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信義  作者: 坂井 準
8/10

第8日

私は、大阪で3年間勤務した後、名古屋地裁管内の支部への勤務となりました。それまで大都市での勤務が続いていたので、支部への勤務は何か左遷であるかのように同僚には言われ、慰められましたが、単なる人事上の都合と思われます。

支部での勤務はそれまでと随分勝手が違いました。民事のほか、刑事、少年事件も担当しました。業後に同僚に誘われて出かけると、先ほどまで法廷に出席していた当事者が居酒屋で飲んでいたりしました。狭い町でしたので、どこで誰に見られているかわかりませんでした。

支部の職場に、非常に愛想の良い高卒の女性職員がいました。同姓の職員が複数いたため、香織さんと下の名前で呼ばれていました。この頃社会人女性の間でも、女子高生のそれが波及したのか、短いスカートが流行っていました。堅い雰囲気の職場ですから、そのような流行の格好をあえて選択しない女性職員が多かったのですが、香織さんは若いせいか無頓着で、短いスカートやキュロットスカートをよく履いていました。その刺激的な服装には大層欲望を喚起させられました。

小柄で、かわいらしい顔立ちをしており、性格は明るく、私のような中年男にもいつも笑顔で接してくれました。

優男の同僚は、私と同じ妻帯者でありながら、香織さんを誘って数人で昼食に行ったり、時には飲みに連れて行ったりもしていたようで、私は常に妬ましい目でそれを眺めていました。

私は風呂場では、よく香織さんを思い浮かべ、ミニスカートから出たかわいらしい太腿やお尻を撫で回したり、キスをしたり、もしくはそれ以上の淫らなことを妄想したものです。

翌日、香織さんが仕事のことで話しかけて来ると、そしらぬ顔で対応しながらも、心の中で、(きのうの夜は君を思っていたよ。最高に気持ちよかった)とささやきかけました。

香織さんが私の席に来て話しかける時、近眼なのか、私の机上にある書類をかがみこむようにしてのぞきこみます。髪が顔の側面を覆うようになって邪魔なのか、片方の髪をかきあげて耳にかけるようにします。小さな耳たぶがあらわになり、洗髪後のような芳香が漂います。私は欲望が高まり、我慢できず、職場の便所にかけこんだこともあります。

香織さんは支部長判事に雑用を命じられよく残業をしていました。ちょうど私と帰りが同じ時間帯になり、駅まで一緒に歩いたことがありました。香織さんが少しお話ししたいことがあると言います。支部から駅までは徒歩3分でした。香織さんが隣の栄えた駅まで行きたいというので、15分ほど歩き、駅前の、洋菓子屋に併設されている喫茶店に入りました。

私は、自分がいつも香織さんを性的な目で見ていることを感付かれ、抗議されるのかと思いました。とても居心地が悪く、早く解放されたいと思いました。

「どうしたんですか?」私は恐る恐る尋ねました。

「実は」香織さんは念入りに周囲を見回すようにして言いました。「私、石川支部長にセクハラを受けてるんです」

「本当ですか?」私は反射的にそう言いました。

石川支部長は支部の統括的な立場にある裁判官でした。セクハラという言葉は既に一般に浸透しており、セクハラについて争われる訴訟も多くありました。それらを裁く裁判官の立場にあり、かつ支部の責任者という立場にありながら、そのような行為をするのでしょうか。

「差し支えなければ」私は尋ねました。「どんなことをされるのですか?」

「体を触られます」

「どんな時に?」

「夜、コピー室にいる時が多いです。きょうも胸を触られました」

石川支部長はざっくばらんな性格で、頻繁に駄洒落を言うなど、明朗な人物でした。しかしよくよく普段の行状を思い起こしてみると、女性の書記官や事務官の前で性的な冗談を口にすることがあり、品行方正とは言えないところがありました。

