6.目指せ冒険者、目指せモテ!
「ぬ、抜けた……!」
視界いっぱいに、抜けるような青空と野原が広がる。
鬱蒼とした森からようやく脱出し、俺は胸いっぱいに空気を吸った。
うーん、久しぶりの清々しい空気!
「白雪なんかは、何年振りかに森を出たんだよな?」
「そうですわね。……ふふふ」
白雪が含みを持ったように笑う。
あれ?なんか思ったより感動薄いな。
まぁもともとそういう奴か。と思いながら、俺はぐぃっと伸びをした。
「……んじゃ、次の町に向かうか!どこにあるか知らんけど!」
「それなのですが」
白雪が、俺に地図を出すようにお願いをする。
俺は背負っていたリュックを野原に下ろし、座りながらリュックの中から巻物地図を取り出した。
「ほいよっと」
地図を開く。
白雪と共に、小人たちもそれを覗き込んだ。
「現在地がここ。瘴気の森です。選択肢は二つありますわ」
白雪の白いほっそりとした指が、地図のある場所を指す。
「まずは西の国を目指すルートですわ。ここから左に向かうのですが、こちらは西の大国と言われておりまして、かなり各国との貿易が盛んな何です。この地図の中で一番栄えている国、と言っても過言ではありませんわ」
「まっじか!!」
俺はテンションが上がる。
「……次に、東の国を目指すルートです。こちらは右に向かいます。私の祖国ですが、絶対王政でして、今はあまり他国との交流もない国ですわね」
「なるほど。あ、けど白雪は、刺客に狙われてるって……」
「そうですわね。ーーですが、私はどちらでもかまいませんわ」
にこにこと白雪が俺を見て笑う。
うーん……
かまいませんっつったって……
確かに最強の小人たちはいるけどさ……
白雪は平然としてるけど、敵地に向かうのってちょっとやばいだろ。
「東の国は白雪にとって危険ってことだろ?なら一択だ。西の国へ行こう!」
「決まりですわね」
白雪が、晴れやかに笑う。
小人たちが、かんかん!と鎌やら斧やらを叩き合った。
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「すっげぇー……っ!!」
俺は猛烈に感動していた。
この世界に来て、過去一かもしれない。
「馬車だ!石畳の街だ!剣とか杖とか持ってる人がいる!うわっ、見てみろ白雪!あの男の人の大剣かっけぇー!!」
「ふふふ。私は、あちらの女性のネックレスの方が気になりますわ。あの周囲への視線の向け方といい、貴重な魔法道具のようです」
「まっじで!?さっすがよく見てるな白雪!ちょっとわかりすぎててこえーけど!」
俺が今いるのは、何週間か旅をしてようやくたどり着いた先。
西の大国ーーアルマリア!
胸が高鳴るのは当然だろ!?
これぞファンタジーのど真ん中だ!
「冒険者ギルドとかあんのかな!?」
「当然あると思いますわ」
「っしゃー!冒険だ!もうこの際、一緒に冒険者になろうぜ白雪!」
「えぇ、かまいませんわ」
「やったー!」
ちょっと冒険者になった自分を想像してみる。
大剣を構える俺。
回復魔法を駆使する白雪。
荒野でデカいドラゴンと対峙する二人。そしてーー
「……」
ちら、と足元を見ると、小人たちが一斉に俺に目を向けた。
いや、だからなんていうかその視線、やけに鋭くてこえーんだって。
しかもなんか小人たちの背格好もやっぱりここでも異様みたいで、通りがかる人たちがなんかヒソヒソしてる。
ドラゴン討伐をあっさりこの小人たちに取られる未来を想像して、俺はため息をついた。
「なんか……俺の思ってたパーティーと違うんだけど……」
ハーレム希望してたのに、なんで7人のおっさんに囲まれてんの俺……
「まぁでも、これはこれで……」
俺は顎に手をやる。
魔獣材料で金持ちにはなれそうだし。
金持ちにはなったら、それなりにモテるんじゃないか?
「まずは金だ。異世界も結局は、経済力だ」
俺は大切なもの(理想とかロマンとか青春とか)をそっと胸にしまい、現実にモテの全ベットをした。
「ふふ、楽しそうですわね」
「ぎくっ」
白雪の全てを見透かすような微笑みに気まずさを覚える。
そしてそれを誤魔化すかのように、ぽん!と手を叩いた。
「よ、よし!そうと決まればギルド登録だ!あそこのお姉さんに道を聞いてーー」
そしてあわよくばお近づきになろうとした俺が、足を一歩踏み出した、その瞬間。
「退きなさいよ!!!」
よく通る、鈴のような声がした。