第35話 VS”カオス化”モンスター
思ったよりも時間が掛かってしまいました。
”ネクサスセイヴァー”に変身した俺は、状況が状況だったので、すぐ近くにいた可憐の”絆”を受け取り、ベルトにはめ込み、可憐の”絆”の力を得て、戦闘準備が完了すると、”カオス化”したモンスターの前に立ちはだかった。
後ろでは、この場で唯一、俺が”ネクサスセイヴァー”に変身する事を知らない”魔女”が「えっ?えっ!?”ネクサスセイヴァー”って?!あの”絆の救世主”の!?新たな”絆の救世主”が訪れていたの?!」と大騒ぎし、華仙彩花やレイナに問い詰めているのが聞こえてくるが、今は無視である。
が、”魔女”の金切り声が”カオス化”したモンスターを触発した様で、サンドワームの下半身を大きく引き、そのまま身体のバネを利用して突き出すと、そのまま勢いよく俺に突撃し、蝙蝠顔の左右についているサンドワームの牙を突き出した。
『!?』
しかし、俺はそれを両腕でそれぞれの牙を難なくつかみ取り、足にも力を入れてその場に踏みとどまり、モンスターの動きも止めた。
この事に目の前のモンスターだけでなく、後ろの何人かからも驚いた気配を感じながら、俺は牙を掴んでいる両手に、より力を込め、そのまま掴んでいた牙を握り潰した。
そして、そのまま無防備のモンスターの顔面に拳を叩き込むと、その威力でその巨体を大きく宙に浮かせて吹き飛び、地面に叩きつけられると悲鳴のような叫び声を上げながらのたうち回った。
そのまま止めを刺そうと軽く跳躍し、モンスターの顔面にもう一度、拳を叩き込もうとしたところで、蝙蝠サンドワーム融合モンスターは、サンドワームの下半身を鞭の様にしならせながら、俺のがら空きの右横に叩きつけて、今度は俺が吹き飛ばされた。
「うわ!」
咄嗟に右上で防御して受け止めたので、右腕に衝撃とそこそこの痛みが走り、少し痺れが残る程度で身体にはダメージはなく、吹き飛ばされて地面に叩きつけられた時も、何とか受け身をとれたので、そのままの勢いで立ち上がり、”カオス化”したモンスターを見据えると、モンスターの方も既に立ち上がっていた。
怒りを含んだ咆哮で俺を威嚇してくる。しかし、俺が全然怯んだ様子がないから、いら立っている様に感じる。
こんな化け物にも多少の判断できる程度の知恵はあるらしい。
それにしてもこのモンスター、攻撃する相手は俺以外にもいっぱいいる上に、”装甲列車”と言う大きな目立つ攻撃対象もあると言うのに、それには目もくれず、俺だけを狙っている。
華仙彩花も”ネクサスセイヴァー”に変身した俺が一番、効率よく戦えると言っていた以上、”カオス化”したモンスター、強いてはそれを生み出す”カオスワールド”と呼ばれる第三の世界と”絆の救世主”には何らかの因果関係があるのだろう。
俺がそんな事をチラッと考えてると、”カオス化”したモンスターが次の行動に入った。これ以上、俺を威嚇しても無駄だと悟ったらしく、もう一度大きな声で一鳴きすると翼を大きく広げて羽ばたかせるとその巨体を難なく浮かせ、それなりの距離まで飛んだところで動きを止めると、俺に向けて大きく口を開いた。
何をするつもりだ?と警戒しながらモンスターを見ていると、口の中が振動し始め、次の瞬間、身体に悪寒が走り、俺は思わずその場から駆けて逃げた瞬間、俺のいた場所に大きな窪みが出来、周りの石も粉々になった。
「!?マジかよ?!」
それを見て思わず叫んだが、あのモンスターは多分、蝙蝠型のモンスターの部分もあるが故、蝙蝠に備わっている超音波を出す能力を利用した破壊音波を出してきたのだろう。
”カオス化”したモンスターは次々と目には見えない破壊音波を放ち、俺はそれを勘で何とか躱しているが、このままではヤバい!!
と言うか、可憐や真心は別として華仙彩花やレイナ、アレンは見ていないで見ていないで、少しは手伝えよ!!と思いながら可憐達を見ると、可憐や真心は何が起きたか理解できていない様にポカーンとした表情をしており、華仙彩花やレイナ達は構えをとっているが、困惑した表情をしている。
そこで俺は気付いた。
華仙彩花やレイナ達は協力しないのではなく、協力したくても出来ないのだ。
理由は単純、変身した俺と”カオス化”したモンスターは、はたから見れば実は高速で動いており、これまでの戦闘でも俺にとっては既に5分以上の体感時間があるが、可憐達から見たらまだ3分も経っていないのである。
そりゃあ、援護したくても出来んわな。俺は思わず苦笑してしまったが、状況は全然良くなっていないので、笑っている場合でもない。
間一髪、俺はまたモンスターの破壊音波の攻撃を躱したが、今回は避けた時に砕け散った岩の破片が俺の方に飛んできた。
まぁ、もっとも今の俺にとっては受け止めるのは問題ないので、難なく3つの岩の欠片を受け止めたが、こっちは躱す事しか出来ないのに、一方的に遠距離攻撃してくるモンスターに対して怒りが混みあがって来ていたので、受け止めた欠片は丁度良いと思い、腹いせも込めて一つ、モンスターに目掛けて勢いよく投げてやった。
「?!」
物凄い速さで飛んできた握り込めるぐらいの岩の欠片に、慌てて避けるモンスター。その巨体でその俊敏さには少し驚いたが、透かさず二つ目の欠片をサンドワームの下半身と蝙蝠の胸部の境目の腹部あたりに投げつけ、
「!!」
これは躱すことが出来ず、直撃すると相応の威力があったらしく悲鳴を上げる事も出来ずに、口を大きく開けながら、その巨体をぐらつかせ、墜落し掛けた。
その隙を狙って、最後の欠片を蝙蝠の胸部に目掛けて投げ、見事に直撃した。
今度は悲鳴を上げながら欠片がぶつかった時の痛みと衝撃で浮いている事が出来ず、そのまま勢いよく地面に墜落した。
今がチャンスなので俺は”カオス化”したモンスターに駆け寄り、そのまま跳躍して倒れているモンスターの頭部に勢いよく拳を振り降ろした。
さすがに今度は防ぐことが出来ずに次の瞬間、モンスターの頭部は粉々に砕け散り、残った身体もまもなく消滅した。
戦いが終わり、可憐達を見ると先程と変わらず、可憐と真心はポカーンと間抜け面を晒しているが、華仙彩花やレイナ達は安堵した表情になっている。
取り合えず、危機は去ったので一安心だ。ちなみにこの戦闘、体感時間では10分ぐらい戦っていた気がするんだけど、実際は5分も経過していないと言うのだから、何というハイスピードバトルだったのだろう。
そりゃあ、この戦闘が早すぎて見ることが出来ない可憐と真心はポカーンとなるのも納得だわ。