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強者の振る舞い

長らく長らく放置してごめんなさい、友人にハッパをかけてもらってようやく執筆復帰に踏み切れました。頑張ります




病院から退院後。その日竜生はとある荘の前に来ていた。見た目は普通のどこにでもあるような大き目の寮のようだ。だがあのメモリーの情報によれば住んでいる住民は洒落にならないほど尋常ではない強さを秘めている。門の所で足がすくんでしまい、途方にくれていると後ろから声をかけられた




「お? 竜生?」


「え、日本人? メッチャきれいなパツキンじゃん! え、ホントドールみたいで可愛い~~! マジ ッベーッすわ!! あともうちょっと胸があればパーペキね!!」


 振り向くとそこにはいつものニット帽を被った赤羽龍斗が見知らぬ少女を引き連れていた。二人の両手に買い物袋があるところを見ると買出しにでも行っていたのだろうか。というか、龍殺しという人外を狩る戦闘集団のトップレベルの戦闘員が、女の子引き連れて買い物って……ものすごいギャップだ



「その口調なんだよ春沙さん……あと竜生は男だ」


「え?! ウソ?! 正直私女の子としてちょっと負けてる気がするんだけど?! って誰が貧乳じゃい!!」


「言ってねぇよ……だが………男だ」



竜生そっちのけで漫才をはじめ、挙句どこか遠い目で遠くを見つめる龍斗と春沙。なんだこれ





「んで、どうしたよ? ウチになんか用? というより、僕達になんかようなのか?」



 いきなり確信を突かれた。しかしどう言ったものかいいあぐねていると、春沙さんが折角だしお茶でもということで招待された。江瑠弩荘えるどそうという龍と戦士の巣窟に



「僕さ、ここに来てからずっと思ってたんだよ」


「「何を(です)?」」


「この荘の当て字、センスねーなーって」


「「それ以上はいけない!!」」


「それはさておき、ようこそ江瑠弩荘へ」










「茶ァ入れるからちょっと待っててくれ。茶請けは……さっき買ってきたタワラニギリセンベイでいいか」


「私ちょっとゲームとって来るねー」


「あ、そだ。手洗いうがいしとけ二人とも。春沙さん、竜生に手洗い代のとこまで連れてったげて。僕はキッチンで洗うから」


「はーいおかーさーん♪」


「誰がおかんじゃい」




 漫才を終え、トタトタと歩く春沙と言う人の後について板張りの廊下を歩く。唐突に春沙さんが振り向き竜生の顔をじっと見る





「ふ~~~~ん……ほむほむ」


「え? ほ、む?」


「うん、なんでもない! 私は大地 春沙、アナタは?」


「あ、白石です、白石竜生」


「うん、ヘタレ総受けクンだね、よろしく!」


「へ、ヘタ? ウケ?」


「あーごめん、思った以上にまっさらだったね……自分がどれだけ腐ってるか思い知ったよ……」



 なぜだかわからないが落ち込みだす春沙。なんとなくだが竜生は、春沙さんの言っていることは自分は踏み入れてはならない世界なんだと直感する



「えと、そんなに落ち込むこと無いと思いますよ?」


「ありがと……ま、それは置いといて。ココが洗面所ね。先に洗わせてもらうね~」



 ハンドソープのディスペンサーから石鹸を出して手際よく泡立てて手を洗い出す春沙さん。この人も龍化者なのだろうか? 赤羽、空崎、如月がここにいる事は知っているが、他の住民のことは知らなかった。なんとなく手持ち無沙汰でぶら下げてあるハンドタオルを見やると、何かの破片のようなものがついている。手にとって見ると、それは桜色の鱗だった。不思議そうに見ていると、うがいを終えた春沙さんがこちらにやってくる



「あーそれ? 時たま手拭いたときに着いちゃうみたいなんだよねーウロコ。その色は多分りゅーとサンのじゃないかな?」


「ウロコがつく?!」



 シレッと手を拭きつつ爆弾発現する春沙さん。僕が龍化者じゃなかったらどうするつもりだったのだろうか。ウロコを洗面台の端に置き指でトントンとつつく



「そそ。人間だって新陳代謝で垢がでるでしょ? それと同じようなモンなんだよって大家さんの義兄さんが言ってたかなー。私は肌に出るタイプじゃないけど」


「大家さん……ってことは空崎さん……ですか?」


「そこまで知っているということは……さては貴様、機関のエージェントか?!」


「え?!」



 なにやらよくわからないようなファイティングポーズをとる春沙さん。竜生も当たらずとも遠からずなことを言われたので少々動揺してしまう。エージェントというか、いや違うけれども。




