第十八幕 うそだろぉ、ゲームの中の人が現れるなんてぇぇぇッ、いなずまかんべんしてくれぇよぉッ~!!
「ハァ、キタぁ! パニクルゥ!」
「パニクルゥ! ってまさか!」
ピットの瞳が、一瞬にして違う色に輝いた。ゆーまが、逃げ腰になっている。
「魔法画、展開!」
ピカァ!
首をさっき、突っ込んできたのは、魔法画を描く為だったのか、一瞬にしてピットが、魔法タブレットに描いたものが、ピットの魔力で具現化した。とんでもない奴が出てきた。
「ゲェ、嘘ぉ? いぃ、リ、リンとアエリアがいる、嘘だろぅぉ? (魔法ペンを使ったのか。俺たちが、ゲームしてるうちに、後ろでキャラ描きやがったな)」
何と、さっき、ユニとゆーまが、ゲームで使用していた、リンと魔法猫アエリアが、そっくりそのまま、
同じ形でゆーまたちの目の前に現れたではないか。
リンは、マントを羽織り、剣士風のスタイルに、オレンジ色の髪の、ショートヘアに、特殊なフリルのス
カートをはいている。
魔法猫アエリアは、毛並みは白色で、僧侶らしき格好をしている。瞳の色は薄い青だ。
一同が唖然となり、驚きの色を隠せない。リンは、キリッとブイサインのカッコイイポーズを見せた。魔法猫アエリアは、魔法杖ガピコンで床を軽く叩く。
「あらまぁ、凄いわね。私が、デザインしたキャラが動いてるわ」
ゆーまのお母さんは余りの嬉しさに、目が、キラキラと輝いている。
「いくよぉ、ゆーまぁ!」
「しゃ、しゃべっ……てッ、そ、その構えまさかぁ!」
リンが、額でブイサインしていたジェスチャーから、魔法剣アウトライザーを構え、必殺技の陣容を取る。隣にいた魔法猫アエリアが動揺し、制止をかけようとするが、手を伸ばしても遅かった。一瞬、固唾
(かたず)を呑んだ。だが、ユニは、のほほん笑顔だった。
「魔法剣ローズバイパー!」
ちゅどーん!
「しゃ、喋った! ごほほ、げほぉ、魔法画ってこんな攻撃の仕方も出来るわけね」
リンの必殺技、魔法剣ローズバイパーが炸裂し、見事にゆーまを真っ黒焦げにした。反動で、その場でゆーまは咳払いをし、うつ伏せに倒れて、ピクピクしている。
「ゆーまが、動くリンちゃん見たいかなと思って、ピットに意思伝言魔法テレキネスで描くように頼んであったの!」
「意思伝言魔法? 要するに、こっちの国だと超能力者が喋らないで意思疎通する、あの架空能力テレパシーのことだな。ほんと、漫画だな……んで、だれが、見たいって言ったんだよ。ま、でも、動くリンちゃんが見えて嬉しいのは、嬉しいけどさ」
「てへへ、ゴメンネ。でもね、テレキネスの魔法の効果は半径十五マジックしかないから、当人が歩数で言うと、術者の半径十五歩くらいの範囲にいないと出来ないの。顔、真っ黒になっちゃったね。拭いたげるね」
「いいよ、自分で拭くから。マジックっていう、ユニの国の単位は、十五歩ってことは、要するに人の一歩なんだな」
不貞腐れた顔で、ポンポンと焦げカスをゆーまは手で払う。ユニが、申し訳なさそうな顔をして、必死にゆーまの顔を拭こうとしている。
「でも、爆発しても、殺傷能力はないの」
「我輩たちが、ユニ様を緊急に守るための攻撃方法ダス。仮の攻撃物体を描くことで今まで何度も危険を切り抜けたダス」
ピットが、淡々と説明していく。
「どう? ゆーま。あたいの必殺技のお味は?」
「んぅ? まぁ、別に痛くもネーけど、もう、真っ黒焦げは、懲り懲りだ!」
辛辣な感想をゆーまは、嘆息気味にふぅと、溜息を付きながら言う。
「ご主人様、如何いたそう?」
「アエリア、あたい、この人好き♡」
そういい、リンは、行き成りゆーまに抱きついた。ゆーまの顔が真っ赤になった。
「えぇ~リンちゃん、魔法画からいきなり出てきて、それはないよぉー。ゆーまは、ユニのだよぉ。ゆーまを離してよ」
ユニが、必死に両手を使って、抱きついてるリンを退けようとする、が、抱きついてリンは、離れようとしない。
「離さないとユニ、怒るからね!」
「だってさ、あたいをいつもゲームで使ってくれてるもん。ズット、使ってくれているってことは、あたいのこと好きな証拠よ。それに、あたいは、ズット、ゲームの中から見てたからさ、初めてでもないからね。出会いは、あたいの方が先よ、ユニ!」
「むぅ~」
二人とも立ち上がり、その場で睨み合い、目から火花が散った。
「二人とも、怒らないでさぁ、睨み合いしないでさぁ」