「それは大変な問題ですね」と私は言いました。糾弾される相手が自分でないことがわかり、胸を撫で下ろしました。「頻度はどれくらいですか?」

「ほぼ毎日です。ただ、ほかに人がいる時はされません。私、どうしたらいいでしょうか?」

「できるだけ二人きりにならないようにしてください。私の方から、支部長に少し話しておきます」

「ありがとうございます」

香織さんは心からほっとしたようでした。私は複雑な気分でした。正義漢ぶって、香織さんに同情的な発言をしましたが、自分は普段、こっそりと彼女を欲望の対象として見ているのです。石川支部長が本当に性的な嫌がらせを行っているのなら大問題ですが、自分自身の罪深さも大して変わらないと思いました。私には石川支部長を責める資格はないと考えました。

私はどう行動すべきか呻吟し、数日間は何もしませんでした。ただ、香織さんが全幅の信頼を置いて私に相談をもちかけた以上、無視するわけにはいかないと結論付けました。

私は石川支部長を会議室に呼び出しました。

「どうしました?」と石川支部長は問いました。

「石川支部長が女性職員に性的な嫌がらせを行っているという話があります」

私は単刀直入に言いました。石川支部長は少し驚いた顔をしました。

「誰がそんなことを言っているのですか?」

「それは言えません」

「根拠薄弱なことを言わないでください」石川支部長はむっとして言いました。「私の名誉を著しく棄損していますよ」

「被害を訴えている方がいます」

「大谷さんは、その者の言葉を鵜呑みにして、私を糾弾するのですか?」

「嘘は言っていないと思います。支部長は責任のあるお立場ですから、気を付けられた方がいいと思います」

「事実無根です。失礼極まりない発言です」そう言った後、石川支部長は声の調子を一段低くしました。「大谷さん、あなたはご自分の立場をわかっているのですか?」

「立場と言いますと?」

「あなたは出世コースを外れて、支部に左遷されたのです。大人しくしていた方がいいと思いませんか。私は支部長です。あなたを出世コースに戻すか、それとも更に僻地へ左遷させるか、最高裁事務総局に進言することができる立場です」

「私は左遷とは考えていません」

「認識が甘いですね。あなたが世間一般から見て非常識な判決を書いたからです」

「私は、自らの良心に従って誠実に職務を行ったのみです」

「そんな建前論が通用するとでも思っているのですか?」と石川支部長は続けました。「名古屋地裁の支部ならいい方ですよ。離島の支部に配属されて、そのまま異動なく塩漬けになっている者もいますからね」

石川支部長の発言は脅迫めいてきました。私はこの時、それまで若干の疑念を抱いていた石川支部長の性的嫌がらせは事実であると確信しました。また、石川支部長がとんでもない俗物であるとわかり、それまで曲がりなりにも抱いていた上司への尊敬の念が消失しました。私はそのまま会議室を出ました。

支部には支部長のほかに判事は3人しかいませんでした。翌日から、ほかの判事が抱えていた進行中の案件まで全部私の担当に移すなど、石川支部長の私に対するいじめが始まりました。私は言われるがまま業務はこなしましたが、子供じみた報復を試みる石川支部長への怒りが日に日に募りました。

私は、石川支部長がその名を出していた、全国全ての裁判官の人事を掌握している最高裁事務総局の人事局に匿名の電話をかけ、支部において支部長が性的嫌がらせを行っている事実を告げました。 しかし数ヶ月たっても、人事局から確認の電話が入るとか、調査のために人が派遣されて来るということはありませんでした。匿名の電話だけでは、人事局も動くことはないのだろうと思われました。

石川支部長は私に対してあれだけ啖呵を切った以上、香織さんへの性的嫌がらせをやめていたと思います。香織さんから私に重ねての相談もありませんでした。しかし石川支部長の私への風当たりは強くなり、私の依頼した決裁を放置したり、事件に関する協議にも応じなかったりしました。

私は腹いせに、インターネット上の匿名掲示板に書き込みをするという挙に出ました。当時、匿名掲示板が隆盛を極めており、あらゆる会社や組織についてのスレッドが立てられていました。裁判所に関するものもあり、内部告発的な内容も多く見られました。もちろん実名は出しませんが、名古屋地裁のある支部で問題が起こっていることを書きました。それに対応するいくつかの書き込みがなされ、返答という形で書き込みを続けました。しかし、そのような形で身内の恥を晒すのが正当なやり方でないことはわかっており、書き込みをした者のIPアドレスが把握されていることも知っていましたから、深入りはしませんでした。

