第三十二幕 〇ス地獄はかんべんしてくれぇッ?! いつかは、鳥かごになるわけねぇッ、心強い護衛もいるし、勇者がんばらないとッ!!
「ユニと一緒に、テスタに行く?」
ユニが、何くわぬ顔でマジマジと顔を近づけ、訊いてきた。
「ユニ、確かに、俺は、ユニのこと嫌いじゃない。それに守ってあげたいって、心底、想ってる。だけどさ、まだ、気持ちが結婚とかまで、進まないんだ。俺は、こっちの国の人間だし、まださ、学生だし、ユニや皆といるとほんと、毎日楽しいけど、驚くことばっかりなんだ」
真剣な顔で、ゆーまはいい、少しの間を取って、また、話し出した。
「だから、もう少し、ユニのこと知ってから、そういうなんていうのかな、上手く言えねーけど、結婚とかは、そういう時にしたいんだ」
ゆーまは、真剣な面持ちでユニに、本音を伝えた。当然、気に食わないものもいたが、ユニは嬉しそうな顔をしていた。
「きゃ、解ったよ、ゆーま。あたしも、もっと、ゆーまのこと、知りたいし、それに、ライバルだけど、みんなといると楽しいし、ゆーまが、あたしでほんとにいいって、言ってくれて、好きって、大好き愛してるって、言ってくれるまで、こっちの世界にいるよ」
「ユニ!」
「だからさ、ねッ、あたしもそれまでゆーまの傍で、ずっと待ってる」
ユニが、納得した顔で、ゆーまを見つめ、弾けた声で言う。
それを聞いた、ルネディ王が頷き、二人に言った。
「ユニよ、そういうことか」
「うん、パパ、だから、あたしたち、二人の気持ちに整理が着くまで、こっちの世界にいるね。強い護衛も二人増えたし」
「レヴァよ、警護は頼むぞ」
「ハッ、ルネディ様」
レヴァは敬礼し、頭を下げる。ティグレも一緒に頭を下げた。
ヴィオラやラクリも後ろで敬礼した。
「ムコ殿よ、ユニをそれまで守ってやってくれよ。地震の時の勇気を余は買っておるからな」
「はい、判りました」
ゆーまが、真剣な眼差しで言った時だった。
「ゆーまぁ♥」
ユニが、ゆーまの頬にキスをした。
「ゆ、ユニ!」
タジタジとし、ゆーまは突然のことに顔を赤らめる。
「うふふ、地震のときは、ほんとにありがとう。ユニ、とても嬉しかったの。命をかけてまでユニを守ってくれて。キスは、そのお礼だよ。うふ、これからもヨロシクね」
「あ、あ、あ、あ、ああのその、ぞな」
「せんぱーい、嬉しくて、顔が、赤くなってますよ」
あいちゃんがゆーまの照れようを見て、手で口を隠しながら、笑って言った。
「言葉にもなってないぞ、あたいもキスして火傷させてやろうか?」
「私も熱い熱いキスを」
阿蓮姫とリンがユニに負けじと不服そうな顔で、応戦する。あいちゃんは言えずにいた。
「みんな、勘弁してくれ」
ゆーまが、顔を赤らめながら、手をバタバタ振り、言った矢先だった。ピットが微笑み、動いた。
「では、我輩が、記念としてみんながいる、この情景を、魔法画として、描いて、保存しておくダス」
ピットがもう、魔法ペンと魔法タブレットを取り出して準備していた。
「おう、そりゃいいな、ピット、頼むぜ」
言うと同時に皆、ユニの周りに集まり並び出した。ルネディ王も魔法モニターから写るようにした。
ピットが、それを見計らって、魔力を発動させた。
「それじゃ、いくダスよ」
「ハイ、チーズ!」
一瞬の瞬くほどの間に、ピットは、笑顔でいた全員の姿を魔法ペンであっという間に描きあげた。そして、ピットの目が赤く光った。
「魔法画、展開! 魔法画、データ保存!」
永遠に、このユニたちがいた、愉快な仲間たちの姿が、ほんとの画像として、ピットの魔法タブレットの中に残った。誰もが笑顔で喜んでいる。
ルネディ王は、この情景を見ると、何を想ったのか、即座に自身が映っていた、魔法モニターの映像を、魔力を要して消した。
ゆーまが、一瞬だけ気遣うように、それを見遣った。
ユニは、窓辺の日差しがある方に行き、光を受けながら、外を眺め、切ない顔をした。
「(ユニは、これからも、ズット、ゆーまを待ってる。どんなことがあっても、ゆーまをズット待ってるから。それまで、ズット、ゆーまを見詰めているよ)」
「?」
ゆーまが、窓辺に行ったユニを見て、不思議そうな顔をした。
いつか、ユニが想っていることが、何の不幸もなく、現実になることを皆、信じて願っている。皆、仲間なのだから。
そして、澄み切った青空をユニは見上げた。
「(こんな幸せが、ズット続いていくといいな。未来にも明日にも)」
魔法もかけていないのに、青空を飛んでいた鳥たちの羽がキラキラと輝いた。明日を夢見て信じていく気
持ちだけが、キットこれからの二人の未来になるだろう。
気に入ってもらえたらブックマークお願いします。