異世界でも働くのか?
トントン壁から、誰かが叩く音が部屋に響く。
それは次第に、大きく、強く成っていく。
「遥!まーだ寝ていやがるのか?起きろ!朝だぞ!」
(誰だ?オッサンの声で起きたくないな。。。)
「入るぞー、遥!本当に寝ていやがる。はぁ。。。。」
「んんん?誰だ?」
「俺だよ。ホークだ!」
「えっとー、おぉぉ、そうだ、そうだ。そうでした。」
「漸くお目覚めだな。さっさと起きて、支度しろ。出掛けるぞ」
「なっ!外、暗いだと?何時なんだ?今は。。。」
(この国は、早起きで、ラジオ体操でもするのか?)
そう思いながらも、Tシャツに、スラックス姿で部屋を出る。
部屋の真ん中の吊るし鍋から、良い香りがする。嗅いだことのない匂い。
取り敢えず、鍋の近くへと向かい、座布団らしき物の上へ座る。
数分後に、真ん中の部屋から、ホークが布の塊を抱き抱えて持ってきた。
「そのー何だ、お前の格好は、目立つからな。取り敢えず、この中から適当に選んで着てくれよ」
「えっとー、民族衣装?それって?」
「民族衣装?何だそれは?この集落では、伝統的な服装だな。正装と言っても過言ではない」
「それは、大変助かります。着るものなくて困ってましたから。ありがたく頂きます。」
その服は、帯を何枚か横に縫い合わせ、それを肩に掛けて交差する。
ズボンの帯で、その服を絞り止める。
(柔道着か?上着が違うけども)
(寒くないから、大丈夫かぁ)
「ホークさん、これで着方は、合ってるのかな?」
こちらを見ながら、ホークは無言のまま仁王立ち。
「あのー、ホークさん?」
「はぁ。。。ホークさんは、辞めろって、頼むから。なっ?」
立ったまま、項垂れ、頭を悩ませ始めた。
「あっ、すいません。まだ呼び方に慣れて居ないので、気を付けます。ホーク。。。これで着方は合ってますか?」
落ち込んで、座り混んでたホークが、不機嫌そうに顔を上げる。
「。。。。おおおおぉ、やはり、お前、遥には、それが似合うよ。俺の見立て通りだな。嬉しくなるぜ」
俺を見てるはずなのに、何処か違う誰かを見てる感じのホークがそこに居た。
「あのー、ホーク?大丈夫ですか?目が死んでるよ?」
「ん?いや、何でもない。外に水瓶が在るから、顔でも洗って来いよ」
「お、ありがとうございます。サッパリしてきます。」
(何だろうな?変だとは思うけどなぁ)
家から、出た。水瓶は家の横に置いてあり、綺麗な水だった。
(以外と綺麗な水だな?虫が浮いてるとか覚悟してたのに)
(もしかして?飲める。。。。いやいや、生水はね。。。。)
(でも、昨日から何も食べてないからな。。。。)
(取り敢えず、飲んでみてからの。。。)
喉がカラカラだった俺は、欲望に負けて、水を飲むために水瓶を覗き込んだ。
その水面に写し出された俺の顔は。。。。オッサンでは無かった。
(これ。。。。何年前だ?いくつの時の顔立ちだ?)
(若返り?いやいや。。。。混乱してきたぞ)
(通りで、ユーリに君扱いな訳だ)
(二十歳辺りか?これで帰れば元に戻るのか?)
「おーい、顔洗うのに、どれだけ掛けるんだよ?」
あまりの遅さに、家からホークが呼びに来た。
「ホーク、変な事聞くけど。。。。俺は、倒れてた時から、こんな顔か?」
家から歩きながら、変な顔しながら近付いて来た。
「あーはははははははははははっっ、くっくっ、ふふふっ」
「あのーホーク?」
「ひぃーーーっ、朝から辞めろ、近所迷惑だ、くくっくっ」
家の前で、しゃがみ込み、悶えてるホーク。
「いやー、お前、自分の顔も忘れたのか?いくら何でも、それは無いだろ?。。。。ぶっ」
「いや、忘れた訳では。。。。いや、ある意味忘れた?んー悩むな」
「ぷーーーーーっ、だから、やめろくっくっくっ。。。。」
(やばい、ホークが壊れかけてる)
家の前の路上で、転げ回ってる。近所に聞こえないように声を殺してるから、苦しそうだ。
「えっと、ホーク、独りでお楽しみ中悪いけど、もうソロソロ家に入らないか?」
息切れしながら、涙目でこっちを向いた。
「お前が、悪いんだろ。この野郎が。でも、久しぶりに、こんなに笑ったなぁ」
俺に近付き、肩に腕を回してきた。
「やっぱり、お前と居ると楽しいと思ったぜ。ありがとな」
(イケメンが、台無しだな。ホークさん)
そのまま、肩を組ながら、家へと歩き出した。
家に入り中を見た瞬間、鼓膜が震えた。
「ああああーーーーーーーーっ」
「耳元で、叫ぶのは止めてくれませんか?」
俺の側から、ダッシュで鍋に寄るホーク
鍋から、吹き出した出汁が、下のカマドヘ落ち、家中が煙だらけに成っていた。
(換気がね、無いからね。仕方ないよね)
部屋の中央を、ウロウロしながらホークが踊ってる。
(いや、パニックかな?手伝うか?)
