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14.兄妹内戦の国





「ここが、イグレア王国……」


関門の手続きを経て、俺たちは国の内部へ到着する。

そこには、中世のヨーロッパみたいな、煉瓦造りの小さな建物が並んでいた。


だが、しかしーー


「なんか、あんま活気がないな……」


西の国の人口の多さに比べ、こちらは国入口付近とはいえ、今のところ兵しか見当たらない。


しかも、西の王国の騎士服とは違い、皆鎧のようなものを着ていて、顔が厳しい。


「……この国は、長年内戦をしているのよ」


「内戦?」


教科書で見ただけの単語だ。


「そうよ。王位継承争いをしているの。西は第一王子。東は、その妹の第一王女の国よ」


「兄妹喧嘩ってことか……」


「言い換えれば、そうですわね」


くすくすと白雪が笑う。


「わたくしたちは、まずこの西側の国を通って、次に境界線を跨ぎ、東側の国を通過しなければいけないわ」


「それって、普通に考えて許可でんのか?」


「この姉様の通行手型で通れない国なんて、ほとんどないわ」


ふん、とリーナが鼻を鳴らす。


「とはいえ、どちらもあまり刺激せず、早めに安全地帯を通過した方が良さそうですわね」


「その通りよ」


リーナが神妙に頷く。


「じゃあ、俺が勇者ってことは明かさない方がいいのか?」


「ちょ、バカね……!そんなの隠すに決まってるじゃない!大体こんな通りでそんなーー」


「そこの三人」


低く、威圧感のある声がした。


「……」


俺たちが恐々ゆっくりと振り返ると、そこには、全身を鎧に包んだ兵士たちが数人いた。


「……なにか、御用でしょうか」


白雪が悠然と微笑む。


「失礼だが、先程の会話を聞かせてもらった」


「え……」


勇者ってバレたってことじゃん。


俺が怯むと、兵士の一人が無言で俺を見つめる。その目は暗く、鋭い。


「……勇者、という言葉が聞こえたがーー」


「待ちなさい。この通行手型が見えないの?」


俺の前に出たリーナが、まるで時代劇の紋様のように、通行手型を兵士に掲げる。


大人の男二人の間に割って入る少女の図は、なんかシュールな光景だ。


「……西の国か」


「えぇ。私たちは、西の国からの使者ですわ。"第一王女"の命に従い、この国を迅速に通過する必要があるのです」


白雪が、女王の部分を強調をする。


「……これから東側へ行くつもりか」


「……」


その一言の不穏さに、二人が黙る。


「……仕方がないわね」


リーナが小さく呟く。


「わたくしは、西の国の第七王女、リーナですわ。通して、くれますわよね」


どん、という擬音がつきそうな声で、リーナが兵士たちに凄む。


「第七王女……」


兵たちが目を見開く。


おぉ。西の国パワー、使えそうじゃん!


そう俺が楽観的になった途端。


兵の表情がーー急に険しくなった。


「西の国の王女は、今年16歳になったと聞く」


「え……え?そ、そうよ。ですからわたくしがーー」


「速やかに捉えろ!危険人物だ!」


ええー!?


「り、リーナおま、何してんだよ!西の国パワーどこ行った!」


「し、知らないわよ!わたくし、良かれと思って……!」


「年齢、見た目、兵たちの無知。全てが裏目に出ましたわね」


「く……っ!」


リーナが口を噛むと同時に、屈強な兵たちに取り囲まれる。


ど、どうする!?


どこまでやれるかわからんが、時代劇戦闘パートをするしかないのか……!?


「……まだ通行手型の効力は有効なはずですわ。勝手な拘束は、西の国への敵対行為とみなします」


「ふっ、それはどうかな……」


兵の一人が嘲笑う。


「通行手型の偽造も疑われている。全員、王の元に連行する」


「王……!?」


喧嘩してる兄ちゃんの方か!?


「……わかりました」


リーナが、静かに呟く。


「王に、謁見しましょう。誤解を解き、この無礼者たちを裁いてもらいましょう」


「……言ってくれる」


おいおい、挑発するなよ……!


「……今は大人しく捕まった方が良さそうですわね」


「……えぇ。王にさえ会えれば、わたくしのことも知っているはずです。ついでに無礼を詫びさせ、境界線まで丁重に届けて貰いましょう」


「えぇ……」


俺がそう言うと同時に、兵の一人が微かに光る杖を持ち、何かをゆっくり詠唱した。


「な、」


すると、次の瞬間、俺たちは微かに発光する黄色い紐で拘束されていた。


「ここまでするなんて……」


「悪いが、危険人物なんでな」


リーナの言葉に、ふっと兵士が嘲笑う。


「な、なんだこれ!」


「魔力拘束ですわ」


白雪が冷静に言う。


「王は、寛大だ。だがーー」


兵士がにやりと笑う。


「裏切り者には、厳しいんだ」

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