ゆーまが、まぁまぁと、手を前に出し、必死に止めようとするが、乙女回路は、止まろうともしなかった。女の嫉妬は怖いのだ。
「まぁ、凄いわ。本物の人間みたいに動いて喋るのね。ゲーム化したら、ミリオンいくわよ」
「母さん、感激してる場合かよぉ。げぇ、その構え、ゲームのまんまだぁッ! リンちゃん、お願いだぁ、必殺技もう一回、ぶっ放すのは止めてくれぇ! 家が壊れるし、焦げるぅ! んで、お前らぁ、いつ消えるんだぁッ!」
ゆーまが大声を上げる。
「リンは、好きな時に出てくるよ。データが、魔法画である限りはね。そこのちっこい魔法使いくん、データ、消さないでよ」
「判らないダス」
「むぅ~、ピット、もう消しちゃえ!」
「何ですってぇ」
「まぁまぁまぁ、もう、そこまで」
必死にゆーまが、止めようとするが……睨み合いは、続いた。
「あらら、いいじゃない。私のデザインしたキャラクターなんだし、実際に動いて、喋っているから、私は、夢見ているみたいよ」
「でしょ~やっぱり、お母様は、どこぞの姫様と違って、話しが判るわね」
「むぅ~、お母様ぁッ! ゆーまは、あたしの許婚だもん。運命の人だもん」
その時だった。ユニが、言った途端、リンが、持っていた魔法剣アウトライザーから稲光が出始め、エネルギーが集束していった。
「げぇ、ほんとに稲妻が出てるぅ!」
「……」
リンの瞳が、きらんと輝いた。
「きらんって、まさかぁっ! ちょっと待ったぁッ」
ちゅどーん!
リンの必殺技、魔法剣ローズバイパーが、何故か、ゆーまに炸裂し、軽い殺傷能力のない爆発が起こった。だが、さっきと同じく、真っ黒焦げだ。ユニではなく、何故なのだろう?
「やっぱり、こうなるのね。大爆撃だぁッ。おー、けむてぇ、ゴほほぉ、ゲホぉ、ゲホ!」
「もー、あたしのゆーまが、また、真っ黒焦げになったじゃない! もう、どうしてくれるのよ!」
「まぁ、俺は、いいから、二人とも、喧嘩しないで。で、リンちゃん、何で必殺技、喰らわすのが、オレなわけ?」
「リン、しーらなーい」
そういい、膨れっ面で、リンは踵を返した。
「まったく、わかんないぞナ」
「ゆーま殿、ご愁傷様だな! 乙女心は、複雑だからな」
「アエリア、あんた今、何か言った?」
ギロッと、怖い目で、リンはアエリアを睨む。
「え、いやその、別にだ」
「あんた、逆らったら、焼いて喰うからね」
「それだけは、勘弁してくれ、一応、猫の容姿だが、元は、魔法の国の王子だ」
「わーたから、もう、消えててくれ! 話しが、ややこしくなって仕方ないから」
ゆーまが、そういうと、魔法剣アウトライザーの切っ先をユニに向け、納得したような顔でリンが言った。
「今度、ユニ、会ったら、引導を渡してあげるからね、覚悟しときな」
PON!
「ふぅ、消えたか……」
一瞬で、リンとアエリアは、魔法タブレットの中に光を出し消えた。今あったことが、嘘のようだ。だが、ちゃんと焦げている本人がいる。
「むぅ~、ベーだ!」
ユニが、魔法タブレットにアカンベをし、リンに追い打ちをかける。
「……ということは、リンちゃんとアエリアも魔法タブレットの中にいるから、俺んちに居候ってわけね……」
「そうだよと、魔法タブレットの中から、魔法語で言ってるダス」
ピットが、魔法タブレットを見ながら言う。
「(そういや、リンも、あのゲームの世界じゃ、魔法の国の姫様だったな。お互いに姫様だから、プライドがあるわけね)二人めんどいのが増えた……ふぅ、先が思いやられる」
ゆーまは、真っ黒焦げの顔で頭をくしゃくしゃ掻き、嘆息めいた。ユニが、プゥと頬を膨らませている。
「母さん、ちょっと、リンたちについて、考えてたゲームの設定、教えてよ。名前とか」
「いいわよ。リンはね、私の設定じゃ、魔法の国ソーザライドの姫様で、姫でありながら魔法剣士よ。フルネームは、リン・C・アミレスタっていって、アミレスタ王家の血筋よ。魔法猫アエリアは、猫の姿をしているけど、元は、確かに人間の王子様っていう設定よ。フルネームは、アエリア・ロラフーバだったと思うけど」
「ふ~ん、リンてそういう名前だったんだ。ゲームしてる割には、知らなかったぞな」
「むぅ~、アミレスタでも、ファミレスタでも、何よ、許さないもん!」
ユニの目が、ギラギラ恋の炎で燃えた! 隣で嘆息をつく少年がいた。
☆☆ ☆☆