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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
2章 知ってる? なんとかは風邪をひかない
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知らない、■のキモチ

 郡さんが、風邪をひきました。


 白い明かりの灯る廊下。

 郡さんの部屋の扉を隔て、ザラメは一人立ち尽くしていました。


 扉の向こうからは、咳き込む声が。

 苦しそうで、辛そうで。


 ザラメも、どうしてか胸が苦しい。

 キュウっと締め付けられるような感じがして、イガイガして、とても嫌です。


 どうしたら、郡さんが元気になるのでしょう。

 どうしたら、このイガイガがおさまるのでしょう。

 ザラメには、分かりません。


 カフェの開店時間も迫っています。


「寝かせろって言われても、心配です……」


 扉の前で右往左往。

 行くあてもないまま、足踏みばかり。

 どうしてでしょう。

 この扉の向こうで、郡さんがいなくなってしまうような、そんな嫌なヨカンがあったんです。


「やっぱり見に行った方が……!」


 そう自分に言い聞かせ、ドアノブに手をかけたその時でした。


「ただいまー……」


 玄関の扉が開く音。

 そしてコスズの声が、廊下に響きました。


 寒空異変を解決して。

 家のないコスズちゃんは、現在ここ……郡さんの家に泊まっています。


 コスズちゃんは最初こそ渋っていたものの、ザラメが営む“喫茶こやけ”で、看板娘no.2として働いてほしいという条件をつけると、シチューへのお礼ということで引き受けてくれました。


 コスズちゃん自身は、ブリキの人形に戻れるし、食事も時々でいいみたいですが、せっかくなら、いっぱい一緒にいた方が楽しいに決まってます。


 今日は買い出しをお願いして、たった今帰ってきたってところです。


 ザラメはコスズちゃんに駆け寄ります。

 そして。


「大変です、コスズちゃん! 郡さんが風邪っていうのになって……!」

「風邪……?」


 そう問い直すコスズちゃんに、一部始終を説明しました。

 ザラメが話し終えると、コスズちゃんは軽く曲げた人差し指を口元に当てて「うーん……」と小さな声を出しました。何やら考えているようです。


「風邪……悪化すると、死ぬ……」


 そう、真面目な口調で言いました。


 ――“死”。


 “死”がなんなのか。

 ザラメには分かりません。

 目覚めたときにはもう死んでいて、死んだときのことは覚えていないから。


 知っているのは、辞書的なイミだけで。


 だから、“死”のキモチを知りません。

 だけど……。


 その言葉に、ザラメの頭に黒いもじゃもじゃが蔓延るような感覚を覚えました。それが、じわじわ食いついていくような心地がして。

 なんだかとっても、キライな感じ。


「郡さん、死んじゃうんですか?!」

「……ザラメ、落ち着いて……」


 コスズちゃんに促されました。

 ザラメより小さいのに、お姉さんみたいに冷静です。


「看病すれば、きっとはやく治る……郡のお世話」

「わ、分かりました! お世話ですね、任せてください!」


 お世話はいつもやってるので、バッチリ大得意です。

 今日はカフェを休みにして、郡さんの看病をしましょう!


 意気込むザラメと裏腹に、指先がどうしてか震えていました。


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― 新着の感想 ―
コスズちゃんは看板娘No.2になったのじゃな!そんなことより大袈裟に言うからザラメちゃんが慌てて大変なことをしないか心配じゃな!
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