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彼岸に咲く願いの華  作者: 大根沢庵
第二章 存在と証明
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第二章1  『新たな仲間』

「ちょっ、大丈夫ですか!?」


「ああ、大丈夫だ」


 急に流れ込んで来た記憶に怯んでいると、クロエが心配して耳打ちで心配してくれる。だから素早く持ち直していつも通りの態度を保った。

 金髪の少年と紅髪の少年はこっちを向いて顔をしかめると、その中の紅髪の少年が話しかけて来る。


「えっと……何か用か?」


「え? その、ここが俺の部屋だって聞いたんだけど……」


「ああ、君達がそうだったのか。ごめん、そうとも知らずに勝手に使ってしまっていた」


「いえ別に……」


 爽やかな雰囲気を放つ紅髪の少年が謝るのにクロエが答える。

 やがて紅髪の少年はティアルスとクロエの顔を交互に見ると頷き、何かを察した彼は手を差し伸べて握手を求めて来た。


「なるほど。……君達の話は聞いてる。あの手紙が来てここへ流れ着いたんだろ?」


「え、知ってるのか?」


「もちろんだ。俺達全員、願いが叶うって手紙が届いたからな」


 まさかあの熱血系の人以外にもティアルスと同じような剣士にまで届いていただなんて。本当にどこまで広がっているかが気になる中で、ティアルスは彼の言葉を耳に入れた。


「俺達は戦う気が無いからこそここに集まったんだ。そしてここへ君達が来たって事は、君達もそうなんだろう? ……だから、これからよろしく頼む」


「……ああ」


 ほんの一瞬だけ魔眼を使い、嘘じゃない事を確認してから手を握った。……今更思うけど用心過ぎるだろうか。

 彼は手を握ってくれた事に嬉しそうな微笑みを浮かべると、両手で力強く握って素早く上下に動かしながらも続けた。その手からは温かい物が伝わって来る。


「実は大人の剣士以外は俺達しかいなくて心細かったんだ! 同い年くらいの君達が来てくれて本当にうれしいよ!!」


「あ、ああ……」


 ――こういう性格の人ちょっと苦手かなぁ……。


 自分の性格を知りつつも彼の言葉に耳を傾ける。

 今思ってみればそうだ。入口でも廊下でも、ここまで来るまでに見かける人は全員使用人だけで、ティアルスの様な若い剣士は誰一人としてみなかった。彼らも彼らで不安に駆られているんだろう。

 すると颯爽と自己紹介に入る。


「俺はラインハルト。よろしく!」


 ――1秒前まで握手してたのにまた手を差し伸べて来た!?


「アルスタだ。よろしく頼む」


 少し尖った紅髪の少年――――ラインハルトともう一度握手し直してブンブン振っていると、その後ろから垂れた金髪の少年――――アルスタが肩に手を乗っけてキラキラの眼差しを向けて来る。

 そんなティアルスにとって少し馴染めない自己紹介をされる中でこっちも名乗った。


「俺はティアルス。こっちはクロエ」


「よ、よろしくです」


「ティアルス……。一応聞くけど、男だよな」


「男だ」


 アルスタが質問してくるからすかさず答えた。

 何で女主人公の英雄譚のタイトルを名前にしてしまったんだろう。と今更ながら自分自身で後悔する。イルシアとクロエによると顔も中性っぽいから女と言われても納得できるって言われたし。

