表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/65

37.ヒゲを剃ってきてね

数日後、ツルさんから『ツルさんの送別会』の案内のメッセージが届いた。

「どうせ予定ないでしょ」と書き添えられた開催日はメッセージ到着の翌日だった。

予定としては空いているのだが副業に割く時間が相当に増え、暇ではないのだが。

また、送別会とは通常送る側が企画して主賓を招くものだと思っていたが、参加メンバーが

ツルさん・那青さん・僕で、会場は那青さんの家だったので、送別会にかこつけて集合したかったのだろうと解釈した。食事の買い出し係でさえ僕と主賓だ。

ツルさんは顔が広いようで、そのような会に幾つも出席するらしく卒業旅行も複数回行くようで「スケジュール管理が大変らしいよ」とは那青さんから聞いていた。きっとツルさんはぶっきらぼうに招待しつつも、実際は忙しい日々の間隙を縫って会合を企画してくれたのだろう。

何故か「ヒゲを剃ってきてね」との文言も添えられていた。言われなくとも無精ヒゲを晒したまま参加するような真似はしない、一体僕はどんだけ不精に思われているのだろうか。

記念写真でも撮りたいからベストな状態で、と言うことだろうか。ならベストは難しくてもベターで行ってやろうと明日に備え、髪のセットをモノにするべく今日もヘアワックスの練習をする。


ワックスは難しい。まず量を取りすぎると収拾がつかなくなる。髪が集合しすぎてベッタリとした束になり、さながら頭部にワカメ一株だ。少なすぎるのもそれはそれでよろしくない。ワックスのノビが足りず、セットされた髪とされていない髪が分裂、喧嘩してしまい、整えるためにワックスを使っているというのに余計に散らかった印象が出てしまう。経験上……サンプルは少ないが、僕の腕前では髪全体にうまいことワックスを行き渡らせるのは無理で、ならば初めからそこは狙わず、根元に狙って少量を着けて髪の立ち上がりの向きをコントロールするのが失敗が少ない、と今のところ結論付けている。


髪のクセを抑えるシャンプーに変え、リンスを導入したからか、髪のボサボサはあまり気にならなくなった。シャンプーは、汚れを落とすことこそが本分だなどと思っていたが大間違いだった。髪自体のクセ……もといナチュラルウェーブもデザインとして許せる範囲に落ち着いてきたのでなおさらだ。ほんの半月前までのボサボサ・バサバサは、ありゃ酷かったなぁと、ちょっと気を付けるだけでこんなにも変わるもんなんだなぁと、美容面での進歩も那青さんの影響だよなと思えて嬉しかった。


先日ヒゲ剃り用のT字剃刀も新調した。前に使っていたモノも剃刀としての機能はもちろん十分にあったのだが、剃刀負けしやすいのが気になっていた。新商品はより深く剃れ、肌にも優しい。剃刀負けすることはほとんどなくなった。買う時には剃刀ごときにこんな値段……⁉と思ったが、高いなりに性能が明らかに違った。コストはかかったがパフォーマンスも非常に高かったのでコスパという観点からも十分に納得のいくモノだった。安くてそこそこ使えるモノもコスパが良いとは言えるが、選びようは様々あることを改めて感じた一件だった。ドラッグストアやデパート等でやたらと化粧品の敷地面積が広いのもセレクトの対象を大きく取っているんだなと間接的に理解できた。もちろんそれは漫画に使える視点だ。


午前の早い時間、街は新鮮に映る。動き出す前の街の、閑散としているがもうじきにエネルギーを発散するまで息を潜めているような雰囲気が結構好きだ。

駅近くのスーパーの開店時間に合わせて、ツルさんと待ち合わせをしている。僕は待ち合わせなどでは10分前に到着するポリシーだ。まぁこれは割と一般的らしいけれども。相手が誰だとかは関係なく、10分前到着を目安にすると焦らず済むし、待つことになっても大した時間ではないのでそうしている。これも心的負担と時間を秤にかけたコスパ重視の姿勢だったりするのだろうか。


今日は那青さんの家で靴を脱ぐので靴下は新しいモノをおろした。靴は、脱いで置いておく状態で一番カッコいいと思ったミドルカットのブーツを履いてきた。もちろんブラシがけからオイルの塗りこみ、乾拭きと手入れに怠りはない。革の赤茶色がぬらりと鈍い光沢を放つ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