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1.童話の世界に異世界転生!




「俺の望みはただ一つ!

世界を救うチートな勇者になって……

旅の仲間と、ハーレムを築くこと!です!」


俺がそう高らかに宣言すると、目の前の女神様がくすくすと笑った。



「流行ってるのねぇー、それ。

どいつもこいつもテンプレ好きで……

今月だけで一体何人、似たような願いを叶えたことか……ラノベ脳かよってね」



ほぅ、とため息を吐き、女神様は真っ白な頬に手を当てた。


なんか今、その上品な仕草に似つかわない物凄い暴言飛び出した気がするんだが……?


ちょっと引いた俺と目の合った女神様が、場の空気を入れ替えるようにぱんぱんと手を叩く。



「いいわぁ。叶えてあげる、その願い。

ただね、もういい加減そっち方面の世界の空きが少なくなっちゃってるから、テンプレから外れた、ちょーっとメルヘンちっくな世界感になっちゃうけど、それでも平気?」

「まっったく構いません!」


間髪入れずに俺がそう返すと、女神様はにっこりと笑った。



「あなたは聞き分けがよくて助かるわぁ。

最近の子は、悟ってるくせに貰えるもん貰えるって分かった瞬間、あれこれ無理難題な注文つけてくるからとっても面倒だったのよぉ。

でもこれで決定ね。

じゃあ、行くわよぉ〜〜!」



えーい!と女神様が杖を振りかざす。

途端、俺の足元に魔法陣が現れ、全身が青い光に包まれる。


おぉ!初めて見た!本物の魔法だ!!


俺がその魔法陣に超興奮していると、女神様はまたにっこりと笑い、


「頑張ってねぇ〜〜」


そんな間延びした声で俺を異世界へと送り出したのであった。








ー----


さて。

遅くなったがここで俺の自己紹介をしよう。


俺の名前は、佐伯ルト。


例に漏れず、猫を庇い18歳という若さでダンプカーとの交通事故に遭いこの世を去った。


彼女なんてできたことはなく、教室の隅っこでラノベ片手にリア充たちのハーレムを歯軋りして羨んでいた人生。


その人生が、今大きく変わろうとしている!


俺はとても浮かれていた。


……それがいけなかった。


女神様相手にごねずに、転生先を、さらっと決めてしまったことを。










ー----


「で。ここはどこなんだ」


ガァガァと不気味なカラスの鳴き声がする森に、俺はいた。


どこもかしこもうす暗く、行く手には不気味な形の木。


「こういうのって、まずは小さな街に落とされるのがテンプレじゃないのか……?」


憧れの異世界転移だが、スタート地点があまりにも深い森に笑顔が引きつる。


こう、手をかざしたり力を入れてみたりしても、魔法が使える気配はないし。


しかも格好は元の世界にいた時のままで、Tシャツにジーパン姿だし。


--どこらへんが異世界転生なんだ?


最後に見た女神様の満面の笑顔--

なんだか、いまさら嫌な予感がぷんぷんする。


だが、ここにいつまでも立ち止まっていたって仕方ない。


俺には何らかのチートがある……と信じている。

というか女神様もそう言っていたし。


まぁ、なんとかなるだろう。


持ち前の楽観的な気持ちで、俺はとりあえず前に進むことに決めた。


--が。


「で、出口ねぇじゃんここ……」


てっきり薄暗い森を抜けたらそこには街が--!という展開を期待していた。


なのに何もない。

何もないのだ!


あるのは木!ひたすらに木!あっちにも木!


「森しかねぇぇぇーー!!」


俺の叫び声に応えるように、ガァガァとカラスの鳴き声が不気味に響く。


"遭難"の二文字が頭をよぎるが、先に進まなければそれはそれでこのまま異世界で餓死するだけのような気がしてきた。


普通に腹減ってきたし。


食べれそうなものは……ないし。


むしろこちらが食べられそうな気持ち悪い花のようなものがうねうねとしている……


俺が目を細めてその花を見つめていると。




「……まぁ」


突然、背後から透き通るような声がした。



驚いて振り返ると--、そこには、驚愕する程の美人が立っていた。


真っ白な陶器のような肌に、桃色の唇。小さく整った鼻に、まん丸に見開かれた黒い瞳。


西洋の絵画の中から現れた人間のようだ。


見たことない美人……!


俺はしばらく見惚れてしまう。



「また刺客の方ですの?」

「はぃ?」


急に物騒な言葉が、笑みを作った形のいい唇から紡がれる。


もしかして、異世界ハーレム要員では?


頭にはてなマークを浮かべた俺に、美人は黒髪をそっとかきあげ、ふんわりと笑った。


「全く、お母様も学習しませんわね。何人送り込んでも同じことだと言うのに。貴方も、こんな所まで送り込まれて可哀想に」


初対面なのに、なぜか哀れまれている。


「あっ……違います。俺は、」


会話の途中で、物凄い衝撃が左脇を襲う。


数メートル吹っ飛ぶ体。


木に打ち付けられて激痛に喘ぐ俺は、美人のどこまでも美しい笑みを捉えた後、そのままブラックアウトした。


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