「まー冗談はさておき、手洗い台開いてるから手ぇ洗っちゃって良いよー。私先居間行ってるから~~」



 散々焚き付けといて軽―い感じで手洗い場を出て行ってしまう春沙。マイペースというか自由人過ぎるというか……もし何かされても対処できるという自信の表れか。ふと春沙さんがほったらかしにしていったウロコが目にはいる。つまんで持ってみると、魚のそれとは比較にならないほど硬く、じんわりと熱を放っているように感じた。と、台所のほうから竜生を呼ぶ声がした。




竜生は手を洗いうがいを済ませ、居間へと向かった。




「遅かったな、なんかあったか?」


「別になんも? あ、ハンドソープ切れかけてたけど予備あったっけ?」


「大丈夫、流しの下の棚に置いてあるよ」


「あ、タオルに鱗くっついてたよ?」


「あー、知らんうちに剥がれちゃうからな……手洗うとき手袋外しちゃうから」


「剥がれるんですね、ウロコって……」



新事実に驚く竜生。RPGなどのドラゴンの鱗は大概レアアイテムなのだが、大丈夫なのだろうか? というか自分はもしかしなくても狩られる側なのだろうか……? 薄ら寒い予測がよぎる



「そりゃまぁなんというか、新陳代謝の一環だろうな。人によってまちまちみたいだけど。竜生は剥がれた事あるのか?」


「いえ、無いです」


「気ィ着けとけ、特にお前だとエラいことになりそうだ」



 龍斗の言葉に怪訝そうな表情をする春沙。そういえば彼女も龍化者なのだろうか? 先ほどの発現からおそらくだとは思うのだが、思考に入る前に春沙が龍斗へ質問する



「え、どゆこと?」


「こいつも僕と同じように手の甲にウロコあるんだけど、見た目完全ダイヤモンドなんだよ。てか、能力が多分鉱石由来のものだから多分龍製のホンモノのダイヤになるのか?」


「え、マジで?!見せて見せて! どうなってんの?」


「あ、ハイ……」



 流されるまま手に巻いた包帯を取り、手の甲を見せる。虹色に光を反射するウロコが現れた。いつ見てもダイヤだ。通常ダイヤはカットや研磨することであの虹色の反射をするのだが、なぜか竜生の鱗は研磨済みのようにキラキラとしている。



「はー、改めてみるとスゴいな。ホントダイヤモンドみたいだ」


「わースッゴ……これ何カラットだろ?」


「加工は無理だろうさ、なんせ龍由来のモンだからな。人の加工技術じゃ傷一つつけることすら出来ないだろうな。で、なんか剥がれそうか?」


「いえ、別に……」


「一応気をつけとけ、一回僕拳の頭の刺が取れたことあるんだけど、凄い爆発起こしたんだよ」



危険すぎる!! 今までこの家を爆破とかしなかったのだろうか。聞いてみたところ、そういう事故はない模様。



「多分竜生はないと思うけど、ただでさえ常識外れの存在に僕達はなってるんだ、注意して置いて損はないぞ?」


「肝に銘じます……」



 出されたお茶を飲みつつ談笑していると玄関の鍵が空き、引き戸がガラガラと開けられる音が聞こえてきた。引き戸を閉める2回目のガラガラがなり終わると、ただいまーと二人分の挨拶が聞こえてきた。声色からして女性だろう。




「ン、大家さんと舞奈さんかな」


「二人でスイーツ巡りに行ってたんだっけ?」


「まーた舞奈さんバイキング全滅させてないだろうな……」


「バイキングを全滅?!」


「大家さんいるし大丈夫だ、問題ない……ストッパーになってくれているはずは……多分、そう、メイビー……」



 滝のように汗を流しながら必死に自己完結させようとしている龍斗。あまりに突拍子もないことを聞き、どうにか竜星の脳が処理し終わったころに二人の女性が居間に入ってきた。手洗いうがいは終えたらしい。龍斗がカラフルな座布団を出してきて、セミロングの髪の女の子と腰まで届く長髪をポニーテールにした女の子はそれを受け取り適当な場所に座る。



「ただいまー!」


「ただいま。お土産にケーキとクッキー買っておいたわ。ケーキは冷蔵庫に入れておいたから、晩御飯の後にでもどうぞ」


「おっかえりー二人とも! ケーキどーもでーす!」



 春沙がポニーテールの女の子からクッキーの箱を受け取り嬉しそうに笑う。この二人も龍化者か戦士なのか。一見すると美少女だが、とても戦場に赴き龍を屠るものには見えない。セミロングの女の子は眩しい笑顔を振りまきながら龍斗に激しめのスキンシップをしているし、ポニーテールの女の子は今しがた龍斗が淹れた緑茶を姿勢よく啜っている。




