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呪われ姫の絶唱  作者: 朝露ココア
第12章 呪われ公の絶息
212/216

終わり、始まる

卒業パーティーで歌唱を任されたエレオノーラ。

彼女はエンカルナとともに舞台に上がり、全身全霊で歌を贈った。


卒業生へのはなむけに。

どうかこの日が一生の思い出になりますように。

切なる願いをこめて歌いきった。



そして大仕事を終えて、彼女は外へ飛び出した。

まだ少し風が冷たい季節。

この薄手のドレスでは少し肌寒い。


「ふぃー……マジで疲れた。でも楽しかったなぁ……」


自分の歌で喜んでくれる人がいる。

その事実が何よりも嬉しいのだ。

今の自分ならば……帝国を救った歌声を、誇らしく披露できる。


「あ、いた」


パーティーを抜け出してきたことには理由がある。

一足先に外に出て行った彼を探すためだ。


「ペートルス」


「おや……エレオノーラ。もうパーティーはいいのかい?」


「話したい人とは全員話せたから。ペートルスは、もう学園に思い残すことはない?」


しばし瞑目して考え込むペートルス。

自分は学園でやり残したことはないだろうか。

最後に会っておきたい人、言っておきたいこと。


「……いや。卒業式に相応しい日にできたと思うよ。思い残すことはないかな」


皆は快くペートルスを受け入れてくれた。

あれだけの大騒動を起こして、多くの人に迷惑をかけたにもかかわらず。


今、自分はたくさんの人と縁をつないでいる。

その自覚が持てただけでも、ペートルスにとっては充分だった。


「そっか。じゃ、これで晴れてニルフック学園卒業だね」


「ああ。君も二年生になるね。きっとクラスNにも後輩が入ってくるだろうから、先輩らしく優しくしてあげてほしい」


「せ、先輩らしく……ね。わたしにそんな立派な振る舞いはできねえなぁ……」


「ははっ。礼儀正しく在る必要はない。君の自然な優しさ、かっこよさを見せてあげればいいのさ」


自分らしく、ありのままに。

ペートルスが憧れた生き方を体現するエレオノーラ。

はたして自分は今の生き方を維持できるだろうか……と彼女は少し考えた。

しかし生き方が変わったとしても、自分に正直に生きる本質は変わらないのだろう。


「あ、そうそう。まだ言ってないことがあったんだ」


一番大事な言葉。

ペートルスにまだ伝えていなかった。



「――卒業おめでとうございます、ペートルス様」


「うん……ありがとう、ノーラ」


これで『ノーラ』と『ペートルス様』の物語は終わり。

これからはまた新しい日常が紡がれる。

もっと深く、刺激的な日々へ。


過去を忘れるのではない。

過去の己に、今の己を重ねた上で『エレオノーラ』と『ペートルス』の物語を始めよう。


「僕も君にお願いしようと思っていたことがあったんだ。聞いてくれるかい?」


「もちろん」


ペートルスは懐から取り出した黄金の布を、そっとエレオノーラに手渡す。


Shall(私と) We(踊り) Dance(ませんか)?」


Mypleasure(よろこんで)!」


手を取って足を運ぶ。

踊りはそんなに得意じゃないけれど、それでも。

きっと人生最高の舞踏になる。


ペートルスにエスコートされて自然と足が動く。


輝く星空の下、情熱のワルツが刻まれる。

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