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10.親指姫が仲間になった!※ただし、可愛げのないガキ






が、王座に集められた俺たちの崇められイベントの予想は、またしても、あっさりと裏切られた。


「……恐らく、いやしかし……うーむ……。多分……勇者様ですな。……多分。断言できませぬが」


紫の水晶を持ったおっさんが、眉間に皺を寄せて悩ましげに俺たちを見る。


え!?なにこれ!?

重要な勇者選定イベントじゃないの!?


この歯切れの悪さは一体なんだよ!


俺は唖然と、そのおっさんを見る。


横では白雪がにこにこと笑っていた。


「……どういうことだ、占い師よ」


呆れたような声を出した第一王女が、王座から頬をついてそう尋ねる。


「我にも分かりませぬ。魔女の影響が大きいせいかぼやけており……未来が、はっきりとは見えぬのです」


「なるほどな……」


王女がため息をつく。


「ーーでは、今からお主らは"暫定"勇者だ」


「暫定!?」


初めて聞いたぞそんな単語!


「ぷっ、だっさい称号じゃない!」


「うっせ!」


俺は隣のリーナ姫をこづく。


「では、西の国に正式に勇者と認めて頂けるのですわね」


「……暫定だがな」


王女が複雑そうに白雪に言う。


「……一応、後ろ盾ゲット、ってことでいいのか?」


「えぇ」


白雪が微笑む。目的は果たされたっぽい。


「お前たちはこれからどこへ向かうつもりなのだ」


「そちらなのですが」


白雪が言う。


「西の国が現在得ている情報を、頂ければと思いまして」


「……なるほど。最初からそれが目的だったのか」


王女がぽつりと呟く。


え、なに?どういうこと?


「良い。こちらも手の内を見せよう。数日前に出た占いの結果では、北の魔女は、近いうちに南の国へ現れると出た」


「南の国、ですか……」


白雪が考え込むような素振りをする。


「あぁ。だがまだ南の国には警告しておらぬ。我が国と西の国は、友好国ではない」


なんだよ、それ……


「じゃあ、南の国が何かあっても西の国は何もしないってことか……?」


「そうだ」


王女が扇子を仰ぐ。


俺は少し混乱しながら戸惑う。


「いやでも、今から伝えれば襲撃に間に合うんじゃないのか?北の魔女ってやばい奴なんだろ?だったらーー」


「勇者よ」


王女の鋭い視線が、こちらを捉える。


「これは国と国同士の話だ。我らが警告するためには、人を出さねばならぬ。それも、魔女の目を掻い潜れる有能な人間を、だ。そのような有能な人間を失うリスクを取ってまで、我が国は警告などはできぬ」


「そんな……」


俺は言葉を失う。


だって、それって要は見殺しってことだろ?


「……姉様は、間違っているわ」


ぽつりと、誰に聞こえるでもなく、小さくリーナ姫が口籠った。


そうだ。間違ってる。それにーー




「ーーそこでだ」


俺を口を開きかけた瞬間、王女が扇子をぱちん!と閉じる。


「お主ら勇者一行に、南の国へ向かって貰いたい」


「……俺たちが?」


俺は目を瞬く。


「そうだ。そして、南の国へ我らの予言を伝えて欲しい」


「……これは、王命でしょうか」


白雪が、低めの声を出す。


「あぁ、そうだ」

「……」


二人がしばし見つめ合う。


「でも、南の国に行くっつっても、俺まだ何の武器も必殺技もないし……」


「必殺技が何のことかわからんが、武器については後で支給してやろう」


「え!?」


俺はテンションが爆上がりする。


だって、やっと手に入る!俺のファンタジーな武器!

しかも大国からの支給って!テンション上がるだろ!


「……あなた、本当に頭お花畑ね……どういうことか、わかっているの?」


リーナ姫が呆れたようにこちらを見た。


「それから、我の魔力サインの入った通行手形も授けよう。これさえあれば、大半の他国は通行できるはずだ」


「ありがとう存じます」


白雪が温度のない声でそう言う。


「あぁ。それから、そうだなーー」


王女の目線が、リーナ姫に向く。


「ーー我が国から、親指姫を出そう」


「は!?」

「えっ!?」


俺と親指姫が、同時に声を上げる。


「姉様、それは一体どういう……!」


親指姫が悲痛な声を上げる。


「や、待て待て待て!こんな見るからに非力な姫、絶対お荷物になりますって!」


「なんですって!」


「事実だろ!?」


俺らはあまりの衝撃に、ぎゃあぎゃあと二人で揉める。


「ですが、彼女は貴重な城の魔力供給源のはずでは?」


白雪が淡々と言う。


城の魔力供給源?なんだそれ?


「あぁ、だが一人ぐらい不在になっても我が国には問題ない。特に、その親指姫ならばな」


「……」


リーナ姫が唇を噛んで俯く。


また、これだ。


「確かにこいつは見るからに弱そうだけど……そんな言い方はないんじゃないのか」


俺はついついそう言ってしまう。


「ふ、そうだな。しかし、親指姫をこちらが出すのもお主らのことを思ってだ」


「どういうことでしょう」


「西の国の人間ーー特に王族というのは、それだけ利用価値があり、旅の役にも立つということだ。これが、我らなりのお主らへの餞別……後ろ盾だ」


「……」


そこまで言われてしまうと、もう俺も白雪も何も言い返せなかった。


「……わかりましたわ」


リーナ姫が、ゆっくりと息を吸い、静かに頭を垂れる。


「ーーわたくし、第七王女リーナは、勇者様と共に南の国にまいります」


「良い」


王女の扇子が、ぱっと開く。


「国の大義、よくよく全うしろ。それと勇者よ」


王女が、にこりと笑う。


「ーー喜べ。我が国の、素晴らしい武器を支給してやろう」

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