39.チーズタッカルビ
向かったスーパーは駅近くで立地が良く品揃えも充実しているのだが、価格設定が若干お高めのため僕はあまり利用していなかったのだが、今日は利便性重視だ。
スーパーに着くとまずカートを引かされた。3人の1食分でカートが要るか?と思ったが黙ってカートにカゴがセットされるのを見ていた。
「メニューって決まってるの?」
と売り場を回る方針を尋ねる。
「メインはね。今日はチーズタッカルビパーティーだよー」
チーズはもちろんわかるが『タッカルビ』がわからない。カルビ?肉か。
野菜コーナーに着くとひと玉のキャベツがカゴに放り込まれた。
「『タッカルビ』とやらはキャベツひと玉も要るの?3人前で」
「あーいや、カットで買うと割高じゃん?余ったらヤタ君持って帰ればいいよ」
ブロッコリーひと株、ポーン。
「『タッカルビ』とやらはブロッコリー使うの?響きからすると韓国料理だと思われるのだが」
「安かったからー!ヤタ君、それで何か作ってー?」
「『タッカルビ』とやらの他に何か作れと?」
「一応訂正すると、『チーズ』タッカルビね。今日はねー、実はヤタ君の料理の腕前を披露してもらおうってテーマもあってね」
「僕が自炊するって話を信じてないってことかな?」
「そんなんじゃないよー。ただ、食べてみたいよねーって」
ツルさんが『よねー』のところで首を横に傾けた仕草はさすがにあざとく思った。
そんな仕草に参る僕ではない。
「で、誰が?」
「2人とも、だよ?まぁ言い出しっぺはあたしだけどー」
くっ、那青さんも同調しているなら無下にはできない。
ツルさんの自炊レベル判定を大きく左右させる分水嶺である揚げ物をピンポイントで要求されなかっただけ良かったと思おう。あれ、そういえば那青さんの家は揚げ物しないって言ってたような……。そもそも揚げ鍋は無いのかも知れないな。
「えぇと、作るよ、じゃあ。だったら僕にも材料選ばせてよ?」
玉ねぎ1ネット、ぽーん。
「玉ねぎはチーズタッカルビに使うから!しょーがないなー、ヤタ君も食材選びなよ?」
玉ねぎもどうせ1ネットも使うまい。いやしかし……チーズタッカルビと言うくらいだから、それはチーズが重たそうだ。僕の料理は軽い副菜あたりを目指さないと食べ残しが出るおそれがあるな……。
「あー、菜の花っ!ちょっと苦みがあるのがいいよねー」
菜の花ひと束、ぽーん。
「これは絶対タッカルビに要らないもんでしょ⁉これも僕が使う体で放り込んでるの?」
「ヤタ君ー。早くしないとメニューの余地がなくなっちゃうよー」
家で使うならブロッコリー、菜の花は茹でて仕舞いだ。ツルさんの挑戦に挑むならば既にアレンジが必要な状況に陥っている。
「ちょっと待ってて!」
僕がいない間に追加で何か放り込まれることはないと信じて、一旦カートから離れ、材料を急いでかき集め、戻る。カゴの中に新たに追加されたモノは無かった。食材ぽーん、あれはやっぱりツルさんのお遊びだったようだ。そこで僕は宣言する。
「もう新規の投入はダメー、おしまいー」
「くっ、まだフキノトウも春菊も入れてないのにー!」
その葉物への偏重はなんだ。しかもフキノトウなんて僕には揚げる調理しか思いつかない。真に受けるならやっぱり揚げ物もさせるつもりだったと考えられる。
まぁそんな攻防をしつつの買い物も悪くはなかった。楽しかったと言って差し支えない。
あとはチーズタッカルビに欠かせないらしいチーズの大袋と鶏もも肉(唐揚げ用)をカゴに入れた。牛肉のカルビを入れるもんだと勝手に思い込んでいたがタッカルビの”タッ”の箇所が鶏を指すらしい。
さて会計に向かいますかというタイミングで
「パーティーと言えばこれは欠かせないでしょー!」
とコーラのペットボトル(大)が2本投入された。それは、異議なし。
別腹で甘いモンとか要らないの?と尋ねたが
「あたし、夕飯も別件で外で食べる約束してるからー」
と主賓が所望されなかったので買わなかった。