俺は、服を片方脱ぎ、鍋つかみの要領で手に巻き、鍋を掴んで外に出た。
家の中は、相変わらず煙だらけ。
取り敢えず、鍋を家の横へ持って行き、倒れないように、地面に窪みを入れ置いた。
様子を見に、家へと戻ると、入り口に誰かが立っていた。
近寄ってみると。こちらへ向いて歩いてきた。
俺は、立ち止まり警戒した。
そこには、煤で黒くなったイケメン。いやホークが啼きそうな顔で歩いてた。
「ホーク。。。。ぶっ。。さっきの仕返しかな?。。。止めてね。。。ぶっ」
(イケメンの燻製。。。。旨すぎだろ、誰が食べる?ぶっ)
「いやー、すまねぇ!朝飯久しぶり作ってよぉ。失敗したぜ」
「久しぶりに?今まで、どこで食べてたの?」
「前に、ちょっと落ち込むことが会って、何もする気が起きなくてな。そこで、マリンに世話して貰ってたんだ」
「ほほーっ、それで、仲が良かったと」
(やりますね、イケメンは)
「物のついでだ、マリンの所でお世話して貰うか」
「えっ?」
(苦手意識が在るのですが。。。。)
「その前にだ、時間が無くなったから行くぞ」
『え?何処にですか?』
(太極拳か!公園で!)
『まぁ、黙って着いて来い』
ホークは、歩き始めた。俺も遅れないように着いて歩いた。
少し歩くと、遠目に大きな野外ライブ場ぽい建物が見えてきた。
(どうやら、目的地は、あそこかな?)
「やっと来たわね。遅いわよ?何してたの?」
待ってたのは、なんとマリンだった。
「悪い。家で、ちょっとした事故が起きてな。申し訳ない」
ホークが、マリンに深々と頭を下げてた。
「事故って、まさか!」
マリンは、誰かを探すように、周りを見渡し始めた。
俺と目が合った瞬間に、マリンの顔は、緊張感から一気に和らいで、その大きな瞳からは、涙が流れ落ちた。
「えええええっ!!」
(いやいやいやいやいや、何事ですか?)
「すまないな、遥。別に悪気が合った訳ではないんだ」
「それは、構いませんけれど。マリンさんには、教えて貰わないと困る事もありますしね」
「しゃーない、落ち着いて、機会が在れば、遥にも話せる様になるさ。それまでは、そっとしてやってくれないか?」
「判りました。」
マリンの落ち着くまで、少しその場で立ち尽くして居た。
(気になるけど、人の事情だからな。。。。)
(マリンさんは、ホークに任せてっと)
(それにしても、この建物、何だろうな?)
(見上げると、半ドーム状の屋根、かと言ってステージが在る訳でもない)
「行くわよ!中野さん!グズグズしない!」
「あぁ、はい、すみません」
(えええええっ!!俺ですか?理不尽な)
三人で、その建物へと歩き始めた。
到着すると、そこは少し高い場所に着き、周りを見渡せた。
「え?こ、これ、墓地ですか?」
「そうよ。」
「そうだ。」
「ここに、眠ってる人達は、この集落、いえ、この世界の英雄なの」
「英雄って。。。。こんなにも?」
(戦争でもあったのか?独立戦争?異民族対決的な?)
