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第十一幕 制服に水着に、天使?! パラダイスなわけねーってばぁッ!! かんべんしてくれよぉッ~!!



「ふぅ、何とか間に合ったかぁ。ホームルームまで、後三分」



教室に入り、教室の時計を見遣り、ゆーまは席に着いた。不貞腐(ふてくさ)れた顔でバタンと、顔をうつ伏せる。



その時だった。



「ゆーまぁ!」



ユニだ、ユニが手を振りながら、明るく、可愛い声でゆーまのほうに近付いてくる。ゆーまの耳が、一度、聞いたら忘れないユニの声に反応し、ピクリと耳が動く。動くと同時に、うつ伏せていた顔を上げた。眠たそうな顔をしている。



「お、ユニ、どこ行ってたの?」



「ゆーま、ユニもこの学校に一緒に通うね」



ユニが嬉しそうな顔で、ゆーまの両手を握り、ピョンピョン跳ねながら言う。近くに、見知らぬ馴れ馴れしい素振りの子が二人いた。



「って、おい! 入学してネーだろ? 手続きは?」



ゆーまが、両手を握られて恥ずかしいのか、少々顔を赤らめながら、照れくさそうにいう。



「入学しちゃった! じゃーん! これ、生徒手帳だよ」



「えぇぇッ、うそーぉ! ほんとに判子押してるぅ!」



ユニが誰かから、もらった生徒手帳を開いて、ゆーまに見せた。そこには、ユニのカワイイ笑顔満面の写真と、証明の判子があった。唐突の出来事に、信じられないと言った面持ちで、ゆーまは垣間見た。



「水着っていう、ゆーまが好きな格好で、校長先生に話ししたら、可愛いから良いって!」



ユニがエヘッと、微笑しながら能天気な声で言う。



「って、おい、誘惑したのかよぉ! あのエロ校長、ここはタレント事務所かぁ!」



エロ校長の姿が浮かび、ゆーまは、余りの出来具合に、呆れた顔をする。そんな誰でもでいいのかと。更に、憶測が走る。



「で、そこに、一緒に付いて来ている、妙な帽子被った男と、胸元セクシーに開いてレースクイーンみたいな超ミニスカ履いた女の子は、もしかして、ラクリとピット?」



「よく判ったな、婿殿!」



「そうダスよ!」



「って、わかるわぁ、その格好みたら! 服に羽根のマーク入ってるし、魔法タブレットと魔法ペン持ってるし、はぁ……」



ゆーまは溜息をつく。



「もしかして、ラクリとピットも入学したわけ?」



「わしは、ユニ様の世話係じゃ。入学はしてないが、仮入学ということにしてもらったじゃ。一緒にいて当たり前なのじゃ! 学校にいる時は、妖精の格好じゃ(まず)いから、人間の格好に変身魔法トランスでなったわけじゃよ!」



「我輩もダス!」



懸念して、ゆーまが問い(ただ)した時だった。誰かが、割って入った。



「せ、せんぱい、その隣にいる可愛い子はだ、誰ッスか?」



「あぁ、明日希(あすき)かぁ!」



一学年下のクラスのゆーまの後輩の明日希だ。長い前髪に黒髪の、一見、普通の少年だ。手に、デジタルビデオカメラを持っている。



「まぶしいッ☆ 天使ッス♡ くらくらするッス。超かわいいっす♡ 目の前に僕の天使がいるッス♡」



明日希は、手に、持っていたデジタルビデオカメラを、顔がアップで映るくらいユニに近付け、必死に四方八方から、素早いスピードで動き回り、ユニを撮り(まく)る。ユニは、不思議そうな顔をし、首を傾げる。近くにいたラクリが、眉毛を()り上げていた。



「僕は、派疎見明日希(ぱそみ・あすき)っていうっす。よろしくッス」



鼻息を荒くし、明日希はデジタルビデオカメラを、軽快に動かしながら、甲高い声で言う。



「ユニっていうの。ヨロシクネ」



ユニは、撮られているにも(かかわ)らず、全く嫌そうにもしない。普通なら、女の子は嫌がるのだが、許容性が高いのか、魔法の国では、姫様で見られる存在だからなのか、困惑もしなかった。逆に、カメラに笑顔で手を振っている。



