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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
4章 あなたと、ぐっど喪ぉにんぐ!!
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退屈、あいつらのいない午後

 ザラメに仕事をクビにされてはや一週間。

 のんべんだらりな日々が続く。

 

 ザラメはあれ以来帰ってこない。

 どうやら、カフェで寝泊まりしているようだ。

 時々こっちに来るコスズ曰く、ザラメはずっとご機嫌斜めらしい。


 静かな空間に、茶を啜る音が響いた。

 身体を起こしてテレビを消し、俺はうんと伸びをした。


「……暇だなぁ」


 半ば無意識に、そう呟く。

 空は曇天。雨は降らないらしいが、分厚い雲は空一面を覆い、太陽の覗く隙間はない。


「はぁ、腹減った……」


 時刻は午後3時。

 ちょうど小腹が減る時間だ。


 キッチンの棚を一通り開けるも、めぼしいものはない。


「しゃーね、買いに行くか」


 どーせ暇だしな。解雇されたからニートだし。

 小遣いはあるわけだし、必要なもの買ったら、パチンコにでも行こう。


 俺はお茶を飲み干し、部屋を後にした。




 行きつけのスーパーに赴いた俺は、駄菓子コーナーをゆっくり歩いていた。


「これでいっか」


 選んだのは、こんぺいとうだった。

 ザラメのお気に入りであるこのこんぺいとう。俺だって、この砂糖の粒が嫌いじゃない。


 あいつら、どうしてるかな。


 ふと、そんなことを考える。

 あいつらのことだから、無秩序に料理を爆発させてるに違いない。

 カフェ諸共爆発してるのかもしれん。


 ……今の俺には関係のないことなのに、気になってしょうがねぇ。


 あの時、ザラメにブチギレられたことをばあちゃんに話すと、「女心が分かってない」と一刀両断されてしまった。

 ……確かに、あいつ。あのメイド服気に入ってたけど。

 だから、いつもだったらぷりぷり怒って終わるところを、クビになんてしたんだ。


 ……俺にどうしろってんだよ。


 レジで会計をする間にも、思考回路は悶々としてて。

 つくづく厄介な女だと、頭を抱えた。


「――あの、お客様」

「っ、あ。はい」


 若い女性店員に呼びかけられ、俺は我に返る。


「こちら福引のチケットでございます。一等は世界一周旅行。ぜひ挑戦してみてくださいね」


 レシートと一緒に、福引のチケットを渡された。

 場所はここを出たところだ。

 帰りにちょっくらやってくか。




 カランカランと、時折鐘の音がする。


「3等! 最新型扇風機!!」


 大声で叫ぶ若い男性。

 木製のガラガラに玉の当たる音。

 ガヤガヤと、客の声。


 会場は、俺の気持ちを慮ることなく賑わっていた。


「2等……駄菓子一年分か」


 あいつが跳んで喜びそうだ。

 ん? 何考えてんの、俺。

 毒されてんの? あいつに。


 ため息が溢れる。顔が、自然と俯く。

 数十人が並ぶ列の最後尾に並んだ俺は、順番がくるのを、黙って待っていた。


 と――。

 受付の女性が、俺に声をかける。


「はーい、次のか……た」


 その女性と……いや。そいつと、目が合う。

 数秒の沈黙の後、


「「げっ」」


 思わず、そんな低い声が漏れた。

 だって。

 視線を上げた先にいたのは、今最も会いたくない裸コート……ザラメだったのだから。

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