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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
8章 密着、ザラメちゃん24時!
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延長、ザラメ大調査! 〜ラウンド1〜

 今日で調査を始めて2週間になる。ザラメの仕事量は、1日の半分に差し掛かっていた。


 この日も19時にカフェを閉め、片付けに移る。

 食器を洗っていると、ザラメが俺の傍に歩み寄ってきた。


「郡さん、あとはお願いできますか?」


 申し訳なさそうに手を合わせ、ザラメがそんなことを言ってきたのだ。


「なんだよ、またどっかで仕事か?」

「あれっ。郡さん、どうしてそれを?」

「あ、いや。店の人からたまたま聞いて」


 慌てて弁明すると、ザラメはくるっと踵を返す。

 腰に手を当て、口をへの字に曲げていた。


「郡さんがあんまりお金を使うので、最近は働き詰めなんですっ」


 ザラメは人差し指を立て、俺の顔に近づけてくる。


 俺が原因だったのかよ。


「体力はいけんのか? お前、すぐバテんだろ」

「最近は結構もつので、多分大丈夫です」


 多分て。随分と曖昧な。


「働いて色んな人と話せるのは楽しいので、全然辛くないですよ。むしろ充実してるぐらいです! でも、だからと言って散財はメッですよっ。元を辿れば郡さんが悪いんですし」


 そう言われると、何も返せねぇ。


「ザラメ、お出かけ……?」

「ちょっとお仕事がありまして」


 モップ掛けに勤しんでいたコスズが、手を止めて不安げに呟く。


「不審者……心配……」


 ああ、この間女子高生と話していたヤツか。


「大丈夫ですよ! ザラメは強いキョンシーですのでっ」


 ザラメは答えながら、安心させるようにコスズの頭を優しく撫でる。

 その自信はどっから湧いてくるんだ。まぁこいつの炎なら、大概のヤツはイチコロだろうが。


「もう時間なので、行ってきますね!」


 鞄を担いで、ザラメは足早に出ていった。

 チリンチリンと、ベルが鳴り終わるのを聞き届け。


 ――さっ、尾行すっか!


 ザラメのことを調べ尽くすのが目的だ。それは夜だって例外じゃない。

 昼間とは違う情報や、とびっきりの弱みも掴めるかもしれねぇ。

 こんなの、いくっきゃねぇよなぁ!!


 ……仮に。ザラメが怪しい店に出稼ぎに行ってたとしても、ネタとして重宝してやる。

 あくまで、俺の目的のために行くんだからな。


 俺はバックヤードから上着を取り、コスズに悟られないように丸めて移動する。

 しかしコスズ。目敏く気づいて聞いてくる。


「郡……どこ行くの……?」

「ちょっと風浴びてくるわ」


 答える俺に、コスズは控えめに首を傾げた。


「……ザラメ、心配?」

「な訳あるか。デウスがそろそろ帰ってくるだろ? 晩飯はそっちで食っといてくれ」


 素直に頷くコスズを置いて、俺は夜の町に繰り出した。




 町中の街灯が、一斉に点く頃合い。

 晩夏と言えど、日は落ちている。物と人が、薄暗いフィルターにかかったように見える。


 歩を進めるにつれ、人通りが減っていく。

 学生の下校時間は過ぎているわけだし、早い店だともう閉まってるしな。


 ザラメはいそいそと進む。

 薄暗いのも相まって、他所見をしたら見失いそうだ。

 電柱に隠れ、道端の植木になりすましつつ歩いているうちに、町を外れていた。


「ザラメのヤツ、どこまで進む気だ‥…?」


 山道をずんずん登るザラメ。

 野鳥の鳴き声が響く中、スマホのマップ機能を頼りに歩いている。

 この先には、山頂の公園しかなかったはずだが、一体何をしに行く気だ?


 枯れ葉を踏まぬよう、暗がりに目を凝らしながら進んでいると、前方の足音が止まった。


「ここですね。ほわぁっ……!」


 ほわああああああああああああっ?!?!


 頂上の手前で、ザラメが目を輝かせたのは、お城のように煌びやかで……ザラメには早すぎるアダルトな建物だった。

 暗闇に埋もれ大まかな形しか捉えられないが、目を凝らして造形を観察する。

 3角錐の塔が6つほど、大小様々に上へと連なり。

 塔のてっぺんで、旗が風にはためき。

 城の主を守り抜くために、塀は頑強に見える。

 ファンタジーに出てきそうなメルヘンな外装でありながらも、下からは照明が四方に動いているようで、ドピンク色に光っていた。

 平穏な丘の上にこんな劇物無かったはずだが、今はどうだって良い。


「すっごく本格的ですぅ……!」

「待て待て待て待てぇええええええええ!!!!」

「ほぇ?」


 やっべ……!

 振り返るザラメと、ばっちり目が合っちまった。




 ーーーー

 ザラメメモ

 9/16 19:00〜 ザラメ外出。

         行き先は不明。要調査。

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― 新着の感想 ―
ザラメさん、なんて所に……!? 確かに、どピンクにライトアップした洋風の館やお城っぽい建物って稀に見かけますけど、大抵(というかほぼ)そういう系の場所ってことが多いですもんね。 そりゃあ郡くんも叫びた…
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