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月は隠れ魔女は微笑む  作者: 一六(阿国)
神の深慮と巫女の浅慮
9/29

精霊とファーストコンタクト

やっとの更新ですが、短いです。

再度背中にジイジを背負ったゾンガと自分で歩くと言い出したネネが道なりに登ってゆくと、今度は目の前に湖が見えてきた。太陽光など入ってこないというのに、湖には大人が4~5人は乗れそうな大きな蓮の葉がいくつも浮かんでおり、何か発光体でもあるのか水の中から照らされた洞窟はどこか神域を思わせるような荘厳さを醸し出していた。


湖の大きさは直径1キロかそこらのようで、周りに岸はなく、対岸に同じような洞窟だけがあるようだった。



「これは、この葉の上を通って渡るしかないようだな。見たところしっかりしているようだし…落ちたところで襲ってくるような生き物もいないようだ。最悪泳いで渡ろう。」

「で、でも。」



湖の周りを見渡し対岸へ渡る手段を探しては見たものの、岸は見当たらず葉伝いに渡るしかないと判断するものの、ゾンガが難色を示した。彼女が渋る理由は、ジイジの足やまた彼とネネが熱を出した病人であるということに心配をしているのだろう。



「大丈夫だ。泳ぐのは本当に最後の手段でだ。それに両足がないわけではないからなんとか泳げるさ。心配なのはネネだが…体重が軽い分葉から落なければ問題ないだろう。」



ゆっくりと葉に体重をかけて乗り込むが、確かに沈みはしない。船に乗っているような不安定さはあるものの、3人の体重をしっかりと蓮の葉は支えられるだけの耐久力があるようだった。


葉から葉への移動時には慎重にはなるものの、なんとか3人が湖の中程に来た時にそれは起きた。渡ろうと思っていた洞窟から大量の水が流れ込んできたのだ。先ほど自分たちが来た道へ水が流れ込めば、自分たちが乗ったこの葉ごと押し流されるかもしれないとジイジが振り返れば、己たちが通ってきた道は何かが塞いでおり既に水に沈んでいた。

慌てて辺りを見渡せば、波打つ水面の合間から、慌てているこちらを見ては笑っている精霊が見えた。



「どういうことだ?精霊がいたずらにこんなことを…。」



精霊の姿を見とめ、自分たちを乗せた葉ごと洞窟の上へ上へと上がっていることに焦ったジイジが、子供たちを己の方へ引き寄せる。それに合わせて慌てながらもゾンガがネネを抱えて葉から落ちないようにしていると、再びネネが楽しそうにいう。



「はっぱにのってうえにいくー!」

「ね…ねね?」

「おねえちゃんが、でぐちまでたしゅけてくれりゅって!」



自分たちの一体何が女神の心に届いたのか、この場合ネネを女神が気に入り助けてくれ、自分たちはほんのおまけというか、あくまでついでだったのかもしれないが、このままいけば自分たちはこの洞窟から抜けることができるのだろう。


上を見上げれば遥か彼方、遠い頭上に小さな光が見える。あそこまで水が上がるのかと思えば、もしかしたら、神話にあった切り倒された月隠れの大樹の上…すなわち現在の魔境とも言われる月隠れの大森林へとでるのではないか?そう思い当たったジイジは、神話の舞台を目の当たりにするのかもしれないという期待と、子供たちを守れるのかという不安で複雑な心境であった。


見る間に光は近くなり、子供達に少し目を瞑るように言い聞かせてしばらく経つと水位の上昇は止まったようだった。肌にそよぐ風と緑の息吹を感じ恐る恐る目を開けば、3人の目の前に広がるのは地上で感じるよりも強い陽の光に照らされた広大な原生林。その閒を抜けるように水が流れ、3人はそのまま流されるままに森の閒を進んでいった。


時折見たこともない生き物が木々の合間から顔を覗かせるのを、驚きながらも3人で眺めながら森を抜ければ小さな湖に流れ着いた。そのまま近場の岸辺へ蓮の葉が静かに接岸すると、ゾンガが二人を抱えて岸へと上陸する。荷物も移動を済ませた途端に、今まで乗っていた葉は引き込まれるかのように水底に沈んでしまった。



「とりあえず、女神のおかげで命拾いをしたようだ。」



少なくとも、この大森林へ足を踏み入れることは今までなかったと記憶している彼はそこで張り詰めていた神経が切れてしまったのか、そのまま気を失ってしまった。

それに慌てたゾンガとネネが介抱しているところへ、彼女が現れた。



「ん?おお!初めて人間を見た…言葉通じるかな?えっと、そこの人、どうしたの?」



少女達と魔女のファーストコンタクトは、そんな唯一説明できる人物が倒れた状態で始まった。

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