Memories -思い出-
思えば、初めて犯罪を犯したのは5歳の頃だったかもしれない。
今から11年前の春、俺は捨てられた。
子一人と母親一人、いわゆる母子家庭ってやつだった。
明確な理由はわからない、きっと育てるのが面倒になったんだろーな、と今なら軽く言えてしまう
けど、僅か五歳の子どもにとって母親は自分の全てであり、なくてはならない存在だった。
子どもってのはけっこう敏感なもんで、日に日に冷たくなっていってた母親の態度で何となく今の状況はわかっていた。
ココに一人3日も待たされるなんてそれしかないわかってた。
ああ、きっと捨てられチャッタンダって…
でも、俺はそこから動かなかった
沢山の十字架や石碑が立ててある荒野に一人ポツンと膝を抱えて。
誰もいない墓地。夜は特に恐ろしかった、
静けさが恐怖に拍車かけて風になびいて触れ合う草木の音に背中を丸くした。
有ること無いこと脳裏を駆け巡り怯えながら必死に眠ろうとしてたのを覚えてる。
空腹で意識が朦朧とする中、
『大丈夫、大丈夫』呪文のように唱え続けた。
本当はわかってた、けどわかりたくなかった
胸騒ぎがするけど気のせいだと思いたかった
待っていれば、来るはずなんだ
待っていれば…
この三日間こんな保証もない希望だけで待っていた、母親を
今となってはバカだなぁ…って思う。
どんなに待っても来るはずのない迎えを待ってただなんて、アホ過ぎて笑える…!
だって、
ほら 迎えなんて来なかったじゃん?
それからしなきゃ行けないことはガキの俺でも分かること。
人が生きてくためには欠かせない『食料』を探すことだ。
幸いといっては少し微妙だけど俺が捨てられたのは墓地だった。
墓地には「お供え物」がある
やっと見つけたお供え物はパサパサな饅頭だった、土埃で少しざらざらしていて普通だったら食えたもんじゃない。
でも俺は必死にかぶり付いた。
3日も食べずにいたのはお供え物に手を出すのは抵抗があったから。でももう死にそうなくらい腹が減っていた。
罪悪感はあった。
あの頃の俺はまだ幼く、
そして、まだ心がキレイだったから
ちっちゃいけど、これが最初の「犯罪」だった、