15. あれ?私、おかしいことしました?……じゃないんだよ!
「……」
俺たちは、木箱のような荷台の中に入れられ、馬車で移動させられていた。
カラカラカラ、と車輪の音がするが、なんせ木箱のため、外の景色は何も見えない。
少しだけ、木のつぎはぎから光が漏れているのみだ。
「ほんっっとうに許せないわ!」
リーナはまだ怒っている。
「俺、多分あそこで時代劇戦闘シーンできたと思うんだけどなぁ……」
「あんた何言ってんの?」
「子どもの頃から妄想してたんだぞ、ああいう場面……!」
「この状況で妄想の話をするなんて、頭おかしいんじゃないの?」
怒ってるせいか、リーナのツッコミが心なしか鋭い。
目の端の白雪が、長時間同じ体制だったためか、少し伸びをした。
まあそうだよな。白雪だって疲れ……
ーーん?
「いや白雪おま、拘束……!」
俺が目を見開くと、リーナも呆気に取られていた。
「えぇ、邪魔でしたので」
「あなた、あの魔力拘束を解いたの……!?」
リーナが驚愕する。
「はい」
白雪がにっこりと笑う。
「これって簡単に解けるものなのか?」
「そんな訳ないじゃない!どんな魔法であっても、一度行使されてしまえば、並大抵のことでは解けないわ!」
リーナが悲鳴のようにそう言う。
「つまり……」
「天才なんてものじゃないわ。この世界でもトップクラスの能力よ。あなた、どうやって解いたのよ!」
「魔力の構造理解、分析。魔力流れの要点を抑えれば、案外簡単に解けますわ」
「それが簡単なことだとお思い?」
「……よくわからんけど、俺もやってみようかな」
「無理に決まっているじゃない」
リーナが冷静に突っ込む。
「理論はよくわからないけど、早くわたくしの魔力拘束も解いてちょうだい」
「いや待て俺が先だ!」
「何言ってるの!?わたくしは姫よ!わたくしが先に決まっているじゃない!」
「差別反対!」
「平民なんだから、当然よ!」
リーナがそう言う。俺はカチンときた。
「俺の国では、王族も平民と同じ人って認識でした〜!あーあ、格の違いが際立つなぁ〜!」
「はぁ!?頭おかしいんじゃないの!?」
「おい!うるさいぞ!」
俺たちがぎゃあぎゃあしていると、木箱の外から、ばん!と拳で叩く音がする。
「……ほんと、この国の兵は乱暴ね」
「内戦中ですから。殺気立つのは仕方がないのかもしれません」
白雪が冷静に言う。
「では、魔法拘束を解かせてもらいますわね」
「俺だ!」
「わたくしよ!」
「まぁ……」
そんなやり取りをしていると、馬車が急停止した。
「な、なんだ……?」
「ついたぞ」
急に視界が明るくなり、俺は目を細める。
扉が開かれたようだ。そして。
「な……っ」
白雪を見るなり、兵の顔色が変わる。
「ま、魔法拘束を解いているだと……!?」
まぁ、その反応になりますよね。
「いまさら逃げませんわ。ですが、窮屈でしたの」
「……」
兵士が絶句している。
「さぁ、早く行きましょう。ーー王の元へ」
白雪が、にこりと笑った。