「ヨロシクネっすか♡ かわいいっす。ユニさん、こっち向いてぇくださいっす」



益々、明日希が興奮し、荒い鼻息を活発に出し、ビデオを回す。



「明日希、ビデオ、回すな!」



あんまり、明日希のユニを撮る姿に焼き餅を()いたのか、ゆーまは、苦言を明日希に放つ。ほんとに

困った奴だと言った面持ちだ。



「イいっす。イいっす♡超かわいいっす♡」



ユニの笑顔に悩殺されたのか、もう、誰も止められなかった。ゆーまの注意も見ず知らず、更に更にビデオを回し出した。



「チェンジ、むぎゅ♡」



「こらぁ~。ユニ、教室で水着になるナァ~」



なんと、一瞬の間に、ユニが、魔法服で服装をチェンジし、水着姿になっていた。席から立ち上がり、ゆーまは、恥ずかしそうに頓狂(とんきょう)な面持ちで大きな声を上げる。



「えへへ、かわいいでしょ、ゆーまぁ」



ユニは、教室にいたクラスメイトから、視線の的だが、恥ずかしがることもなく、水着姿で大胆且()つ、次から次に、セクシーなポーズを取る。



「そりゃ、かわいいけどさ、お願い、しないで。男子生徒の目に毒だから制服にチェンジしてくれ」



顔をちょっと横に向け、ドキドキ顔で、ゆーまは、そそくさという。



教室にいた、男子生徒の目がハートになり、視線を釘付けにしている。男のサガだ。



「姫様、はしたないです」



ラクリが、咳払(せきばら)いをし、ユニの肩をポンと叩く。



「うそだよーん。チェンジ」



ピカァ!



何と、今度は、一瞬のうちに魔法服でゆーまの学校の女子生徒の制服姿にチェンジしていた。



「え、さっき水着だったんじゃ?」



クラスメイトから不思議の声が飛ぶ。また、視線が釘付けだ。可憐(かれん)なポーズをユニは取る。その姿は姫様らしくファッショナブルで、高貴な感じがした。



「どう、ゆーまぁ? ユニの制服姿!」



「かわいいよ、いけてる」



「でしょ。でしょ」



ユニはゆーまの返事にやったと言った面持ちで、嬉しそうな顔をし、その場で無邪気に飛び跳ねた。



「超かわいいっす。ユニさん、こっち向いてぇ~」



明日希が、猛烈夢中だった。誰にも止めようがなかった。



「(あいつ、またビデオ回してる)」



もう、ふぅと溜息を付き、ゆーまは呆れ顔だった。



「先輩、あんな超可愛い子と一体、どういう関係なんですか?」



明日希はゆーまの両肩を手で握り、顔を近付けて、問い(ただ)した。



「あのなぁ、それがなぁ、複雑でなぁ」



右頬を指で()でながら、困惑した顔で、ゆーまはいう。(しゃべ)りたくない模様だ。



だが、その時だった。口を滑らす奴がいた。



「あたしは、ゆーまの許婚(いいなずけ)だよ」



「い、許婚(いいなずけ)ぇ! うそでしょ~?」



「ほんとだよ。ね、ゆーまぁ♡」



ユニが言う。ゆーまは、言いたくないことを言われ、嘆息気味だ。



「お、おん、まぁな」



ゆーまは仕方なく、溜息を付きながら返事を返した。



「先輩、いつから、女の子に手を出すのが、そんなに早くなったんです」


「て、違うよ。そうじゃなくてさ、あぁ、もう、説明するのがめんどい……」



明日希の問いに、ゆーまは、少し頭をムシャぼる。ユニが、ウフフと言った面持ちで不思議そうに見ている。明朗だ。ゆーまは、腕時計を見遣った。



「おい、もうチャイムが鳴るぞ。明日希、教室に帰らなくていいのか?」



「くそッス。ユニさんとのパラダイスの時間が……。先輩、またっす!」



教室の壁掛け時計を見遣り、明日希は飛び跳ねながら教室を去っていく。



「天使ッス♡」



「あほか(走りながら跳んで言ってる)ふぅ、あいつといると飽きないけど、デジビデ、デジカメ撮り(まく)るのは、困ったやつだな」



廊下を嬉しそうにはしゃぎながら、去る明日希を見て、ゆーまは、呆れ声で、ジト目で見遣る。ユニは、教室全体を首を振り見遣っていた。ちょこんと、ゆーまの傍にいた。



暫くそうしているうちに、チャイムが鳴った。生徒が皆、席に着いていく。







☆☆  ☆☆


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