13.誰だそのロマンチストは
……那青さんは僕のどこに関心を持ってくれたんだ?
いくら考えても、どこにもたどり着けない。
そもそもたどり着いたところで、どうすればいいのかわからない。
連絡先をもらったところで、何を連絡すればいいか全く思いつかない。
特別な用件も思い当たらない。
那青さんが今、会食中であろうことも障害になっている。
例えば……『今日はありがとう』。文面自体は毒にも薬にもならないけど、友人とご一緒してると知っているタイミングでこれを送ることはできない。それは気が利かない。
ならば会食が終わって那青さんから送ってもらうのをスタートとすべきなのか。その是非がわからない。
LIMEでの対友人のルールも知らない。
編集さんとのやり取りの場合は基本敬語だし、家族と連絡する場合は……特に何も考えていなかった。
ツルさんとのやり取りは……ツルさんは僕のメッセージは基本そっけないと評していたが……関係性に甘えてしまっていたところが多分にあった。とても参考にはできない。
他にも、スタンプはどの程度使うべきなのか?絵文字を使ってもいいものなのか?
送る文面の内容を吟味する以前にわからないことが多すぎる。
さらにそれらの解決には緊急性があるかもしれないと気付いた。ルールやマナーとして僕から送るべきである場合、タイムリミットなるものが存在するかもしれない。そこら辺の常識に強い人物に訊きたい場合、実際は何かを見透かされるのが嫌だしそもそも人に相談したくはないのだが、僕にはツルさんの他に頼れる人が見当たらない。
……問題はツルさんもまた会食に参加しているということだ。
自分で正解を見つけなければならない。
……こういうのはどうだろう。
僕は帰り際、この後漫画を描くと言った。漫画を描いている体なら連絡を取らなくても不自然ではないかもしれない。……でも、例え人生をベットして漫画を描いてるとは言っても、『メッセージを送るほんの数分も割けない程度の関係性しか望まれていないのか……』などと那青さんが思ってしまうリスクはないだろうか。いや、リスクの有無を気にした時点で、送らない方針は却下すべきだ。
ふと自分の手足が冷えていることに気づく。
暖房もつけずにじっとしてたのか。エアコンのリモコンを取ろうと立ち上がり、何となしにカーテンを開けた。
……雪だ……
月は隠れてしまっている。
……冷え込むわけだ。
スマホを手に取り『那青さん、雪だよ』そう送った。
雪というタイムリーな出来事を共有するのであれば、今送っても……否、今送るのが自然だ。
雪が降っていることを伝えたい……。
誰だそのロマンチストはと、自分で自分に若干引くレベルだと客観視もできていたが、不思議なことに勇気を奮い立たせることもなく、雪を見た瞬間に得た直感に身を委ねられた。
僕らしくないが、僕らしくあり続けたら何も行動を起こせないままだ、きっと。
一旦困惑も悩みも手放すことにした。
もう今日はこれでいいじゃないか、いい日だった……と今日を終わらせることにした。
布団を敷き、潜り込み、ヘッドホンを装着してうるさくてくそ早い音楽に没入する。




