないかもしれないから」
両腕に金剛の手甲を纏い、見やるものを射竦める金色の瞳。龍殺し新人戦闘員、白石竜生がそこにいた
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「さぁて、竜生が引き付けてる間にっと」
礼拝堂で起こった襲撃をよそにとある人物が悠々と門をくぐる。門番は礼拝堂へ向かい、警備の全てはそちらへ向かったことが確認されたからだ。ニット帽を被った青年は耳に付けたイヤホンから指示を貰い、目的の場所へと緩く駆けていった
「竜生、お前はどこへ向かう? 人か? 龍か? それとも、なんだ? なんてね」
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
礼拝堂は混沌とした殺意に満ちていた。いたるところで重火器が火を噴き、鉛玉が竜生へと向かう。薬莢が舞い、壁が砕け、火薬の臭いが礼拝堂を満たす
だが教徒たちは銃を撃てば撃つほど追い詰められていた。一人の人間に向けるには過剰にもほどがある重火器だ。偉大なる教祖を護るため、恐怖を押し殺しながらひたすらに引き金を引く。やがて全ての銃が弾切れを起こし、礼拝堂は一瞬静寂に包まれた。
静寂は一瞬だった。
静寂の後に響いたのは教徒たちの悲鳴だった。自分たちの放った弾丸が全て金剛のカーテンに阻まれていたから
「もう、いいかな?」
阻まれていた弾丸が地面に落ちてチャリチャリと音を立てる。金剛のカーテンが竜生の背に折りたたまれていく。カーテンは6本の筒状になって竜生の背中にマウントされた
現在確認されている龍化者は4桁に上るがその中でも特異な龍化者がいる。『翼持ち』だ。自我を取り戻した龍化者のほとんどは、大なり小なり特徴として体に鱗や角、または尻尾などが現れるにとどまるが、その中でもごくわずかな者たちに現れる特徴。それが翼だ
現在確認されている翼持ちは4名。赤羽龍斗、黄泉川堺人、マスターケイオスこと禍星天魔、そして白石竜生である。彼らに共通するのは誰もが他の龍化者と比べ突出した強力な龍化能力を備えていることだ。竜生の能力は絶対防御と言ってもいい他の追従を許さぬ防御力である。
あらゆる攻撃に耐え忍び、無効化し、獲物が疲弊したところで攻勢に回る。竜生の素の防御力も高いのだがその絶対性を確立するのは背にある6本の筒状の翼だ。普段は折りたたまれ竜生の背にあるが竜生の意志一つで展開、アリの子一匹通さぬ城壁になったり、射出するように伸ばし槍のように使ったりと用途は広い。
さらに筒状の翼の両端からは龍由来の金剛石の槍を射出でき、手に持って振るっても投げても敵に甚大なダメージを与えることができる。堅牢な城壁が意思をもって進撃を始めたら、という仮定を竜生は行えるのだ
「な、なんなんだよお前!!」
「バケモノめ!!」
「バケモノを教祖様に近づけさせるな!!」
信徒たちが罵声を竜生に浴びせながら、腰が抜けた様子の教祖のもとへ駆け寄ろうとする。その様子を顔をしかめながら見やり、ため息をつきながら背中の翼をギチリと動かす竜生
「動かないで」
瞬間、竜生の翼が再び展開され、背中から伸びる砲塔のように信徒たちを狙う。その様子を見て信徒たちは思わず足を止める。信徒たちは銃口を突きつける立場から一転、突きつけられる立場になってしまったのだ。だがもう遅い、竜生に翼を展開させた時点ですでにこれは詰みなのだ
「貴方たちは早くここから出て行って、僕が用があるのはそこの教祖だけ。早くいかないと……どうなっても知らないよ?」
「ひ、ひぃぃぃ!!」
「た、助けてくれ!!助けてくれェ!!!」
恐怖を抑えていた理性のフタがはじけ飛んだ。もはや彼らにあるのは自己保存本能のみ。無様に足をもつれさせ、転倒しながらも礼拝堂の扉を突き飛ばすような勢いで開けて出ていった。
「さて。改めてこんにちは、龍殺しです。邪教をなんちゃって宗教弾圧をしに来ました」
「き、きき貴様!! 俗人がこの未来の龍王たる私に歯向かうか!!」
脂汗をとめどなく流しながら、それでも尊大な口調を崩さない教祖。小物とはいえ、一つの宗教組織を率いるだけはあるのか。そんな教祖を特に興味もなさそうな眼で見やる竜生
「強者は弱者から奪うことが許される……そんな感じの教えだって聞いてるけど?」
「そうだ!! だから私は弱者たる人間を導き……」
「そっか。なら丁度いい。僕は君より強い。仕方なく君たちの教義に従って、僕にとって弱者である君から根こそぎ奪わせてもらうよ」
いきなり竜生の翼の一つがあらぬ方向へ向き、そのまま『金剛槍』を射出する。それは礼拝堂の2階部にある隠し部屋の壁をブチ破り、教祖を救おうと動いていた信徒の肩を串刺しにし壁に縫い付けた。大型の狙撃銃が信徒の手から離れ、大きな音を立てて床に落ちる
「どうなっても知らないって言ったのに。君には権利がある。恥も何も捨てて放棄し龍殺しに拘束され命を長らえるか、それとも僕と戦うか。教祖を名乗るくらいなんだから、そこそこはできるんでしょ?」
彼本来の瞳の色はブルーサファイアのような美しい青色だ。が、今の竜生の瞳は無機質な冷たい輝きを放つ金色へと変わっていた
竜生の翼のイメージはモン〇ンのバルファルクです←