「それで持って、集落の皆は、忘れない為に、毎朝ここへお参りをする事に成ってる。遥も、ここに住むのなら、しなきゃぁならない。だから連れてきた」
(永住するなら。。。。ね)
「さぁ!男二人で、目の前に立たれたら邪魔でしょ!さっさと行きなさい!」
(安定の姉御てすね)
「判ってるよ。行くぞ、遥」
「了解」
通路を奥へと歩き始めた。すると、通路から離れ右端へと歩み始めた。
(人によっては、違う場所なんだね。そこは、俺達と同じか)
右端の行き止まりまで来た。しかし、そこには、周りとは違う形。
形処か、ボロボロになってるのが、2つ並んで居た。
「よぉ。元気か。お前らのお陰で、マリンも俺も生きてる。ありがとな」
(生きてる?どう言う意味なんだ?)
「遥も、すまないが、祈ってくれないか?」
「ん。。。はい」
(誰の墓何だろうな。マリンも関係してるぽいし)
「さてと、帰るか!そう言えば、マリン。。。。」
ホークは後ろへ振り向いたが、そこには、マリンは居なかった。
「仕方ない。二人で戻るか」
「え?マリンは良いの?」
「あぁ、アイツは、いつもの所だろ。先に帰ろう」
そう言うと、ホークは、来た道を戻るように歩き始めた。
俺も、墓やマリンさんを気にしながら、帰ることにした。
少し歩くと、前の方から争い事の様な声がしてきた。
気になり、小走りで向かう、そこには、先に歩いていたホークが、他の住人と揉めていた。
近付くに連れ、争い事の声が、鮮明に成ってきた。
「お前の弟は、ここには眠らせない!何をしたか判っているのか?」
「だから、あれは事故であって故意ではない。何度言えば解る。」
「故意にしろ、事故にしろ、結果は変わらん!覚えておけ!」
俺が、追い付く頃には、言い争ってた住民は、立ち去った後だった。
(んー、気まづい)
「遥よぉ。カッコ悪い所見せちまったな。。。」
ホークは、項垂れて震えていた。
(きっと、悔しいんだろうな)
「カッコ悪い?どこが?イケメンさんは、どこに居てもイケメンさ。堂々としてれば良いのでは?」
「あら?思ったより良いこと言うじゃない。中野さん」
声の先に振り替えると、マリンが立っていた。
「ほら!アンタも、そんな顔してたら、あの子達も安心できやしないよ!しっかりしな」
(最後まで、姉御肌)
「ホーク、中野さん、朝食は、まだなんでしょ?一緒に来なさい」
「あぁ」
「良いのですか?ご馳走になります」
マリンの後を追うように、墓地を後にした。
(ところで、マリンさんは、何処に行ってたのかな?)
マリンを先頭に歩き、後ろでは、まだダメージが抜けてないホーク、そして俺
集落の路地を歩いていると、山の上?崖上?に社が見えた。
(なんだ?あれは)
「ホーク、あの山の上に在る建物何ですか?」
「ん?あぁ、あれはな心魂っと言ってな社なんだ」
「社には、見えない社だね。あんなに離れてて、何を祭るの?」
前を歩いていたマリンが、急に振り向き、目を丸くしていた。
「え?馬鹿にしてた訳ではないですよ?誤解ですよ?」
隣を歩いてたホークも、俺を見て目を丸くしてた。
(地雷踏んだ?もしかして?)
