第25話 はじめての相棒
朝食を平らげたあと。
俺とリアは並んで、王都の通りを歩いていた。
空は晴れ。
昨日までの騒動が嘘みたいに、穏やかな朝だ。
「……なんだか、不思議ですね」
「ん?」
「昨日まで、あの屋敷にいたのに……今日はこうして、時人様と並んで歩いていて」
リアは、少しだけ笑った。
その横顔が、やけに柔らかい。
……よかった。
本当に、助けられてよかった。
やがて見えてきたのは、石造りの大きな建物。
冒険者ギルドだ。
扉を開ける。
いつもの喧騒。
酒の匂い。
依頼書を眺める冒険者たち。
……のはずが。
「……ん?」
「メイド?」
「かわい……」
視線が集まる。
今日は、リアは清楚なメイド姿のままだ。
場違いなくらい綺麗な格好だから、そりゃ目立つ。
「す、すみません……目立ってますか……?」
「目立ってるな」
「や、やっぱり……」
「いい意味で」
そう言うと、リアは少し照れたように笑った。
不思議と、悪い気はしない。
むしろ――ちょっと誇らしい。
◆
まずは受付。
「冒険者登録をお願いします」
簡単な書類に、リアが丁寧に記入する。
少し緊張しているのか、いつもより字がかたい。
受付嬢が確認し、にこっと笑った。
「はい。登録完了です。頑張ってくださいね」
差し出されたのは銅色の登録証。
「Zランクです」
リアは両手で受け取り、胸元で大事そうに握った。
「……時人様と、おそろいですね」
嬉しそうに、胸元で大事そうに握った。
その表情が、子どもみたいで。
……ちょっとかわいい。
その時。
「あ! 時人さん!」
受付嬢が声を上げた。
「ランクアップ登録証できてますよ! なんだか巻き込まれたみたいで災難でしたね」
「あ、そうか」
以前、依頼を順調にこなしていたからランクアップをすすめられて依頼していたんだ。
罪人扱いされてから来られなかっただけで。
「ありがとうございます。いただきます」
受け取る。
「はい。Xランクとなります。一段階上のクエストの受注も可能ですよ」
銀色の登録証。
……おお。
なんか、ちゃんと冒険者っぽい。
横を見ると。
リアが、
むー。
って顔してた。
「……どうした?」
「……いえ……」
明らかに拗ねている。
……ああ。
おそろいが一瞬だったからか。
「ま、またすぐ並ぶかもしれないぞ?」
「……がんばります」
小さく拳を握ってるのが可笑しくて、思わず笑った。
◆
掲示板へ向かいながら、ふと思う。
「そういえば」
「?」
「俺のステータス、どうなってるんだろ」
「すてーたす、ですか?」
「能力が見えるやつだ。試してみるか」
俺は叫んだ。
「ステータスオープン!」
光が走り、半透明の表示が現れる。
◆ ステータス鑑定結果 ◆
────────────────
【名前】霧島 時人
▼基本ステータス
職業 :Xランク冒険者
レベル :4
力 :平均
体力 :平均
知能 :平均よりやや上
素早さ :平均よりやや上
器用さ :平均よりやや上
魔力 :低い
精神抵抗 :低い
カリスマ :平均よりやや下
────────────────
※特筆すべき戦闘能力なし
【スキル:〈時戻し〉】
「おおっ……!」
ちゃんと変わってる。
成長してる。
もう一般人じゃない。
「リアもやってみて」
「は、はい……恥ずかしいですね……」
小声で、
「ステータスオープン……」
光。
光が走る。
◆ ステータス鑑定結果 ◆
────────────────
【名前】リア
▼基本ステータス
職業 :Zランク冒険者
レベル :1
力 :かなり低い
体力 :平均
知能 :平均よりやや上
素早さ :平均やや下
器用さ :平均
魔力 :熟練級
精神抵抗 :平均
カリスマ :上々
────────────────
※氷結スキルの才能有
【スキル:〈キッチンタイマー〉】
「……すご」
魔力、熟練級!?
レベル1でこれ!?
あの時の氷結魔法を思い出す。
レベル1であれだからな。
レベルがあがったらとんでもないことになるかもしれないな。
「み、見ないでください……」
リアが顔を真っ赤にする。
そしてカリスマが上々!
……そりゃそうか。
リアが微笑むだけで、多くの男はにやついてしまうだろうな。
それに――
スキル欄の<キッチンタイマー>。
「これ、今朝言ってた能力だよな?」
「はい。食事が必要な時間が正確に分かるんです」
「めちゃくちゃ便利スキルじゃん……」
戦闘以外で最強すぎる。
「み、見られると恥ずかしいです……」
顔を真っ赤にするリア。
……ほんと可愛いな。
◆
「さて」
俺は掲示板を見る。
「リアの魔力と俺の剣、この二人の連携を色々試したいし……まずは軽めの討伐がいいかな」
実戦で確かめたい。
できれば何度も繰り返せる相手。
強敵より、弱くて数が多い敵のほうが都合がいい。
立ち回りも、連携も、魔法のタイミングも、いくらでも試せる。
そう考えながら依頼書を眺めていると――
一枚の紙が、ふと目に留まった。
【ゴブリン退治】
俺とリア、同時に顔を見合わせる。
そして。
「これですね」
「これだな」
声が重なった。
思わず、二人で笑う。
――新しい相棒と、最初の依頼。
胸の奥が、少しだけ熱くなった。
冒険は、ここからだ。
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