11.俺は伝説(になる予定)の武器を手に入れた!
「お、おおおおおお!!!!!」
俺は、めっちゃテンションが上がっていた。
なぜなら、目の前にはたくさんの様々な武器が置かれた部屋が広がっていたからだ。
「大剣!双剣もある!あっ、こっちの槍もいいな!」
「……バカね」
リーナが呆れたような目を向ける。
「なんだよ、お前だってこれから武器が必要だろ?早く選んだ方がいいぞ」
「いらないわ。だってわたくしは回復魔法専門だもの」
回復魔法専門?
それってーー、
「いや待て。お前まさか、戦えないのか?」
「だからそう言ってるでしょう」
ぷくりとリーナが頬を膨らます。
「……白雪の魔法は、」
「回復魔法、捕縛、洗脳解除。あとは人間相手でしたら、血の"整わせ"ぐらいでしたら」
「最後のやつは無視するとして……いや、このパーティ、バランス悪すぎねぇ?」
どう考えても、小人たち依存タイプだ。
「ルト、あんたがこのパーティでは前方攻撃なんでしょ?」
リーナが言う。
「いや、俺まだ戦ったことない」
「なんですって!?じゃああんた一体今まで何してたのよ!?」
「……見学」
「はぁ!?」
リーナが素っ頓狂な声を上げる。
いやわかる。
わかるよその反応……
俺だって、一回ぐらい魔獣と戦ってみたかったけどさ……
「コレニスル」
「コレダ」
目の前の小人たちが、体に似合わないやたらと厳つい剣やら槍やりを選んでいる。
「もう決まりましたのね」
白雪がにこにことする。横で控える騎士たちの顔は、少し引き攣っていた。
「もしかして、あいつらが前方攻撃な訳?」
「……」
「勇者いらないじゃない」
「うるせぇ!」
そんなこと、言われなくても俺が一番わかってるわ!
「いえ。ルト様は、荷物を持ってくださっていたのですわ」
「荷物持ちってこと?なお悪いわね」
「うぅ……っ」
俺は泣きそうになる。
ーーだがしかし!
武器だ!立派な武器さえ手に入れば!
「ルト様はどちらになさるのですか?」
「そうだなぁ……」
勇者は、大剣がテンプレだろ!
「これに決めた!」
俺は、自分の腰丈まであるほどの大剣を指差し、腰に手を当てる。
「……持てるわけ?そんな剣」
「あったりまえだろ!俺は勇者だぞ!ーーうぉぉぉぉ!!!」
そして、その巨大な剣を天に掲げる。
持ち上がった!さすが俺のチートフィジカル!
「どうだ!!」
俺はドヤ顔で二人を見る。
だが、二人はそれを見たまま、まだ何かを催促するような目をしていた。
「ルト様……どうかされましたか?」
「……いいから早く魔力を流しなさいよ」
えっ、なにそれ。
「ま、魔力?」
そんな、当たり前に備わってるみたいな……
俺がちょっと焦りながらそう言うと、
「普通、武器を手にしたら魔力が反応し、その人の魔力が武器に流れ出すものなのです。ですが、ルト様の場合……」
「あんた、勇者なのに魔力の扱い方もわからないわけ?こうやって、こうよ!」
側にあった杖をリーナが手に取り、少し握る。
すると、杖がほんのりとピンクに光った。
「ほら、やってみて」
「いやそれだけじゃわからな……いや、いける。俺は勇者だ!えいっ!」
俺は柄の部分を強く握ってみる。
ーー沈黙。
「や、待つんだ。何も言うな。これは罠だ」
「何のよ」
リーナが冷静に突っ込む。
「まさかあんた、魔力がないわけ……?」
「いやいやいやいや」
俺は焦って否定する。
そんなことあるか!?
いや、だって俺チート能力……!まさか本当に、"フィジカルだけ"なのか……!?
「ルト様、少しお手に触れてもよろしいでしょうか」
剣を下ろして頭を抱える俺の手を、白雪のひんやりとした手が包み込む。
「え?」
そうして、手にぼんやりとしたあったかい感覚が流れ込んでくる。
驚く俺を見て、白雪は呟く。
「ルト様にも、問題なく魔力は流れておりますわ」
「ま、まじで……!?」
嬉しすぎる!
「ならどうして、剣に魔力が流れないのかしら」
「ルト様の魔力は、私たちと少し異質な感覚があります……恐らくですが、異質な魔力が、剣とうまくリンクできないのかと」
「嘘だろ……」
まさかの俺、魔術師向き?
「とはいえ、魔力出力も出来そうな流れをしていません」
「え、えぇー……」
希望の芽が潰える。
じゃあどうしろっていうんだ。
「ルト様は、フィジカルがお強いですから……素手で戦うべきかと」
「いや俺、勇者だぞ!?」
「ぷっ」
リーナが吹き出す。
やめろ!そんなの俺の勇者像が崩れる!
「いいじゃない。漢・拳の勇者様」
「絶対に嫌だ!!俺は絶対に剣で戦うんだ!!」
俺たちがぎゃあぎゃあと騒いでいると、白雪がくすりと笑う。
「でしたら、剣を力で相手の肉体に捩じ込む方法がいいかと」
「えぐる、ってこと……?なんかやりたいのと違うけど……」
まぁ、拳よりはいいか……
俺は無理矢理自分を納得させた。