書き込みをしたこともすっかり忘れていた冬の日、突如として、石川支部長に異例な時期の異動命令が下りました。転任先は皮肉にも長崎地裁の離島にある支部でした。石川支部長は、何か私が暗躍したとでも思ったのでしょう、異動の日まで、私とは一切口をききませんでした。

首席書記官が石川支部長の送別会を企画しました。私は欠席すると告げましたが、事情を知らない首席書記官がしつこく誘うので、石川支部長との間の揉め事を詮索されるのも嫌だと思い、やむなく出席しました。石川支部長は予想外にも機嫌が良く、二次会にカラオケに行く人員を募りました。私はそそくさと店を出ました。

駅までの道を歩いていると、香織さんが追いかけてきました。

「大谷さん、ありがとうございます」と香織さんは言いました。「ずっとお礼を言わないとと思っていて、言えなくて」

「お礼を言われるようなことはしてませんよ」

「いいえ、わかっています。大谷さんが事務総局に連絡をしてくれたこと。私なんかが訴えたとしても、取り合ってもらえなかったと思います」

香織さんがまた隣の駅まで歩こうと言うので、一緒に並んで歩きました。隣の駅に近付くにつれ、香織さんがぴったりと私に身を寄せてきました。コーヒーを飲もうということになりましたが、例の洋菓子店は閉まっていました。人通りの少ないアーケード街を歩き、開いている店を探しましたが、見つかりませんでした。

たまたま路地に入り込んだ時、香織さんが立ち止まり、私に強く抱き着いてきました。私はどぎまぎとしました。

「私、大谷さんのことが好きです」香織さんが言いました。「私のこと、抱いてくれませんか」

「いいえ、それはよくないことです」私は即座に言いました。

私は人の目が気になって仕方がなかったのです。送別会や二次会に参加しなかった支部の職員が通りかかる可能性もありますし、私のことを裁判官であると知っている町民もいるでしょう。

「もう少し、こうさせてください」と香織さんは言いました。

ぼんやりとした街灯が私たちを照らしていました。香織さんは私の胸に顔を埋め、そのしなやかな髪が私の口元に触れていました。コート越しとはいえ、香織さんの柔らかな肌の感触が全身に伝わり、私は硬く反応してしまいました。抱擁の時間が長引くにつれ、不安感と同時に、若い女性と触れ合う悦びが心の底から沸き起こってきました。永遠にこうしていたい、可能であれば私も香織さんの背に両腕を回して、強く抱き締めたい、キスをしたい。私も、「好きだ」と告白したい。感情が狂おしいほどに高まりました。

その時、大きな笑い声を立てて数人の酔客がアーケード街を通り過ぎました。

「もう帰りましょう」私は反射的に言いました。

日々性的な妄想を抱く相手から好意を告げられ、妄想が現実のものとなりかけたにもかかわらず、私はそれを拒否したのです。それは、不倫が良くないという倫理観からではなく、ひとえに、他人の目が気になるという理由からでした。いや、もしかしたら、自分には交渉が満足にできないのではないかといういつもの不安も根底にあったかも知れません。

私はその後数ケ月、香織さんとの抱擁の感触を思い出して一人で行為にふけりました。現実には香織さんとの間で何も進展はなく、半年後の春に私も異動になりました。数年後、香織さんが同僚の書記官と結婚したと風の噂に聞きました。


私は再び大阪に戻ることとなりました。岡田とはよくよく縁があったのでしょう、入居した官舎は、岡田夫妻が購入した上本町の高級マンションから歩いて10分のところにありました。

「お帰りなさい」誘われてマンションを訪れた時、再会を祝して岡田は言いました。「そして、昇格おめでとう」

私はそれまで地裁判事でしたが、初めて高裁判事となったのです。収入も上がりました。

世間を騒がせた例の案件があった直後であり、岡田は、弁護士を休業して家にいました。娘のさくらちゃんの面倒を見ながら、主夫業のようなことを行っていました。毎日ジョギングをし、週に3回、ボクシングジムに通っているとのことでした。以前のようなぎらぎらとしたところは影を潜めましたが、思ったほどには落ち込んでいないようでした。ご近所になったことから、お互いの家を夫婦で訪問し合うなど、家族ぐるみの付き合いが始まりました。


