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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
8章 密着、ザラメちゃん24時!
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延長、ザラメ大調査! 〜ラウンド2〜

 思わず叫んだ俺と、ザラメの目がバッチリ合う。


「貴方は……」


 先に口を開いたのは、ザラメだった。

 反射的にフードで目元を隠す俺を、ザラメはしげしげと見つめて言った。


「ファンの方ですよね!」

「はぁっ?! 何言って……」


 と否定しかけて留まる。

 もし俺がザラメをつけてきたって知られたら、芋づる式に俺の企みがバレかねない。

 そうなりゃ、ギャンブルに励むことも叶わず、夢にまで見た一攫千金への道が閉ざされちまう。


 ここはひとまず、ファンを装ってゴリ押そう。


「イェスイェスッ、チミノファンナンダッ」


 裏声を駆使し、それっぽいことを口走る。

 …………何やってんだろ、俺。

 ザラメのファンとか、口が裂けても言いたくなかったのに。黒歴史確定だ。


「やっぱり……! とても嬉しいですっ」


 騙されているとも知らず燥ぐザラメは、本当に嬉しそうだった。ザラメの顔の周りに星が浮かび、暗がりの中キラキラ瞬いている。

 眩しくて気圧されるが、負けじと話を進める。


「チミニアウタメナラ、タトエヒノナカヤマノナカダゾッ」

「そうだったんですね、そんなにも熱心に応援してくださるなんて……!」


 チョロすぎん? こいつ大丈夫か?

 だが、これは密着の時通り。

 あとは適当に褒めそやしつつ、話の主導権を握って……。


「ちなみに……ザラメのどこが好きなんですか?」


 厚かましいなお前ぇ!?

 ねだるような上目遣いをしつつ、ザラメは身体をモジモジさせていた。腰のあたりで指先を遊ばせていて、狙ってないんだろうが色気を感じる。

 多分本当のファンなら卒倒していただろうな。


「ソレハ……エト」


 考えろ郡 遠弥。

 ザラメとの日々を思い出せ。

 使える言葉を、良い感じの台詞を絞り出せ……!


「アカルイエガオニ、ヤサシイヒトミ……トカ?」

「えっ、やだ嬉しいですぅ……」


 恍惚とした顔のザラメ。完全に上機嫌だ。

 よし、もう一押ししとくか。


「ソバニイルトタノシクテ、アッタカクナルンダ。チミガイナイト、イキテイケナイネッ!」

「そんな……ザラメ冥利に尽きる言葉ですぅ! こんなにもザラメのことが大好きなんて……!」


 ザラメは頬に手を当て、身体をくねらせまくっている。

 かつてないほど陶酔してやがる。前後左右に、上下もちゃんと見えてねぇ。

 よしよし、ここらでそそくさと逃げれば……。


 呼吸を整え、あくまで平常を装い。

 対象ザラメから目を離さず、恐る恐る後ずさり。

 ゴクリと唾を飲み、それを合図にして足に力を込める。

 そして回れ右を決めたようとした、まさにその時だった。


「っ?!」


 冷たい指が手に絡みついてきた。そのまま両手で包みこみ、胸の高さまで持ってきて一言――。


「感謝の印に、サインしちゃいます!!」

「…………Huh?」


 パードゥン??


「ザラメからのプレゼントです♪」


 声を弾ませ、鞄からオレンジのペンを取り出す浮かれアイドル。


「あれ、ノートも持ってきたはずなのに……」


 鞄を漁るも、お目当ての紙が無いらしい。

 ホッチキスか何かで留められた冊子がちらっと見えたが、こっちは使わねぇのか?

 そんなことを思っていると、


「それならしょうがないです……マスクに書いてあげますね!」

「ナンデソウナルノ?!」


 狼狽える俺に、ザラメはズイッと急接近!


「では、マスクを外していただけますか?」

「ソソッ、ソレハデキナイカナ~ッ?!」


 全力で首を横に振る。マスク取ったらいよいよバレるんだってば!!


「分かりました。だったら、直接書きます!」

「マッ!?」


 間髪入れず、マスクにペン先を向けるアイドルザラメ。

 お前ファンの気持ち考えろよ! 俺ファンじゃねぇけど!!

 しかし抵抗する間もなく、マスク越しにペンの走る感触が……


「アヒャッ、ヒャメテェッ!」


 くすぐってぇな?! ヘンな声出しちゃったじゃねぇか!

 だが虚しいかな、ザラメはお構いなし。なんなら、褒められたのが相当嬉しいのか、熱烈ファンサに無我夢中。俺の声は届いていない。

 くすぐったさで顔をぷるぷる震わせる俺に、


「動かないでくださいっ」

「アゴッ?!」


 顎をガッチリ左手でホールドする始末。

 加減を覚えろや馬鹿力! 2週間前から進歩してねぇ!!

 つーか第一ファンにやることじゃねぇよ、相手が俺で良かったな!?


「イダダダダダダダダ!!!!」


 いや俺でもヨクネーヨ!!

 ザラメ密着を決めたあの日。散財を詰問された時のことが走馬灯の如く蘇る。


 そして痛感する。


 ……多分このザラメ。

 怪しいヤツに騙されてついて行っても、なんやかんや撃退できそうだ。野蛮なキョンシーめ。


 嫌と言うほど分かった上で、俺は願わずにいられない。

 イタイデス、解放チテクダサイ……。




 ーーーー

 ザラメメモ


 ザラメには気をつけろ。マジで。


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