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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
11章 ときめく、おまじないと文化祭!
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召喚、“周回”錯誤の迷える空間

 人さし指を上下し爪でテーブルを打ち鳴らす音は、自分でも忙しないと思う。

 脚が小刻みに揺れるのは、不満が絶えず募っているから。

 そして不満は、カタコトな音声によってまたしても積み上がる。


 ザンネン! 

 セイカイハ、サッソウトアラワレルハクバノオウジサマ!!


「分かるかんなもん!!」


 激情のまま、拳でテーブルを叩く俺。


 椅子の背もたれに据えられた照明が点滅を繰り返すのも、喧しいと感じてしまう。


 意気揚々とクイズに乗った俺だが、結果は連続不正解。

 早々に一攫千金のチャンス――“ヒミツのお宝”なる推定埋蔵金を逃し、ただの消化試合を強いられていた。


「大体何だよ!! さっきから変な問題ばっかり出しやがって!」


 ザラメのスリーサイズ

 佐藤塚高校に眠る陰謀

 筋肉標本の十八番の筋トレメニュー

 ザラメお気に入りの化粧品メーカー

 生徒会長と書記の初めてのデートスポット


 誰が分かるんだよ!!

 5つ目に至っては知りたくもねぇわ!!


 挙句、“ザラメの好きな人のタイプは?”と。


 このように、内輪ネタかつ高難易度の問題で攻めてきやがったのだ。星1つでただ一言“クソゲー”とレビューしてやりたい。無限に怒りが込み上げてくる仕様だ。

 さらに、一度座れば最後。終わるまで椅子が動かないようになっているようだ。

 身体の正面がテーブルとほぼ接している状態で座らせられているため、椅子を引けず立ち上がることができないのだ。


 ミドウはと言うと、


「ふせーかいの貴方には、“乙女心はこれでバッチリ! 人のキモチドリル”をプレゼント♪」

「いらん」


 ご機嫌な笑顔で、ドピンクのドリルを手渡してくる始末。

 すかさず俺は、手を前後にして追っ払う。デウスにでもあげてやれ、喜ぶぞ。


「はぁ……」


 額を手に押し当て、頭の重みを感じる。

 怒る気力さえ無い。

 げんなりと次の問題を待っていた、その時だ。


 ココデ、サプライズモンダイ! 

 イマ、アナタガイチバンヒツヨウトシテイルヒトにアエルチャンス!! クイズモラクチンにナッチャウカモ?!


 ……なるほど、クイズの出題範囲が身の回りのことである以上、近しいヤツに聞き出せればカンニング仕放題ってか。


「会いたい人……思い人のことを強く願って、大きな声で名前を呼ぶの!」


 燥いだ様子でミドウが俺の周りを舞っていた。

 肘をついて、俺は思考を巡らせる。


 ……このクイズ、実は半分ぐらいザラメに関する出題なんだよなぁ。

 佐藤とミドウが作った罠の1つである以上、問題のテーマが偏っているようだ。


 となると、ここで呼ぶべきはザラメ…………いや、待て。




 もっと必要な相手が、今の俺には――。


 ピロンっ、と軽やかな電子音が空気を震わせる。

 考える時間は終わりのようだ。


「さぁ郡さん! “会いたい人は〇〇!”って、声高らかにどーぞ!!」


 俺が今求めるのはただ1人。

 クイズのヒントを聞くための相手じゃねぇ。


 罠の数々を仕掛け、そもそも俺たちがここに居る原因――。


「俺は今すぐ、佐藤に会いたい!!」


 ミドウの顔が輝いたように見えたのも束の間。

 眩い光が俺を包んだかと思えば、教室が視界から消えた。


 次の瞬間、俺の目に広がったのは見知らぬ空間。

 その空中に飛ばされた俺は、


「あっだぁ?!」


 そのまま石畳に激突するのだった。




 ――――


「ってぇ……ここ、どこだよ」


 そこは、学校からかけ離れた場所だった。

 壁や床は長方形の石が整然と敷き詰められたもので、現代には似つかわしくない……歴史的な建造物と言われれば即座に納得してしまうだろう。


 喧騒に満ちた学校とは違い、物音1つ聞こえない。

 拍動が速まっているのが、嫌というほど分かる。


 風の通りは感じない。土や石の匂いが籠っているのも、空気の流れが無い証拠だ。


 “部屋”と言うより“通路”の方が合っているか。

 無風状態のこの場所は、秋の肌寒さと縁遠い。むしろ空気はあたたかく、人肌によく馴染む。

 ……しかしどうも落ち着かない。

 人の体温が充満しているみたいで、不気味に思えたのだ。

 本能に急き立てられるように、全身に薄っすらと緊張の膜が張る。


 視界は薄暗く、足元は見えない。

 靴の先で床を擦り、地に足がついているのを確かめてほうと息を吐いた。

 明かりは、壁に据えられているランプだけ。温かく火を灯すそれらは、これまた現代からは想像がつかない。歴史の教科書で見た、近代の代物だ。


「ん、何だこれ。壁画か……?」


 明かりを頼りに、壁に手を付き目を凝らす。

 壁に絵なんて、古代の文明じゃ無いってのに。呆れながらもつい魅入ってしまうのは、時代錯誤なこの場所にあてられてしまったからか。


 白い線で描かれていたのは、“人”の絵だった。

 それも1人じゃない、複数人描かれていて……どの人間にも、額にお札がある。


「これって、キョンシー……」


 右に視線を移すと、その続きだろうか。

 キョンシーたちが土に潜っている絵が見える。

 それだけでも異様だってのに……さらに目を疑うものが、この壁画にはあった。


 “キョンシー”たちを踏み台に立っている“女”。

 頭上の“神”を打倒せんと、睨めつける“女”。


 胸の辺りまで髪を下ろして漢服を纏ったそいつは。

 額にお札を貼り、バツ印のヘアピンが身につける壁画のそいつは。


 既視感に身体が固まる。

 頭の中で、アイツの顔しか浮かばない。




 だってこの女、ザラメそっくりで――――






「こお、り……? どうしてここに……」


 石畳を踏み鳴らす音にも、気づかなかった。


 我に返り、ようやく振り返る。

 俺の意識を呼び戻した響きは、聞き馴染みのある声は、佐藤のものだった。

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