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ショートショート7月~2回目

鵲橋が架かったら

作者: たかさば
掲載日:2021/07/07

「……会いたかった。」

「ふふ、私も。」


鵲橋のど真ん中で、身を寄せ合い、見つめ合う若者が、二人。


「今年も、君はとても…美しいね。」

「あなたも、ずっと変わらず…とても素敵よ?」


天の川に映る影が、一つになった。


今日は7月7日、七夕。


天の川には、織姫と彦星が出会うための橋がかかっている。

今から、つかの間の逢瀬を、誰にも邪魔される事なく、楽しむために。


「ね、私、あなたと一緒にお祝いをしたいと思って、これを作ってきたの。」

「これは…ケーキ?」


生クリームでデコレーションされた、イチゴがたっぷりのったケーキ。

真ん中には、「お誕生日おめでとう」と書かれたチョコレートのプレートと、一本の、ろうそく。


「今日は君の誕生日だものね、おめでとう。」

「ありがとう、でも…このケーキは、違うの。だって、ろうそくが、一本しかないでしょう?」


織姫は、橋のど真ん中に、敷物を敷いた。

二人はそこに腰を下ろし、ケーキを囲んだ。


「あのね、今日は、私たちの、誕生日なの。人は…一年間が、365日でしょう?」

「…そうか、もう、365年も、僕たちは。」


仕事を放り出して恋にうつつを抜かし、罰をうけた若い二人。


年に一度しか会う事を許されない、悲しい運命。


「これからもずっと……僕たちは、ゆっくり、ゆっくり、共に年を重ねてゆくんだね。」

「そうね、やっと…一歳よ?よちよち歩きを、出来るようになったぐらいかしら?」


ろうそくに火をともし、二人で赤く燃える炎を、見つめる。


「ハッピーバースデー、僕と、織姫。」

「お誕生日、おめでとう、私と、彦星。」


二人で、ろうそくの火を吹き消した。


「うん、美味しい!織姫はケーキ作りも上手なんだね!」

「ふふ、よかった、喜んでもらえて!いっぱい食べてね!」


二人で、ケーキを仲良く食べ始めた。


「おいしくて、フォークが止まらない!もっと食べたいな……!」

「じゃあ、今度の誕生日は、もっと大きなケーキを作るわ?」


二人で、ケーキを完食した。


「ねえ、織姫、僕…気が付いたんだけど。」

「なあに?」


食後のお茶を入れる織姫に、彦星が神妙な顔を向けている。


「たしか……今年は、うるう年だったはず。」

「……大変!!!一日、足りなかったってこと?!」


苦い緑茶を……二人で、飲んでいる。


「……じゃあ、来年もまた、ケーキを作ってくるわ!」

「そうだね!また来年も一緒にお祝いしよう!」


次の年、一回り大きなケーキを作ってきた、織姫。


「今年こそ、ハッピーバースデーだ!」

「ふふ…お誕生日、おめでとう!ビバ!!一歳!!!」


二人で、橋のど真ん中でケーキをつつく。


「ああ、美味しい、本当においしい。この味が次に食べられるのは、365年後、か……。」

「あら、だったら、私、自分の誕生日ケーキを来年は持ってくるわ?一緒にお祝いしてくれる?」


毎年、二人で大きなバースデーケーキをつつくようになった。


「本当においしいね、…そうだ!僕の牛の生クリームを使ったら、もっとおいしくなるかもしれないよ!」

「じゃあ、私はケーキを焼いてフルーツを持ってくるから、ここで一緒に作りましょう!」


毎年、二人で大きなバースデーケーキを橋のど真ん中で作って食べるようになった。


「この日のために、毎日生クリームを試食しているんだ、ほら見てよこのこってりした乳脂肪!!」

「私も毎日おいしいケーキのレシピを探っているのよ、ほら、見て、このキメの細かいスポンジケーキ!」


毎年極上のケーキを食べるために、日々研究に没頭する二人。


「おいしいね、今年はフルーツもたくさん持ってきたよ、一緒に食べよう!」

「おいしい!ふふ、甘くておいしいけど、しょっぱいものも欲しくなっちゃうわね!」


毎年、橋の上でおいしいものをたらふく食べるようになった、二人。


「バーベキューセットを持ってきたよ、霜降りのお肉に自慢のハム、ソーセージ…ユッケもあるよ!」

「おいしい!!!甘いモノとしょっぱいものの交互食べ、止まらなくなるわね!!!」


今年も、橋のど真ん中で、バーベキューセットを広げ、寿司を握り、ケーキを作り、お酒を飲んで……腹いっぱいになる気満々でやってきた、若い二人。


「織姫―!」

「彦星―!」


大荷物を抱えた、体重過多の若者が、どすどすと太鼓橋のど真ん中に駆け寄る。


ど、ばちこーーーーーーーーん!!!


肉と肉がぶつかり合う、ド派手な音が天の川の上に鳴り響いた。


み・・・みし、みしみしっ・・・・・・・!!!!


「「へ?」」


ブォゴキィイイイイイ!!バキッ!!メキッ!!ド、ドドドドドドドド!!!!!


ド派手な音を立てて、鵲橋が崩落した。


ぷっくぷくに肉付いた手を取り合いながら、天の川の下に落ちてゆく若い二人。


―――お前ら!!食い過ぎだ!!!

―――神の分際で食欲にまみれおってー!!!


……年に一度しか会う事を許されなかった、悲劇の恋人たち。


「ねーねー!近所に新しいバイキングのお店できたんだって!!!」

「マジで!!食いに行こ!!!」


人間になってしまった今でも、二人、仲睦まじく。


「やっべ!!マジ箸止まらん!!うーん、おかわりー!!!」

「ねね、この生クリ絶品!!食べてみて!!あと帰りに新作アイスコンビニで買って帰ろーね!!!」


毎日、毎食、おやつの時間に、夜食もきっちりと……仲良く分け合い、おいしいモノをたらふく、食べて、いる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何と言うオチ。 まぁ、食べまくったらそうなりますわ〜。 その日のために、試食……。364日、試食。あかんやつや〜。
[良い点] あああああ落差ぁぁぁーーー [気になる点] てか、織姫と彦星、そんな話でしたね。 [一言] 来年もお楽しみで〜
2021/07/07 20:36 退会済み
管理
[一言] すごく楽しそうで、幸せそうで、ハッピーですね!! <(_ _)>(*^-^*)
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