拝啓
拝啓
エレオノーラへ。
お前が家を発ってから、半年近い時が過ぎた。
不都合していないだろうか、ルートラ公爵家にご迷惑をおかけしていないだろうか。
父はいつも不安に思っている。
困ったことがあれば遠慮せず相談するように。
定期的にペートルス卿とお会いして、お前の命を狙った不届き者を探っているが、まだ手がかりは掴めない。
怖い思いをさせてしまうこと、申し訳なく思う。
私の誇りにかけ、必ずお前の命を脅かす輩は捕まえてみせるゆえ、もうしばらく辛抱してほしい。
そろそろ、そちらの生活にも慣れてきたころだろうか。
呪いの調子が悪化してはいないだろうか。
気が向いたらでいいから、近況を伝えてほしい。
エレオノーラが好きな作家の本を、前に届けると言って届けていなかったな。
もう読んでいるかもしれないが送っておこう。
まだまだ書き連ねたいことはあるが、ここらへんで筆を置くことにしよう。
季節の変わり目は体調を崩しやすい。
健康に気をつけながら、日々を過ごしていくように。
敬具
イアリズ伯爵 アスドルバル・ベント・アイラリティル
イアリズ伯爵令嬢 エレオノーラ・アイラリティル 様
◇◇◇◇
拝啓
枯葉舞い散る季節となりました。
晩秋の候、お父様におかれましては
ますますご清祥のことと心よりお喜び申し上げます。
長らく近況をお伝えしなかったこと
お詫び申し上げます。
あまりに此方での暮らしが充実していたために
お手紙を差し上げることを失念しておりました。
このたびは書籍をお送りいただき誠にありがとうございました。
日毎に寒気加わる時節
静かな夜に読み耽りたいと思います。
私の近況に関しまして
公爵家の方々には大変よくしていただいております。
呪いも抑えることができ
私の日々は見違えるように鮮やかに彩られました。
最近はマナー講習を受けています。
ペートルス様のご厚意によって
私の望みは不自由なく叶えられております。
ご心配には及びません。
最近は毎朝走り込みを行い体力をつけている日々。
小さいころ庭園で駆けていた日々を想起します。
お父様も、私とお母様と一緒にかけっこをしていましたね。
呪いは悪化するどころか
制御することもできるようになりそうです。
心なしか体調もよくなっており
来たる冬の寒気も退けられるでしょう。
これから冷え込む日も多くなりますので
風邪など召されぬようご自愛くださいませ。
お父様からのお手紙をいただきとても嬉しく思います。
また年が明けたらお手紙を送らせていただきます。
まずは書中にてお礼申し上げます。
敬具
エレオノーラ・アイラリティル
イアリズ伯爵 アスドルバル・ベント・アイラリティル 様