空色泥棒ヨルの見た夢
べっこうの月浮かぶ空
ヨルは見る 甘い甘い夢を見る
瞼を閉じれば真っ暗闇
残影に月の面影
あの日遊んだあの子とのあの場所で
懐かしさと 少しの寂しさを
思い出したヨルは空色を盗もうとした
とはいえ月は遥か遠くの
届かぬ先にある
どうしたらいいかな
ヨルはひらめいた
「この空色を描こう」と
ヨルはアトリエから
絵具とキャンパスを取り出して
月明かりのもとで画を描いた
あーでもない
こーでもない
言っているうちに
月が小さくなってしまう
たちまち空色は明るくなった
べっこうの月は有明の月となる
すずめが鳴き カラスは空を泳ぐ
朝が来た
ヨルの描いた 月の画は
太陽に照らされて 輝いた
こんな月の画はあるか
そうだこれは ヨルだけのモノ
ヨルだけが夢の中で描いた
世界にたった一つの空の色
ヨルは空色を盗んだ
人々が寝ている間にこっそりと
陽光と月あかりを
キャンパスの中へと入れ込んで
満足したヨルは
アトリエの一番日の当たる窓のあたりに
描きたての画を置いた
朝と夜
二つを手に入れたヨルは祈りを捧げた
「あの子の呪いが解けますように」
陽光が強くなる
同時にヨルは姿を消した
すべては空色泥棒のヨルの見た夢――――