第五話 大悪魔の(スパルタ)戦闘講義
「さて、善は急げってことで今日は一日レベル上げするぞ!」
「うん。うん…うん。ありがたいんだけれど…ね? なんでミラと戦うのかな???」
昨夜の食事会でレベル上げの約束をしてくれたので、楽しみで少し眠れなかったのだけれど…
朝起きてセリさんに地下に連れて行かれて床ぶち抜いて最下層の大広間まで来ました。
ミラは仁王立ちで待ってたけどセリさんは着いてすぐ扉の前で魔獣をボコってる、あの雑兵の一匹一匹が私を簡単に殺せる代物なんだな…うっ、力の差が。
「てっきりスライムとかから始めるのかと…」
「何だ面倒くせぇ!結局は経験値ってのは経験を積めば入るんだ!あんな水モドキと戦うより私が手解きしたほうが何倍もレベルが上がる!」
「なるほど。倒さなくても経験値が入るんだね!」
「ん?最終的には殺せよ?」
「えっ」
「ミラはこれでも【帝級悪魔】なので余程の事がなければ数秒で復活するんですよ。」
「ならええか。」
「よっしゃその意気だ!じゃ、始めるか!」
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「【傲慢の枷】」
「なにそれ?」
「あんまり実力差がありすぎてもアレなんでな。弱くした。
教える動きすら見えなかったら何も学べないだろ?」
「たしかに!ありがとう!」
「良いってことよ!あ、武器は使うんじゃねぇぞ。」
「えっ」
「最終的には聖剣より拳のほうが強くなる、ここはそんな世界だ。武器を持つのは弱者の証!いつまで経っても強くなれねぇぞ。」
「そっか…魔法は?」
「自分の魔力だから構わんさ。遠距離という手札が増えるし頭を使ういい練習にもなる。」
「オッケー!まぁ使えないんだけど。」
「私が帰ったあとにセリに教えてもらえや。」
「はーい。」
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「じゃあ最初は基本的な構えだ。拳の良さが何だか分かるか?」
「えー良さ?んー…」
良さ。良さね…
リーチなら圧倒的に剣や槍が勝ってる。でも接近戦には弱い。
「拳は接近戦に強いとか?」
「なぜそう思った?武器だって近くで振れないことはないぞ?」
振りにくい。振れないことはない。拳は…うーん…
「一度見せた方が分かりやすいか。セリー!こっち手伝え!」
「ちょっと待っててください。【万死死霊術:冥界の番人】」
「ごついごつい」
死屍累々の様子だった肉塊が集まり、一つの巨人の形を為す。
セリさんの役目を果たしてくれるんだろう。
「それで、私は何を?」
「ゆっくり戦え。」
「会話を聞くに、武器を持ったほうが良さそうですね。」
「頼むぜ。」
数秒待つ間もなくセリさんが剣を持ってきた。
赤黒い。何か刃がヌラヌラって感じで光ってる。瘴気が見える。
いや禍々しすぎるだろ。練習試合になんて呪物持ってきてんだ。
「まーた新しい魔剣増やして…」
「仕方ないでしょう楽しいんですから。」
「まぁ分からんでもないが!とりあえず私が近くに寄るから何となくで剣を振ってくれ。」
ミラがゆっくりと近づいて行く。
セリさんが剣を振るが、ゆらりゆらりと回避し懐に潜り込む。
至近距離で剣を振ろうとすると自分にぶち当たるかもしれない。だからセリさんは一度引く、もしくは突きしかできない。
突きをセリさんが選択すると、一度剣を自分側に引かなければならず、その間にミラの放った拳が_
「なるほど、拳はリーチの代わりに攻撃の待機時間が短いんだ!」
「正解だ!近づいてさえしまえば後は一方的に相手に決断を強いる、それが拳だ。
なら今度は、弱点は何だと思う?」
これは簡単。
「拳はそれくらいのポテンシャルを持ったものでは有るけど、結局のところ相手を詰める選択肢をパッと思いつかなければ意味がないよね?下がらせないように、でも攻撃を喰らわないようにってバランスを取れない人に拳は向いてない。そういう事でしょ?」
「そうだ!賢いなぁ!」
「へへっ」
「戦闘は頭を使うもんだ。どんなに強い魔法だってどんなに強い剣だって、振るべき時に振らなければ意味がない。それを分からない奴はいつまで経っても成長しない。よく覚えておけよ。」
「分かった!」
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「さて、ここからは実践だ!」
「実戦早くない!?」
「いや、体を動かすだけだ。」
「なるほど実践のほうか」
「基本的な動きはストレート、フック、アッパー、ロウワー、それにパリィを組み合わせるんだ。