幸いなことに、官舎を移るたびに、私は自分の書斎を保持することができていました。息子二人にそれぞれ個室を与えても自分の部屋を維持できているのは喜ばしいことでした。

パソコンの処理速度やインターネット回線の高速化、記憶媒体の性能の進化は目覚ましいものがあり、私は、インターネット上をくまなく検索して、かわいらしい少女の画像を探索し、保存するのが日課になりました。

とりわけ、定期的に点検しましたのは、画像掲示板サイトです。「U15 画像掲示板」、「ジュニアアイドル 画像掲示板」などで検索をかけますと、低年齢の女の子の画像ばかり投稿された掲示板がいくつか出てきました(U15というのは、15歳以下という意味です)。そこには、写真集や雑誌などからスキャナーで読み取った画像や、ネット上の会員制サイトから入手した画像などが、無数に貼り付けられていました。

もちろん、著作者や版元の許諾なく写真をインターネット上に掲載するのは、著作権法違反になります。版元も、それらのサイトに対し警告を発し、削除させたりしていたようですが、次から次に投稿されるので、いたちごっこでした。一方、宣伝になるということで、黙認している版元もあったようです。私自身、それらのサイトで存在を知って気に入った女の子について、写真集やDVDを購入することがあり、宣伝効果としては軽視できませんでした。

私はパソコンにパスワードをかけ、それなしではログインできなくする設定を覚えました。既に押収され、明らかになっていることとは思いますが、私のパソコンには、サイトからダウンロードした少女の画像や動画が、5000枚以上保存されています。小学生、中学生とおおまかにフォルダを分けています。さらに、特に気に入った女の子については、その名前を付した専用のフォルダを用意しています。その日の気分によって、小学生の女の子にするか、中学生にするか、あるいは特定のどの女の子にするかを選択し、画像をディスプレイに呼び出し、一人の行為にふけるのです。

これも既に証明されていることかと思いますが、児童ポルノは1枚もありません。すべて着衣の画像です。児童ポルノの規制が論議される時、よく「ネット上にあふれる児童ポルノ」という言い方がされますが、毎晩のように検索をしていても、一体どこに児童ポルノがあるのか、一度も発見したことはありません。

通常の男性であれば、成人女性のヌード画像や、行為の画像など、卑猥な画像・映像を多く保存しているでしょう。成熟した女らしさを表象する、大きな胸やお尻、肉感的な太ももや二の腕などに、正常な男性は強い欲望を喚起されます。ところが、私は、それらのものに嫌悪感を覚えます。逆に、少女の、肉というものがほとんどついていない華奢な体つき、細い手足などに強い昂奮を覚えます。

私のパソコンには、18歳以上の女性の画像は1枚もありません。裸体もありません。小中学生の、水着や、着衣の画像だけです。

かえって異常です。

日々の検索で発見したお気に入りの子が何人かいました。一人は、小学5年生のMAちゃんです。MAちゃんは、完全な幼女体型なのですが、さらさらの綺麗な髪が腰まであり、目がぱっちりして、写真によってははっとするほどの大人の女の魅力を身につけています。その懸隔が、著しく劣情を刺激します。

一番お気に入りの画像では、かなり小さなサイズのビキニを身につけています。まだ小さな背丈。大きく露出された、肩やおなか、太ももは、白くて、小さくて、華奢で、ぷよぷよしてとてもやわらかそうです。前髪は下げ、後ろの方の髪だけを二か所束ねて、緑色のリボンでツインテールにしています。

本当に、かわいいにもほどがあります。抱き締めて、キスをし、体中を思う存分に撫で回したい……。妄想すると、もう我慢できません。

SMちゃんは、小学4年生です。最初、どうして今までこの子を知らなかったのだろうと思ったくらい、かわいい子です。検索に検索を重ね、画像を200枚近く保存してあります。ビキニをつけている画像が大半です。

