表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
8章 密着、ザラメちゃん24時!
44/65

決行、ザラメ大調査! 〜ラウンド1〜

 さて、やるべきことは決まった。

 だったら善は急げだ。

 待ってろよザラメ! 今すぐ行くからな!!


 肝心のザラメはと言うと、ひとしきり俺を燃やしてから「お仕事に遅れちゃいますぅ!」と言い残して出て行った。


 俺はと言うと黒焦げなう。布団を縛っていた紐も、すっかり焼ききれてしまった。

 おかげで簀巻き状態からは解放されたが、身体がまだ火照っている。


「つーかあいつ、火力おかしすぎんだろ……」


 吐き捨てながら、両腕で身体を起こす。

 合宿の賜物か、怒りを力に替えたのか。

 今日のファイアはマジで死を覚悟した。

 あんなもん、2度も喰らってたまるか。

 上手いこと回避できなきゃ、ここが墓場になっちまう。

 我が身のためにも、一刻も早くザラメを調査しねぇと。


 ちりっちりの焦げっ焦げになった身体のまま、ザラメの行く場所へとレッツゴーだ。

 もちろん、ザラメにはバレないように。

 最低限の道具を持って、目的の場所へ出峰した。






 ――――


 双眼鏡、ヨシ!

 調査用メモ、ヨシ!

 両手に木、ヨシ!


 俺はザラメの歩く並木通りを、気配を殺して尾行していた。コンクリートのタイルの上を、足音抑えて進み行く。

 フード付きの黒いジャンパーを身に纏い、マスクと眼鏡もしっかり装備。

 鞄も靴も普段使わないものだから、見つかっちまうことはない。

 いざとなれば、両手の木で植木に紛れて凌げる。


 すれ違う人たちが、訝しむような眼差しで刺してくるが、些末なことよ。

 足音を潜めつつ、ザラメに近づいていった。




「このスーパーだな」


 アパートから15分ほど歩いたところにある“スーパーこんぶ”で、ザラメは働いている。

 他にも至るところで働いているが、全て正社員としてではなく、パートかバイトでだ。

 本人曰く、色んな仕事をやりたいからだと。元気なキョンシーだ。


 商品の棚と棚の間に身を潜め、双眼鏡越しにザラメを観察する。

 今は品出しと客の対応をしているっぽい。

 手際よくもやしの袋を並べ、綺麗に整えている。ワイシャツに緑のエプロンも様になっていた。

 普段の家事もテキパキやってるからなぁ。料理以外は大概できるんだろう。


「すみません、ハチミツはどこにあります?」


 陳列中、ベビーカーに赤ん坊を乗せた女の人に声をかけられていた。

 ザラメは嫌な顔1つせず、立ち上がりハキハキと答える。


「それでしたら、ここから3つ目の棚を進んだ真ん中辺りですよ!」


 腕を伸ばし、指で棚を指し示すザラメ。

 勿論スマイルも忘れない。


「ありがとね〜」

「いえいえ〜!」


 ベビーカーを押して去りゆく客に、ザラメは頭を下げて見送っていた。ああ見えて、礼儀はあるんだよなぁ。俺には披露してくれねぇけど。

 それに、俺の予想よりちゃんと説明していた。

 いつもだったら、「郡さぁん、分かんないですぅ」とか言ってそうなのに。


「ザラメちゃん、ちょっと良い?」


 声のする方向へ顔を向けると、“店長”の名札をエプロンに留めた中年女性。


「明日、広間でくじ引きイベントがあるじゃない? そのスタッフが1人休んじゃって……ザラメちゃんに手伝ってほしいんだけどいけるかな。追加の手当は出すから」

「ザラメで良ければ!」


 胸に拳を当て、ザラメは快諾した。

 ここに俺がいたら、「郡さんもやりましょう! どうせ暇でしょ?」と、強引に連れ出しているところだが……1人でもモーマンタイらしい。


「さっすがザラメちゃん! 頼りになるわぁ」

「それほどでも~」


 片腕で後頭部をさすりながら、ザラメは照れ笑い。

 嬉しさのあまり、顔が溶けそうになっていた。

 ザラメは頼られるのに弱いっと……これは使えるかもしれねぇな。上手くいけば、会話の主導権を握りやすくなる。


 手早くメモを残す俺。

 この調子で尾行すれば、さらに掴めるだろうな。

 そう意気込む俺だったが……。


「何かお困りですか?」


 いつの間にか、ザラメが目の前に!

 慌ててメモを後ろに隠し、顔を逸らす。

 やべぇ近ぇ近ぇバレるバレるバレる!!


「なっ……!」


 俺はフードの先を摘んで顔に引き寄せ、


「ナ、ナ、ナンデモナイデシュウ~ッ!!」


 ヘリウムガスを心にキメて、そそくさと退却した。




 ーーーー

 ザラメメモ

 毎週水曜10:00〜15:00は“スーパーこんぶ”。

 この時間帯は、近くのパチ屋を避ける。

 急なシフト追加の可能性あり。


 ザラメは頼られるとチョロい。これは使える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この時間は近くのパチ屋を避ける、メモがリアルじゃ!郡君、パチ屋行く気満々じゃ!そしてザラメの意外な一面見て、頼られると弱いとメモっているあたり、わるじゃ!わるがおるぞい!面白かったのじゃ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