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第12話 西門、闇の隙

夜の西門は、深い闇に沈んでいた。


門の脇にある小さな詰所に、松明が一本。

それ以外の明かりはない。


石壁と木々が作る影は濃く、

少し距離を取れば、人の気配はすぐに闇へ溶ける。


見張りは門番が二人だけ。

詰所の前に立ち、時折、門と通りを確認している。


城壁の影は重く、夜は深い。


俺は門から少し離れた場所――

街路樹の影に身を潜め、息を殺して様子を窺っていた。


(……静かだ)


聞こえるのは、門番の足音と、

遠くで鳴く夜鳥の声だけ。


――その時。


ごろ……ごろ……と、低い車輪の音が闇を割った。


西側の街道から、一台の馬車が近づいてくる。

灯りはなく、荷台は厚い布で覆われている。


門へ近づくにつれて、馬車は速度を落とした。


門番が二人、顔を向ける。


「……通行申請」


御者が何かを差し出す。

門番はちらりと目を通すだけ。


馬車の中は――見ない。


「……問題なしだな」


短いやり取り。


「通れ」


そのまま門が開き、

馬車はゆっくりと西門を抜けていった。


ほどなくして、門が閉じられる。


重い音。


西門は、再び夜に沈んだ。


詰所の松明だけが揺れ、

門番たちは持ち場へ戻る。


――その瞬間。


胸の奥に、はっきりとした確信が走った。


(……今だ)


馬車は一台。

人影は、御者だけ。


門番は二人。

しかも、馬車の中は確認されていない。


門に近づく時、

馬車は必ず速度を落とす。


その瞬間――

後方から、荷台へ潜り込めれば。


考える時間はない。


次がいつ来るかは分からない。

迷えば、すべてが終わる。


――戻すしかない。


奥歯を、強く噛みしめた。


十秒。

今までで、最も長い。


反動は分かっている。

それでも。


「《時戻し》……十秒」


◆◆ 時間が、大きく巻き戻る ◆◆


――ぐっ。


視界が歪む。


頭の奥を、鈍器で殴られたような衝撃。

耳鳴りが走り、喉の奥が熱くなる。


足元が揺れ、

一瞬、立っているのかすら分からなくなった。


(……っ、重い……)


身体が言うことをきかない。

内臓が裏返るような感覚。


それでも、踏みとどまる。


――戻った。


車輪の音。

まだ遠い。


馬車は、西門へ向かう途中だ。


俺は木陰から静かに身を動かす。

影から影へ、音を殺して。


呼吸を整える。


馬車が近づく。

門が見えてくる。


御者が手綱を引き、速度が落ちた。


今しかない。


俺は、地を蹴った。


闇に溶けるように走り、

馬車の後方へと滑り込む。


――ここから先は、戻れない。


それでも。


この闇の向こうに、

真実があると信じて――

俺は、進んだ。


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