髪が長く、ツインテールかポニーテールにしていて、たいてい花柄の髪留めをつけています。かなり痩せていて、余計な肉が一切ついていません。でも、太ももは柔らかな丸みを帯びています。ビキニが小さくて、写真の角度によっては、裸のように見えます。

かわいらしい小学生の姿を思う存分眺めまわし、一人で行為をすることができるなんて、本当に幸せです。

このような話を聞かされてご不快でしょうが、何事も包み隠さず話せということですから、自分自身の懺悔も兼ねて、お話を申し上げています。

我ながら、自分が異常であると考えます。40歳近く年下の少女に激しい欲望を催すだけでも、相当の異常者です。のみならず、その欲情を処理するため、いい年をして、週に3回も4回も一人で行為にふけっているのです。

この年になっても、欲望も、反応の度合いも、一切衰えることがありません。子育ても終わりかけた中年男性に、ここまでの能力が残存しているというのは、神の設計ミスとしか思えません。もう、一切必要がないのですから。


児童ポルノ規制法が施行された直後、ローティーンのモデルを起用したグラビア雑誌は、一斉にコンビニ等から姿を消しました。それらは裸体が掲載されていたわけではなく(かつては掲載されていたこともありましたが)、水着を含め、露出が多いとはいえ着衣の画像を掲載したものでしたから、違法ではないと思われるのですが、法の施行に合わせ出版社が自制したのでしょう。

ところが、警官がいなくなるとまた盛り場に集まって来る不良少年のように、しばらくするとまたこれら雑誌は少しずつ店頭に舞い戻ってきました。低年齢の少女を起用した映像作品も広く出回るようになりました。

映像作品に関しましては、法施行前よりもかえって過激になったと思われる作品も見られるようになりました。小学生の少女に、紐のような細い水着を着せて、ほぼ全裸のように見える作品や、成人向け映像作品に見まごうばかりのものも出てきました。私はあまり過激なものには欲望が減衰してしまうので、それらを入手してはいません。むしろそれら過激な作品が少女たちに群がる変質者に対する風当たりを強め、かわいらしい少女たちを掲載した作品の供給が絶たれてしまう結果となることを恐れました。

こちらについても既に押収されていることとは思いますが、私の書斎にある書き物机の、一番下の、一番容量のある引き出しには、小中学生の女の子のグラビア誌やDVDがぎっしりと詰まっています。小学生の女の子だけをモデルにしたグラビア誌「s」、中学生の女の子だけをモデルにしたグラビア誌「c」や、小中学生だけを集めた「m」、その他、U15、ローティーンの女の子だけを掲載した雑誌と、付録のDVD、または単体で売られている小中学生の女の子のDVDなどで溢れています。

書き物机の引き出しには、鍵がかけられるようになっており、昼間、仕事に行っている時などは、当然、施錠をしていました。時々、「施錠を忘れたのではないか?」と気になることがありました。昼間、気が気ではありません。何かの拍子に、家族が引き出しをあけてしまった時には、大変なことになります。

私は、普段は厳格な夫・父親として、家族に接しています。お堅い職業に就いており、近所の人たちからも、至極真っ当な、常識派の人間として見られています。その夫・父親が、小中学生のグラビア誌やDVDを大量に隠し持っていることを知られれば、すべての権威は地に堕ちてしまいます。

私は何よりもそれを恐れていました。幸い、実際に施錠を忘れたことはありません。

もう一つ心配事がありました。万が一、私が突然死したらどうするかということです。私ももう50歳で、いつ、脳梗塞や心不全を発症してもおかしくはありません。私の死後、家族が遺品を整理するでしょう。鍵のかかっていた引き出しも、何らかの方法であけることになるでしょう。引き出しの中から、大量の小中学生のグラビア誌が発見されます。私が変態欲望者であったことが、白日のもとにさらされるのです。

それを思うと、死ぬに死ねないと思いました。これらをすべて処分するまでは、絶対に死ぬわけにはいかない。といっても、お気に入りの雑誌や映像ばかりですから、とても処分することができないのでした。

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