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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
8章 密着、ザラメちゃん24時!
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決行、ザラメ大調査! 〜ラウンド2〜

 逃げ出した後も、バレないように遠くから観察を続けていたが。


こん詰めすぎだろ……」


 スーパーでのバイトが終わった後も、ライブ会場の椅子出し、銭湯と1日中ぶっ通しで動いていた。次の日は、駅の掃除に臨時で入ったくじ引きイベントのスタッフ、さらには地域のゴミ拾い活動にも参加していた。

 それだけでも過労なのに、日を重ねるごとに、仕事の量が増えているのだ。今日で丸1週間密着したことになるが、1日ごとに勤務時間が伸びている。生きていたら過労死するレベルだ。

 前まで、こんなに働いてたっけか。少なくとも、ここまで長い時間家を空けることなんて無かったと思うが。

 それに、地脈を十分吸収できないまま復活したから、バテやすいはずなんだがな……。


 正直、ザラメより俺の方が疲れた。そのせいか反応が鈍って、昨日は一瞬目が合いかけたし。


「だ〜から、今日は上の空ってこと」


 “喫茶こやけ”のバーカウンターから、佐藤が笑いかけてきた。

 放課後の、西陽が差す憩いの時。1番奥の定位置で、ミルクティーのストローを弄りながら続けた。


「そんなにかよ」

「ミルクティーって注文に原液出してくる人が、上の空じゃないって? ミルクも氷も無しとはねぇ」

「うぐ」

「それで、何か分かったのかい?」

「……ああ見えて、ザラメが1人でもやっていけるってことが分かったよ」


 肘をついてくつろぐ佐藤に、それだけ答えた。


 今日のザラメは、ここ“喫茶こやけ”で注文をとっている。

 最近は学生と中年層の客をじわじわと増やしつつあるんだが、ザラメの人当たりの良さが、その年代にクリティカルヒットしたんだろうな。


「郡さん、実家のシチュー2つとこんぺいとうパフェ1つお願いしま〜す!」

「……」

「郡さ〜ん!」

「へぁ?!」


 やべ、聞いてなかった。


「シチュー2つ、こんぺいとうパフェ1つ……」

「お、おう」


 コスズから聞いた注文のメモを残し、料理を用意する。

 コスズはおしぼりを持って、とてとてと客席へ。


「にしても郡。ザラメちゃんを知りたいなら、あの神様に協力を仰いだ方が手っ取り早いんじゃ?」


 問いかける佐藤に、皿やスプーン、ペーパーナプキンをトレイに用意しながら答える。


「あいつは俺らと違って多忙に働いてんだよ。それにデウスのヤツ、ザラメのことになると暴走しかねんだろ。何しでかすか分かったもんじゃねぇ」

「確かにねぇ……」


 作っておいたシチューを器に装いつつ、ザラメの話に耳を傾ける。

 ザラメはお盆を胸の前で抱え、客の女子高生2人と仲良く談笑しているようだ。

 コスズがおしぼりを客に渡す中、


「そう言えば、ここ1週間ぐらい不思議な人を見かけるんですよね」


 軽いノリで切り出す話題に、肩がビクついた。ひょっとしなくてもソイツって……。


「興味深い。どのような人です?」


 黒髪ロングの学生が、テーブルから身を乗り出し尋ねる。

 コスズも興味があるようだ。


「気になる……」

「コスズちゃんも興味津々だねぇ」

「悪い人なら…………冷凍保存」


 物騒! 肝っ玉冷えるわ!!


「それがですね。黒い上着に眼鏡を掛けてて……ザラメが話しかけたら、気まずそうに走って行っちゃったんです」


 やっぱ俺じゃん!!


 動揺が止まらねぇ。そのせいで動きがぎこちなくなっているのか、俺を見た佐藤がニヤニヤと面白がっていやがる。


「なるほどなるほど……」


 もう片方の高校生……茶髪ボブの客が、2回ほど深く頷いたと思ったら……


「それはファンよ、ザラっち。推し活ってことね」

「ファン?! 推し活?!」

「ぶっふぉ!」

「はぁ?!」

「おおー……」


 ミルクティーを吹き出す佐藤。

 俺も叫んじまった。危うくシチューを溢すところだった。

 いや待て、何がどうしてそうなった!?


「あり得る。筋も通っています」


 眼鏡を押し上げる、黒髪学生。

 通ってるか? 筋。


「推測すると。ファンゆえ愛を抑えられず、追っかけ(犯行)に及んだのでしょう」

「おおー……」


 犯行言うな。


「うわぁストーカーじゃ〜ん。一体誰だろうねぇ、郡」


 分かった上で聞いてくる佐藤がうぜぇ。

 からかい甲斐があるとでも言いたげな、穢れまくった笑顔を全力で視界から外す。


「その人は、ザラっちが大大大好きなのよ! 毎日の時間をザラっちに捧げてるってことだもの」

「おおー……」


 んなわけあるかい!

 それと、さっきからコスズは何感心してんだ。


「結論。まるで私たちのようです」

「ザラっち推し古参として、見逃せないわ。ライバルってことね」


 勝手にライバル認定すんなや。

 古参ファンと称する女子高生どもは、オレンジのペンライトを掲げているが、一緒にされたくねぇ。


「お腹痛い……! くふふっ」


 佐藤はずっと笑っていた。白衣の袖で口元を抑え、顔を伏せてぷるぷると肩を震わせている。

 何が面白ぇんだよ。仕事に戻れや。


「そ、そうだったんですね……! だったら、ファンサービスとかした方が良いでしょうか」

「くははっ、そうだねザラメちゃん。サインの練習でもしてみたら?」


 ザラメは納得してんじゃねーよ。

 佐藤はのってんじゃねーよ。

 コスズもコスズで、女子高生からペンライトを2本譲り受け、身体を揺らしながら小さく振っていやがった。


「ザラメ、人気者……」

「そんなぁ、照れちゃいますよぉ」


 まぁ、人気者ってのは一理あるかもしれんが。

 仕事での頼られっぷりを思い出して、そこだけは認めた。




 ーーーー

 ザラメメモ


 火曜、金曜、土曜の9:00〜19:00はカフェ。

 抜け出すのは無理。


 ザラメは割とタフ。そんなはず無いんだが。

 あと、単純。頭ライブ会場。

 こんなんじゃ、怪しいヤツにカモられちまいそうだ。


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― 新着の感想 ―
郡くんイジりが始まったのじゃ!いや悪いのは郡くんじゃが!ザラメは気づいてないようじゃが、完全に佐藤がニヤニヤしてそうじゃ!ザラメは働き者じゃな、家計を支えているのじゃ。それが郡のギャンブルに消えてると…
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