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第二十三幕 恋愛成就?! 恋寺?! また嫌な予感がするぅぅッ~!! なんで俺だけくうちゅうからぁッ、勇者はつらいよぉ、勘弁してくれぇぇッ!!



「うわぁ、落ちるぅうぅうぅッ!」



DOSUN!



一人だけ、空中から地面に落ちて、ゆーまは尻餅をついた。他の皆は空中からではなく、ピタリと地面に無事着地した。


着いた場所は、何と、見晴らしのいい、綺麗な風景の山の中だった。恐らく、ゆーまがイメージした雪時雨山だろう。



「ゆーま、大丈夫? あ、足、怪我してるね」



どうやら、ゆーまが、不時着でこけて、擦り傷を追っていたようだ。血が出ている。ユニがゆーまに駆け寄ってきた。



「うぅ、おーいてぇ、何で俺だけ空中から現れるの?」



「いたいの、いたいの飛んでけぇ~」



ユニが、ゆーまの傷口に魔法のタクトを当て、魔法のタクトを軽く傷口の上で回し、空の方に腕を振り上げた。一同の視線が集まり、ゆーまは、不思議そうな顔をする。



「ユニ様、魔法のタクト振って、何、やってるダス?」



「朝、ゆーまの家で見たの。こんな風にすると傷が治るんだって」



ユニが、うふふと可愛い声で言う。



「お前、そりゃ、朝の子供番組だろ? 実際は、治らない?」



ゆーまが、あははと、拍子抜けた顔で傷口を見遣った。見ると同時に摩訶不思議は起きていた。近くにいたあいちゃんが、頓狂(とんきょう)な顔をする。



「あ、あれ? 治ってる? 血が、出てたのにどうして?」



ゆーまは、驚いてパタパタと手で傷があったところを叩く。しかし、全くの無傷だった。



「気の利かない奴じゃ。ユニ様の治癒魔法じゃ! 魔法のタクトで、一緒に掛けたのじゃ」



「治癒魔法? あ、そうか、魔法かけてくれたんだ。ありがと、ユニ」



「いいえ、どう致しまして。だってさ、ゆーま、許婚(いいなずけ)だもん」



「先輩、朝から、夫婦漫才ですか?」



あいちゃんが、少しムスっとした顔でいう。



「あはは、何だろ? お(とぼ)け傷だな。漫才ネタだなこりゃ! 一本、取られましたッ」



ゆーまが、頭をパチンと叩き、照れながら答えた。



「それにしても、相変わらず、凄い魔法だ。って、ほんとに着いた、今回は無事、正真正銘の山だな」



ゆーまが、首を振りながら、辺りを見渡す。かなりの絶景だった。



「うわぁ、綺麗」



ユニが、景色の綺麗さに感激して、目を輝かさせた。



「景色、綺麗ですね、行き成り、山頂なのですか?」



ヴィオラが、黙っていた口を開く。



「違うみたいだな、まだ、上がある。ここらは中途だな。あそこの寺みたいなのがあるところが、山頂だろうな」



ゆーまは、まだまだ高い場所にある凄い造形の寺を、遠目で見遣った。日差しがとても眩しい。



「あ~ん、魔法ドキドキベッド、持って来るんだったぁ~」



「あんなもんぜってぇ、いらねぇ~ての! 持ってくんな」



(ひど)い目にあったからか、ゆーまはすぐに、口を(とが)らせて言葉を返した。



落ちたところは、見晴らしのいいところだったが、中途の場所のため、休憩所があり、ベンチや自販機、売店などの設備もあった。沢山の参拝客がいた。



「ん、やけに、朝なのに、カップルが多いな」



「そうですね、ここの寺って、確か、恋愛成就で有名な、恋寺ですよね?」



「恋愛成就!」



ユニの目が、きらーんと輝いた。



「確か、恋の伝説があって、その昔、叢雲(むらくも)城にいた君主と縁組をした阿蓮(あれん)姫という方がいて、戦乱の中、追われて、追っ手から二人、一緒に逃げる時に君主が、自分が死んでも、阿蓮姫を助けるため、追っ手を引き付けるために、叢雲城の方に、君主が趣き、敵を防ぎ、阿蓮姫は遠く離れた、この(ゆき)時雨(しぐれ)寺に来たらしいんです」



「へぇ、そうなんだ」



ユニが、耳を立てて、珍しく熱心に聞いている。



「まだ、恋の話には続きがあるんです。その雪時雨寺に逃げるとき、阿蓮姫が履いていた草履を片方だけ、どこかに、落としたらしいんです。阿蓮姫は長旅で敵の追手を考えると、取りに戻ることも出来ず、寺で(いくさ)が終わるまで待ったらしいんです。それで、そのとき、阿蓮姫が買っていた、猫が突然いなくなって、その落とした草履を勝利した君主に届けたと言い伝えではありますね」



あいちゃんが、恋理論を熱弁する。



「それから、その草履は阿蓮姫が生きている証拠とされ、姫の元に君主が向かったと言われています」



「あいちゃん、恋寺の話、詳しいね」



「私も一応、女の子ですから」



「あ、それで恋が実ったってわけだ」



「そういうことですね」



「あーそれで、ここの販売店、草履、売ったりしてんだな」



感心したように、ゆーまは言い、頭に手を抱えながら歩き、販売店を見渡す。確かに、大きく看板が出て、草履を売っている。



「それに、山頂の恋寺に行く途中で『草履落とし階段』っていう階段があって、その自分が落とした一足の草履を、好きな人が拾ってくれて、恋寺まで持っていって、参拝してくれると恋が成就すると、ここでは、言われていますね。あ、あそこの販売店で売っている恋草履がそうですね」



「じゃぁ、手当たり次第、一杯、買って置けば、大丈夫なのね」



「あのう、ユニさん、でも、何足でも、っていうのは無理みたいですね。言い伝えでも一足ですし、店屋のルール本にも、そう書いてありました」



あいちゃんが、力説し、少し嬉しそうに言う。女性陣が聞き耳に入る。



「草履を拾う? 恋寺? また、やな予感が……」



ゆーまが懸念し、溜息をついた。



「あいちゃん、行くしかないね。あたしは、ゆーまとの結婚の恋愛成就、頼むわ」



「(あたしも先輩との仲が進展するように)だね、私も行きます」



「やっぱり、乙女だよネ~」



「ネぇ~」



あいちゃんとユニが意気投合し、嬉しそうに顔をルンルンさせて、見合わせながら言った。



「ということで、山頂の恋寺に、皆で、行きましょ」



ユニが、元気よく言う。隣にいたヴィオラが口を開いた。



「仕方ないですね、護衛として、私も行きます」



「わしもユニ様の後見役として一緒にいきますぞ」



「おい、ピットはどうする? いくか?」



「行くダスよ。行かないと昼飯、食えないダス」



「ゆーまも、行くんでしょ?」



ユニが興味津々に言う。



「俺も当然、行くよ、皆で行こう。で、山頂で昼御飯にしようか」



ゆーまが、そういうとピットの魔法タブレットが輝いていた。






☆☆  ☆☆
















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