少しの間、二人して俺を見ていた。視ていたが、俺ではない誰かを見てる気がした。
「いや、ごめんなさい。中野さん。昔、貴方と同じことを言ってた人を思い出してね。貴方には関係なかったよね。行きましょ」
「マリン、こいつ面白いだろ?俺も朝から、遥と一緒で楽しかったよ」
「なにが分からないけど、二人とも大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。俺は強いし、マリンを、倒せる奴すら居ないよ」
「へぇー、それは、凄いね。そんな二人が居るならこの集落も安全だね」
「おぅ、任せろ!」
ホークは、少しは機嫌が治りつつも、先頭を歩くマリンは、まだ雰囲気が暗かった。
路地を左に曲がった所で、マリンが立ち止まっていた。
マリンが見てる、その先には、ユーリが立っていた。
「マリン、どこ行ってたの?探したよ?いつもの所だっけ?」
「ユーリ、大丈夫なの?歩き回って?」
人差し指を、口元に立てる。
「平気だよ。マリンの膝枕のお陰かな?」
手を後ろに組ながら、ゆっくり歩きマリンへと向かう。
路地を曲がったら、俺からもユーリが見えた。
「あーーーーっ、中野さん!どうして、ここに?なぜ?」
嬉しそうに、小走りで手を小さく振りながら近付いてくる。
「いや、マリンさんに朝食をご馳走してもらいに。。。。」
「えーっ、私は聞いてなかったよ?マ・リ・ン・さ・ん?」
「いや、それは、たまたま、いつもの所で、ホークと中野さんに逢って、その流れで。。。。ご飯でも。。。。っと。。。。」
「ユーリ、実はだな、俺が朝食作ろうとしたんだが、失敗してな、それでマリンに厄介になろうと。。。。」
「えっ?じゃぁ、マリンもホークも昔に戻ったの??良かったぁ。私も嬉しいよ。」
片足で、クルッと小回りして、マリンの腕へ抱き、顔を近づけた。
「じゃぁ、私は、中野さんと屋台でも回るよ。二人の邪魔はしないよ。」
「ユーリ!べ、別に、そう言うのではなくて。。。。」
マリンから離れ、小走りに俺に向かって来た。
「中野さん。私とデートしよ」
「えええっ」
「じゃぁね、お二人さん」
笑顔で、二人に手を振り、俺の手を引きながら走り出した。
路地を曲がり、小走りに走っている。
(あれ?バテない?体力も戻ってる?)
数分間走り、二人の息遣いが荒くなり、どちらがでなく自然と走るのを辞めた。
手を掴み、前を歩くユーリ。
心なしか、ユーリの歩き方がおかしい。
少しずつ、ユーリの歩き方が弱くなる。
そして、身体が揺れたと思った瞬間、ユーリが倒れた。
「ユーリさん!大丈夫ですか?」
路上の隅で、息を荒くし、肩で息をしていた。
「私は、大丈夫です。はぁはぁ、でも。。。二人には内緒にしてくださいね?中野さんとの秘密です」
「秘密は、良いですよ。言いませんから。ですが、こんな状態は、良くないです。どこか病院とかないのですか?」
「少し、休憩すれば治るので、心配しないでください、」
「ここでは、何ですので、俺が運びますから何処か良い場所知りませんか?」
「そ、そうですね。墓場は行きましたよね?あの裏手にお願いします。」
「墓場の裏?判りました。そこまで私が運びます。少し嫌でしょうけど、背中に捕まって貰って良いですか?お願いします。」
俺は、ユーリの前にしゃがみこみ、ユーリを待った。
背中に、加重が掛かるのを確認して立ち上がり歩き出す。
どれ程歩いただろう。俺の中で不安が過った。
(あれ?こんなに遠かった?あれ?迷子?)
(来た道、戻ったつもり何だけどなぁ)
「ユーリさん?少し聞きたい事が出来たのですが。。。」
背中からモゾモゾと動く感じが伝わってきた。
「どうしましたか?私、重いですか?」
「はい、重。。。ではなくですね。どうやら迷子に成ったみたいなんてすよ。出来れば道を教えて頂けたら助かります。ごめんなさい。」
『ふふっ。今、重いって言いました?気のせいてすかぁ?ふふっ』
「いや、あれはですね。息を吐いた時に、声を出してしまい誤解をしたのだと思いますよ」
(実際には、限界近いです。)
『本当てすぅ?じゃぁ、すみません。少し背伸びしますね。ふふっ』
(いや、それ、判ってヤってますよね?)
(小悪魔だ。これは、背中に乗せるな危険では??)
「んーーーーっはぁーーっ」
「少しは、身体が楽に成りました。で・す・が?」
ユーリは、俺の首に両手で抱き付くように回し力を込め始めた。
(いや、苦しい。元気になったなら、一旦落とす?いや、下ろす?)
「ユーリさん?俺的には、大変嬉しいのですが、緊張して手に力が入り過ぎていませんか?」
「えぇ?聞こえませーん」
「質問を変えますね。墓場の場所は、どこでしょうか?教えてください。」
「そうてすね。この道を真っ直ぐ行って、初めの曲がり角を左です。」
「判りました。ありがとうございます。」
(気合いと、根性?無理ならプライド捨てよう。無理ゲーだよ)
数十分歩き続け、何とかたどり着いた。その間、背中の小悪魔は、愉しそうに俺の背中を堪能したみたいだ。
「あっ!あっちだよ!ほら、後少し!」
「畏まりました。お嬢様。」
あと少し気合い入れますか。
言われたまま、指示通りに歩くと、視界が開けた場所があった。