 ラインハルトはクロエの猫耳を見付けると、ようやくブンブン振り回していた握手を話して興味を移してくれた。


「そっちの子――――クロエは獣人族?」


「はい、そうです……」


「ああ、そうか。そんなに怯えなくても大丈夫だよ。俺達は亜人だからって差別する気は微塵も無いから」


「そうなんですか?」


 怯えるクロエにそう言うと、垂れかけた耳をピーンと立たせて機嫌を取り戻す。のだけど、やっぱり初対面の人には馴染めないみたいでティアルスの後ろに隠れる。

 そんな姿を見てラインハルトは少し微笑んだ。


「信頼されてるんだな」


「まあ、そうなる」


 厳しそうな雰囲気はないし、これならクロエもすぐに馴染んでくれるはずだ。自分が馴染めるかどうかはさて置いて。

 あまり警戒させるのも良くないって思ったのだろうか。2人は早速この部屋から出て行こうとした。でも馬車での会話を思い出して咄嗟に2人を引き留める。


「……じゃあ、一先ず俺達はこれで。なにかあったら――――」


「待った!!」


 そうして袖を掴みながら制止させると、2人は振り返って葛藤するティアルスの表情を見た。

 彼らは戦わない為にここにいる。だけどその2人を戦わせる為に引き込むのはどうなんだろうって咄嗟に思ったのだ。そんな表情を見てアルスタとラインハルトは言う。


「困ってる事があったら言ってみてくれ」


「俺達が力になるぞ」


「えっと、そのだな……」


 その言葉に甘えてティアルスは話し出した。手紙の事。異変の事。犯人が殺し合いを狙ってる事。そしてそれを解決しに来たという事。最後にその為の戦力が必要だという事を。その間、2人はティアルスの話を凄く真剣な顔で聞いていて、最後には顔を合わせて同時に頷いた。

 正直、最初は絶対にこんな話には乗らないと思った。でも2人は何の躊躇いも無く納得し、あまつさえ自分の師匠にも声をかけようとしてくれる。


「なるほどな。状況は分かった。なら俺達も協力する」


「師匠にも声をかけてみるか。もしかしたら他に協力者を見付けてくれるかも知れないし」


「えっ? いいのか?」


「だってこのままじゃ何人も死んじゃう訳だろ。まあそこは元々分かってたけど……。この異変を解決できる方法があるのなら、俺達は出来る限りそれに協力する」


 2人の真っ直ぐな眼差しを受けてティアルスも素直にその厚意を受け入れた。

 そうとなれば話は早い。後は腕を治療しつつも対策を練って行けばいいだけだ。と思っていたのだけど、クロエがその件について喋り始めた。


「けど、この異変はまだ不明瞭な点が多すぎるんです。だからすぐに行動出来る訳じゃない。だからといって異変が起こるまでどれだけかかるかも分からない」


「そうか。この異変は特定の人にしか知られていないから、動くにしても情報が少ないのか」


「そう言う事なんです」


 そこが唯一の欠点だ。普通の異変ならいざ知らず、この異変はそこらへんの騎士団にも知られない程の隠蔽性がある。だからこそ情報が集めずらい。そうなってしまえば少なすぎる手掛かりで何が起こるかを判断するしかなくなる。

 だからと言って騎士団などに話してもまともに相手をしてもらえない、と前にクロエが言っていた。


「じゃあ、どうしてここに? 拠点を構えるなら別の所でも……」


「最初だけは私の師匠も同じ事を考えてました。でも異変や殺し合いが起こった場所を見て、次はここが殺し合いの舞台になる可能性が高かったんです。だから私達はここに来ました」


