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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
12章 きらめく、大切な思い出
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激アツ、愛の試練はケチャップで!

 大正メイド2人に連れられ、中央のテーブルに着く。


 教室にはテーブルが6つほど。それぞれに椅子が4脚ずつセットになっていた。

 その全てにレースの付いたクロスが敷かれ、椅子の背もたれにもピンクや緑の布が被せられていた。

 人の入りもそこそこで、俺たちを含め3テーブル分は埋まっていた。


 残りの客もデート券を持つ客に興味があるらしく、好奇の視線を感じる。

 ザラメは気に留めていない。全く、アイツのお花畑ブレインが時々羨ましいぜ。


 椅子に腰かけると、羽仁と三木がラミネートされたメニューを手渡してきた。


「デートの試練。それは、愛のこもったメッセージ」

「は?」

「ザラっち達には、お互いのオムライスに愛を込めたメッセージを描いていただきます!! オムライスの追加注文も、2皿まで可!」


 すると準備していたのか。

 すかさず別の生徒が、お盆を俺とザラメそれぞれの前に置いた。

 お盆の上には、オムライスとケチャップの容器。


「愛がこもっていれば、オムライス代はタダとなります」

「なんと! 面白そうですっ」


 俺の横から、お盆を持ってきた生徒が告げる。


「こもっていなければ、オムライス分の代金は支払っていただきます」

「はぁ?!」


 思わぬペナルティに裏返った声が飛び出す。


「冗談じゃねぇ、こんなところに居られるか! 俺は帰る!!」


 勢いよく引いた椅子が倒れるが、お構いなしだ。

 足早に扉へ向かった俺だが……。


「お客様。棄権は厳禁」

「お戻りくださいな!」


 扉を塞がれたと思えば、背後を取るは男子生徒。


「何だよ、何だってんだよぉ?!」


 俺よりも図体のデカいヤツらに腕を掴まれ、椅子に座り直されちまった。


「郡さん、往生際が悪いですよ」


 言いながら、ザラメはもう描き始めている。

 ボトルの口を逆さまに、鼻歌を歌いながらケチャップを垂らしていた。


 ご機嫌なザラメと反対に、俺は不機嫌そのものだった。

 左肘をつき、右指でテーブルを小突く。タダより怖いものは無いってか。


「お客様。メッセージを」

「郡さん、店員さんを困らせちゃメッですよ」


 しゃーない。適当に描いて出るとしよう。

 多少出費がかさむが、最悪条件をクリアできなくても良いだろ。

 ケチャップのボトルを手に取り、パッと思いついたハートのマークを描く。

 ボトルをお盆の上に置き、キャップを閉じた俺だったが。


「おやおや。貴方の実力はそんなものですか?」

「この出来じゃ、ザラっちの横に並べませんよ?」


 このメイドども、煽りよるんだが。

 するとザラメ、2人へと穏やかに諭しつつ……憐れむような目線を俺に向けてきやがった。


「しょうがないです。この試練で分かるように、郡さんはザラメに跪く運命なのですから」


 おっとぉ? なんつったよザラメ。


「俺が跪く? お前に??」


 ザラメよ。世の中には言って良いことと悪いことがある。


「……オムライス、追加で」

「えっ、は、はい! ただいま!」


 無知なお前に教えてやろう、跪くのはどっちかをなぁ!!


「オムライス、お待たせしました」


 置かれた皿を前に、目を閉じる。


 瞑想にも近い状態で、雑念を追い払う。

 周りの喧噪が遠ざかり、意識が四肢から身体の中心へと集まってくる。

 そう。まるで水底へと沈むように、眠っていた精神の奥地へと潜っていく。


 ——そうして、思い浮かべるはザラメの姿。

 何にでも首を突っ込みやがる楽し気な顔が、ぷりぷりと怒る顔が、騒がしく泣きわめく顔が、紅葉みたく鮮やかに笑う顔が……生きていないのに、誰よりも生き生きとした表情がありありと浮かんだ。


「これだ……!」


 黄色いキャンパスに目を見開き、ケチャップのボトルを手に取る。

 ただならぬ空気を感じたのか、客は団らんを中断して息を呑む。


 静寂に包まれた教室。ケチャップの蓋を開く音は、さながらししおどし。

 ボトルを逆さまにすれば、あとはイメージを形にするだけだ。

 重力に従い下りてくるケチャップに、俺の魂を乗せて。


「凄い。とてつもないオーラを感じる」

「郡さん、一体何を描こうと……!!」

「これは力作の予感ってことね!」


 外野は各々、顔の前に手をかざして衝撃に備えていた。


 キャンパスに落ちたケチャップが、思いを形にしていく。

 郡 遠弥を舐めるなよ?

 俺を本気にしたこと、後悔させてやる!



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