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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
8章 密着、ザラメちゃん24時!
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決心、ザラメの日常を知り尽くせ!

 夏休みが終わり、人々は日常に引き戻される。


 自転車を爆走させるサラリーマン。

 通学路を席巻する、児童たちによる大名行列。

 続々と開店するチェーン店やスーパー。


 太陽の昇りとともに、慌ただしい風景を拝むこととなる。

 紫がかった空の下、町は活動を始めるのだ。少しずつ賑わってゆく。


 夏休みは終わったというのに、気温はまだなだ夏のまま。地球は今も、夏休み。2度寝希望とぶっこいて、布団に潜っていることだろう。


 そして俺も、布団の中に……。


「郡さ〜ん? これはどーいうことでしょうか?」


 そう、布団の中。

 ……正しく言えば、絶賛簀巻きにされている。


 そして目の前には、膝を抱えて屈むザラメ。

 着ているコートの丈が腰下ぐらいしかないから、曲げた膝の隙間から見えそうになる……が、そんなの露ほどどうでも良いです。

 だって見ろよ、俺を見下すザラメの顔を。

 朝の日差しにも負けないぐらいの爽やかな笑みも、どす黒いオーラにかき消えていた。般若も青ざめる形相だ。


 痙攣するみたいに唇が震える。皮膚という皮膚から汗が噴き出し、布団の中が蒸れ放題。

 命の危機を感じる。被食者ってこんな気持ち?


 と、身体をくねらせるしかできない俺を前に、プレデターザラメは1枚の紙をひらひらさせた。


「おまっ、それまさか!?」

「そのまさかです」


 俺の顔に引っ付きそうなほど近くまで、持っていた紙を前に突き出してくる。


 ――それは郡家お馴染み、借金の明細書だった。

 クソッ、見つからないよう隠したってのに……!


「1、10、100……なんと、25万3690円ですねぇ」


 ねっとりと煽るような口調で、総額を読み上げるザラメ。


「まーたギャンブルですかぁ? 懲りないですねぇ」


 当たり前だろ!?

 夏休みも終わった今、平日は()いてんだ。

 今年の夏は色々忙しかったし、取り返さねぇと。


「この不要な経費で、どれだけ家計が逼迫するとお思いで?」

「不要? 間違ってるなザラメ。これは未来への投資……必要経費だ!」


 俺の言葉に、ザラメは笑みを絶やさぬまま。

 コバエを仕留める時と同じ目で、俺を見やる。


「フフフ。郡さんには、キツーいお仕置きが必要みたいですねぇ」

「ふひょ?!」


 俺の頬を片手で挟み、思いっきり押さえこんだ。

 優しく甘い美貌、満点のスマイル。なのに背後から、噴火直前の火山みたいな轟音が聞こえる。

 死期のアラートが脳を劈く。身体が強張り、暑いのに悪寒が止まらねぇ。

 ジタバタと芋虫みたく足掻くも、掴む手の力は緩まない。それどころか、


「ザラメ、今日は調子が良いんですよねぇ」

「ひゃへ……ふぎゅ?!」


 顔をクレーターみたく凹ませやがった!

 ちょ、メキメキ言ってる!! 殺さないで!!

 目尻に涙が溜まる。ここまでの醜態を晒すなんて思わなかった。しかもよりによってザラメに。

 必死に頭を振ろうにも、バカぢからの前では無力だ。


「い、いおいはいひい(命大事に)……!」

「ガンガン行きます♪」


 次の瞬間、ザラメの指先から光が迸った。


「ザラメちゃん☆グレイトファイア!!」

「ひゃあああああああああ!!!!」


 いつもより多めにあづい!!

 火だるまになり、ゴロゴロと寝返りを打って藻掻くが、緑の炎は消えること無く燃え盛る。


 灰と化す意識。白んでゆく景色。

 走馬灯もろとも、地脈の業火に焼かれる俺。


 どうして、こんなことになったのだろう。

 俺の何が駄目だったのか。


 良心をかき集め。反省という名の思考の果てで、ある結論に辿り着く。


 ――俺はなんて情けない…………詰めが甘かったんだ。


 俺がザラメのことを知らねぇから。

 1日のルーティン、よく行く場所に普段使うもの……弱みに、ザラメの目をかいくぐる抜け穴。


 ――つまり、ザラメを知り尽くせば?

 俺はザラメにとっ捕まることも燃やされることも無く、ハッピーライフを満喫できる!!


 よし決めた! 今日からザラメに密着だ!!

 ザラメの日常を追求し、今度こそ出し抜いて……


「その顔、反省が足りませんね! メッです!!」

ぇえええええええええええッ!!!!」


 それ以前に、俺生きてるかな。


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― 新着の感想 ―
借金…ギャンブル…郡らしさのある中に、ザラメへの密着取材が始まろうとしているのじゃろうか?強く生きろよのう、郡!というか普通にギャンブル依存症やばいのじゃ…
はちゃめちゃでてんやわんやなイベントでも、後から振り返れば良い思い出だったなぁと感じる……。この夏合宿は、まさにそんな味わい深さがありましたね〜。 物語の流れはザ・青春という感じなのに、中にはザラメ…
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