「そう言う事だったのか。でも、いつ殺し合いが起こるか、まずここで起るかどうかも分からないと」


「はい」


「結構厳しい状況なんだな……」


 あまりにも判断残量が少ない現状を説明されてアルスタは腕を組んだ。

 さっきとは雰囲気が全然違うクロエは荷物から地図を出すと、4人の真ん中に広げて馬車の時の様に説明を始める。


「ですから、ここしばらくは情報収集に努める事になります。私は伝書鳩を使って遠くから情報を集めるのですけど、2人は――――」


「街で聞き歩きか?」


「それ、出来ますか?」


「それくらい余裕だ」


 するとアルスタは拳を合わせてやる気を示して見せる。その隣じゃラインハルトが「よし、やるぞ~!!」と凄く意気込みながら凄く大振りな動作でやる気を表していた。

 のだけど、その中にティアルスが入ってない事に気づいたラインハルトが問いかけた。


「あれ、ティアルスは?」


「……すまない。俺はこれがあるから……」


「あ~……」


 そうして包帯まみれな腕を見せつけると怪我の具合を察して頷いた。

 普通の戦い方じゃこんな怪我はしない。だからその有り様に2人は驚くどころか若干引いていた。その様子にティアルスはそっと苦笑いをこぼす。



 ―――――――



 とりあえず話がまとまったみんなはそれぞれの師匠に話しをしに行こうという事になり、全員で廊下を歩きまわっていた。迷いそうになってはメイドなどに聞きながら。


「でも、そうなるまでよく戦えたな」


「当時は死にそうになってたから、火事場の馬鹿時からってやつで力を入れ過ぎたんだと思う。それにまだ剣術も甘いままだし」


 そう言って自分の掌を見つめる。

 あの時、もっと技量があればクロエはあんな傷を負わなかった。そう攻め続ける。あれから腕の治療で精一杯だからロクに刀を振れてない。というか折れてしまったから振る刀も無い。

 だけど、少女の叫び声でそんな考えは消飛んだ。


「キャァァァァァァ―――――ッ!!」


「っ!?」


「悲鳴!?」


「こっちです!」


 こんなところで悲鳴を聞くだなんて思わなかったから驚愕する。全員で声の方角へ向かう最中、ティアルスは腰に刀がない事に気づいて少し減速した。剣士なのに武器がないってただのお荷物では……。

 そうして声の主と見られる少女を見付けた時、全員は戦慄する事となる。

 少女の目の前には黒い大きな顔のない“何か”かがいたから。大男に凄く大きな布を被せたみたいな見た目の魔物は、少女を見るなり手を伸ばして襲いかかろうとした。

 だからティアルスはあの時みたいに足へ力を入れて飛び出した。刀も持ってないのに。


「ティア!?」


「その子から離れろッ!!」


 クロエの制止も聞かず飛び出し、蹴りの姿勢を構えて思いっきり黒い何かに蹴り込んだ。――固い。っていう事は表面の黒いのは布か何かだろうか。

 でも驚くべきなのは頑丈さ。全速力で飛び出し全力で蹴ってもほんの少ししか後ずさりしなかった。あまりの頑丈さに面を食らいつつも刀を持った3人と入れ替わり、ティアルスは悲鳴の主の顔を見た。


「おい、大丈夫か!?」


「え、えっと……」


 蒼髪に幼さが残る容姿をした少女は目を丸くし口をカクカクと震わせている。そりゃ、いきなりあんな化け物が出てくればそうなっても当然だ。

 前に立った3人は刀を抜いて構えるとティアルスと少女庇う態勢を取った。

 その中でアルスタとラインハルトは軽い作戦会議をする。


「あの蹴りでも耐えるって事は相当強いぞ」


「大丈夫だ。俺の剣戟はあんなのには防がれないから」


 ラインハルトは刀を真横に構えて踏み込む態勢を整えた。その背中からはあらん限りの闘志が感じ取れる。アルスタも上段に構えて攻撃する態勢を取り、クロエもいつ攻撃が来ても言い様に構えた。

 すると目の前の魔物は人の言葉を喋り始める。


「グ……ちょ、ガ……!」


「こいつ喋れるのか!?」


「こういうタイプは初めて見たな」


 そう言って魔物はモゾモゾと怪しい動きをしながら近寄るから、ラインハルトは迎撃する為に大きく踏み込んでは大きく音を鳴らして刀を振り上げた。あれであの頑丈さを何とか出来るだろうか。そう疑問に思う。

 刃が頂点を通り越して急速な振り降ろしを始めた瞬間、突然少女が叫んで。


「――止めて!!!」


「っ!」


 少女の制止を聞いてラインハルトは刀を振るのをやめた。

 急に叫んだ事にびっくりしたのか、クロエが振り向くと少女は続けて叫んだ。それも到底信じられない事を。


「その人、私の師匠なんです!!」


「「――――はぁ!?」」


 その時、4人の驚く声が廊下へ響き渡った。

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