「あの、この方たちは……」


「あぁ、まだ自己紹介まだだったな」


「ところでりゅーとサン、この女の子はダレ? ウワキ? ユルサナイヨ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


「勘違いしないの。竜生はれっきとした男だ」



 重苦しい空気を発し始めたセミロングの子の脳天に軽いチョップを入れて制止する龍斗。あの重圧をものともせずツッコミをいれるあたり、いつものことなのだろう。周りの子も全く気にしていないようだ



「男のコなの?!」


「そのコの部分は子どもの子だよな? ムスメじゃないよな?」


「HAHAHA」


「竜生に失礼だろ」


「ゴメンね?」


「あの、自己紹介……」



 これ今日中に自己紹介終わるのかな? と竜生は考えていた。心の中でとはいえ初対面の人間相手にそんな発想ができるあたり、竜生も大概図太いようだ



「改めまして。私は空咲 彩音。この江瑠弩荘の大家やってまーす」


「私は如月 舞奈。この荘の最古参よ。よろしくね」




ぞわりと冷や汗が背筋を伝う。ゆるい空気に押され忘れかけていたが、ここは龍殺しでトップレベルに危険視されている者たちとそれを監視する人が一つ屋根の下で暮らしているのだ。竜生は今にも起爆されそうな核ミサイルの上に座っているようなものなのだ



「どうしたのその子? 顔色悪いわよ?」



如月 舞奈が半開きの目をこちらに向けている。舞奈自体は特に殺気など放っていないのに竜生は蛇に睨まれたカエル状態となってしまった



「えっと、その、だ、だいじょうぶです……」


「全然大丈夫には見えないんだけど?」


「はっは~ん? 美人に囲まれてキンチョーしてるんだ~このこの! オーケー、それじゃ緊張をほぐすためにアレ取ってくるね!」


「お、いいね! そいじゃ準備しとくよ」



春沙さんは竜生を茶化すと席を立つ。何かを取りに行ったのだろうか、階段を上っていく音がする。それに合わせ龍斗が部屋の隅に置いてある大きなテレビに近づき、なにやらセッティングし始めた



数分もせず戻ってきた春沙さんが持っていたのは








「よっしゃ隙だらけだぜ!!」


「なんの緊急回避!」


「漁夫の利、えいや」


「「ぬわぁぁぁぁぁぁ!!!!」」




複数人数で対戦可能な大乱戦ゲームだった。今のは龍斗と春沙が激しく戦っていたところに舞奈が強烈な攻撃を叩き込み、二人のストックを纏めて吹き飛ばしたところである。竜生はといえば直前に舞奈に激しく吹き飛ばされ、やっとこさ復帰したところである



「如月さん、つよ……」


「上Bは崖下で使うものよ、そいや」


「ひいぃぃぃ?! ぃぃいいああああ!!」



追撃をくらい、あえなく竜生のキャラは星となった。普段は物静かな竜生も大乱戦中ではテンションが上がるのだ。ゆえにらしくない悲鳴も上がってしまうのも無理はない。


「ハンデをガン積で、全滅だと……化け物か!!」


「あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ! 舞奈さん以外のストック5つが一瞬にして溶けて消えた……な、何を言ってるかわからねーと思うが、私たちだって信じられなかった……」


「頭がどうにかなりそうです……ダメージ率も全開に振ってもらって、それでも瞬殺……」



結局この後舞奈さん以外の全員で舞奈さんに勝負を挑んだものの、お土産のクッキーは全て舞奈さんがゲットしていた。お土産とはなんだったのだろうか。


ちなみに舞奈は大乱戦のオンライン全世界トップランカーであることが後に判明した。




「はぁ、楽しかった……」



帰路につく竜生。久しぶりの充足感と、叫び過ぎた反動で若干喉が痛い。大人数で騒ぎながら遊ぶことの楽しさを初めて知った竜生だった。ちなみに夕飯までお世話になっている。



「皆、楽しそうだったな……」



独り言ちる。資料で見た彼らと今見てきた彼ら。どちらが本物なのだろうか。いや、どちらも彼ら自身なのだろう。


僕も、あの人たちみたいに楽しく生きられるのかな? もし叶うのならば……そして竜生は覚悟を決めた。自分の幸せを探すため、強くなることを

どうにかこのボリュームを維持するのが目標となります。

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