フェイントを掛けたり、相手の視界外から攻撃したり…な。実際組み合わせってのはそう多くはない。
蹴りもざっと分けると下段、中段、上段の3つ。蹴り方にも回し蹴り、前蹴り、後ろ蹴りだったりかなり大量にあるが、まぁ隙が大きい。相手がビビって攻撃をしにくくなった時にガードを崩す、そんな用途で使うな。」
「へぇ…」
「とりあえず打ち込んでこい。その度に直してやる。」
「え、ミラに?」
「他に誰が居るんだよ。」
「たしかに…」
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「攻撃が…通らない…」
「最初よりかは随分良くなって来たぞ!まぁ一日でこれだけ出来れば十分だろ!」
「成長した気がしないんですが」
「まー最初はそんなもんだ。ある時前の自分と比べて『あ、強くなった』って思えるから頑張れ。」
「頑張ります。」
「じゃあ次!ある程度の強者になってくると自分の魔力で威圧してくるんだ。しかも残念なことに気合でしか対応できない。」
「えっ…自分の覇気で相殺できたりしないの?」
「できない。これにどう対応するかってのが相当重要になってくるぞ。」
「まじか…」
「てことで実践【強者の覇気:測定不可】」
空気が重い。さっきまで見てたミラと寸分違わない筈なのに体が勝てないと信じている。
得体のしれないものに見えて目の前が暗くなる。戦うことを放棄したくなる。
「自分に自信をもってくださーい。ミラはミラですよー。」
「大丈夫、大丈夫!頑張れー!」
これは練習、これは練習。大丈夫、殺されはしない。大…
怖い
「っ…ぐ、はぁ…」
あ、目の前が…
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「いやー本当にすまん!抑えれば良かったな!」
「さっきのを数秒でも耐えたことでレベルがとても上がってますよ。よく頑張りました。」
鑑定装置で確認したらレベルが32まで上がってた。
「さて、今日はこれくらいにしとくか。部下の様子も気にな」
「もう一回!!」
「大丈夫かほんとに!その意気は好きだが!」
「やる!!」
「よぉーし!ならやってやろう!」
____________________________________「【強者の覇気:測定不可】」
「があああああああ!」
耐えろ、耐えろ。レベルが32倍になったから私は大丈夫。
虚仮威しだと思えば良い。足を動かせ!勝ち筋を見つけろ!
「その意気だ!来い!」
「行ける!」
あ、目の前が…
「ふぎゅう」
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「次!」
「よっしゃ行くぜ!」
「リテイク!」
「大丈夫かマジで!」
「もう…一回!」
「頑張れ!成長してるぞ!」
やり直すこと5,6回。その度に一歩ずつ成長しているのを感じる。
「あ、レベルが限界値に達しましたね」
「つまり99と?」
「ええ。ですが短期間でレベルを上げてしまったので試練の内容もかなり高いはず…一度ミラと戦闘して勝つとか、そのくらいはしないと限界突破は厳しいと思います。」
「目標と変わらない!よし、頑張ります!」
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「【強者の覇気:測定不可】
「があああ!!」
『新スキル【シャウト】を世界に登録。【シャウト:origin】を九堂夏希に贈与。』
自分を奮い立たせる為に叫んでいたが、今回は体の動きが違う。
なぜかを調べている時間は無い。
自分に自信を持って一歩ずつ前に進む。近づいていることを実感する。
どんな強者だろうと、回避して殴ればそのうち勝てる。
「届け!」
残り約10歩。飛んでくる火の玉を横に飛んで避ける。
9。地面が加熱したからジャンプして進む。
5。ミラが踏み込んできたからタイミングを測る。
3.2.1…
今!着地した瞬間は、僅かな隙ができる!
チャンスは一回。大きく踏み込み、全力のブローを当てる。
「終わりだああああああああ!」
放った拳は、確かな抵抗を持って同じように出したミラの拳に当たった。
「がっ!」
衝撃波と風が吹き荒れ、両者とも大きく吹き飛ばされたのをセリさんがあらかじめ貼った障壁が受け止める。
「合格だー!」
「やったー!」
「おめでとうございます。」
何度か死にかけたけれど、無事に終えることができた。
あ、目の前が…
「ふぎゅう」
「「あーーー!」」




