第27話 アンソン村が襲撃されるですと?!!
「風邪」で体調を崩したりもありましたが、何とか思っていたところまで書けたので、投稿します。
あれから3日経過した。
その間、修行としてした事は華仙彩花の設置した魔方陣(やっぱりあった転送装置!)で塔の一階に転送され、
それから半日かけてまた60階まで上がり(その途中、仕掛けはとにかくとして出てくる敵が配置が換わっていたり日に日に微妙に強くなったりしている)、
その後はアレンと3人がかりで戦い(と言っても実際は俺達三人ぼこぼこにされてばかりで、その都度、回復魔法を掛けられては戦わされる地獄のルーチンワーク)、
夜に華仙彩花から多少、この世界の事(と言っても一般常識程度の知識を初日に聞いた後はエルサリア聖国とアークロンド帝国の事ばかり)、
これがこの3日間の俺達のサークルだった。
とは言えたった3日しか訓練していないので、何かが劇的に変わったかと言うと大いに疑問である。
精々、この塔に来る前よりも警戒心や注意力が多少上がった事、敵と戦う時も多少は考えながら戦う様になった事、アレンのような格上の敵と戦う時、多少は格上特有の圧や気迫に抵抗がついた事ぐらいである。
あれ?と言う事は多少はマシになったと言う事か?
それ以前に俺が唐突にこの3日間の事を語っているかと言うと、4日目の朝しかも明朝ともいえるまだ6時過ぎである今この時、俺と可憐と真心は塔を出ており、アンソン村に向かって駆けていたのである。
「はぁ、はぁ、ね、ねぇ、光君、す、少し休憩しようよ。わ、私もう走れない。」
「ぜぇ、ぜぇ、わ、私もこ、真心ちゃんに賛成だよ。も、もう、足がもつれて来て・・・。」
「はぁ、はぁ、そ、そうだな。ぜぇ、ぜぇ、お、俺も疲れて・・・。」
しかし、急いでに行かねばならないとはいえ、今まで長距離を走る練習なんてしていなかった俺達は30分程走り続けていたらもうばてていた。
休憩すると決める前に俺達はその場に崩れ落ちる様に座り込んだ。
ぐったりしている可憐と真心をよそに、俺はぼんやりと約一時間前の出来事を振り返った。
4日目の朝となる今日も、いつの間にか寝ている俺の横に座って「起きなさい」と言う華仙彩花の掛け声と揺さぶりで起こされると言う流れになるかと思っていたら、朝早くの5時ぐらいに布団をはぎ取られ、叩き起こされた。
可憐と真心も布団から放り投げられ叩き起こされる。
思わず抗議の声を上げようとしたところ、華仙彩花は強い覇気と威圧感を放ちながら俺達を見据え、
「あなた達にとって無視することが出来ない事態が起こりました。」
「無視することが出来ない事態?」
「レイナ=アレクレアがユズハ=アベノと共に、エルサリア聖国軍に追われながらアンソン村に向かって逃げています。」
華仙彩花の言葉に俺達は目を見開いた。
「そ、それ、どういう事ですか!?」
俺が聞く前に可憐が尋ねた。
「領主であるイリナ=アレクレアの捕虜にしている行為が聖国に知られたからです。」
「捕虜?している行為?」
いきなり出て来た単語に俺だけでなく可憐も真心も頭に?が浮かんだ。
「エルサリア聖国が西のアークロンド帝国と200年、戦争をしている事は話しましたね。」
「はい」
「それ故、両国とも敵国の兵や国境付近の村に攻め込み捕らえた民を捕虜として自国に連れ帰り、国内の罪人と共に強制労働や魔法や技術の実験体にしているのですが、帝国よりも聖国の方が捕虜に対しての扱いが過酷なのです。」
『・・・』
「イリナ=アレクレアはそれに思うところがあったのか、一番、アークロンド帝国に近いと言う事もあり、聖国に秘して罪のない敵国の村人、特に女性子供と言った一部の捕虜を帝国に返していたのです。」
「・・・それって良い事なんじゃないですか?」
「そうですね。人道的に見てイリナ=アレクレアのしている事は正しい事と言えるでしょう。しかし聖国は聖王エデンに対する信仰が根幹をなしている宗教国家の面が強い国。特にアークロンド帝国は邪教の国として敵視しており、その国民に対しても過酷な誅罰を下す事で罪を償い更生させる事が正しいとされています。そんな聖国で無断で捕虜を帝国に返す事は重大な背徳行為とみなされます。」
エルサリア聖国のいわゆる裏側事情を聞かされ俺達は顔を引きつかせた。同時にこの世界に来た初日、俺がネクサスセイヴァーに初めて変身して戦った後、イリナ=アレクレアの一団にエルサリア聖国に連れて行かされそうになった時、きっぱりと断ってよかったと思った。
とてもじゃないが、聖王エデンを信仰して戦う事なんて俺には出来ないし、可憐や真心もそうだろう。いつかは聖国内でも居心地が悪くなっていた筈である。
しかし、聖国内でもかなりの地位のイリナ=アレクレアが、聖王エデンを盲信しておらず、捕虜に情けをかけていたなんてそれもそれでびっくりだった。正直、少し見直した。
「領主が住んでいた街はすでに聖国軍の手によって焼き払われており、イリナ=アレクレアと長女のティナ=アレクレアの生死も不明です。聖国軍はアレクレア領内にある村を全て封滅させる様で、レイナ=アレクレアとユズハ=アベノを追うのに部隊の半分を差し向け、残り半分はそれぞれが領内にある村へと向かい分かれています。」
その話を聞いて今度は絶句した。エルサリア聖国軍はアレクレア領に住む領民全てを背徳の徒として殺すつもりなのだ。
思わず俺は立ち上がった。
「じゃ、じゃあ、このままレイナ=アレクレアと手下がアンソン村に辿り着き、それを追っている聖国軍がやって来たらー」
「間違いなくアンソン村も滅ぼされるでしょう。」
『?!』
華仙彩花の断言に可憐も真心も顔を固まらせた。
「ど、どうしよう光君!?」
「お、お兄ちゃん、このままじゃコレットちゃんや村の人達が殺されちゃう!!」
半泣きの表情で俺に問うてくるが、俺としてもどうしたら良いか分からないというのが本音だった。と言うかレイナ=アレクレアはどうしてアンソン村を目指したんだ!?俺にはそれ自体が分からない。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。
「だったら助けにいくしかないだろう。」
「え、今から!?」
「それしかないだろうが!!」
「ま、間に合うの・・・?」
いちいち尋ねてくる真心に思わず「俺が知るか!!」と返した。そんな事、俺の方が知りたいわ!!
「で、でも、私とお兄ちゃんと真心ちゃんの3人で行っても、村の人達を助けられるの・・・?」
『・・・』
今度は可憐が尋ねてきたが、それに対しては俺だけでなく真心も黙った。
つい、勢いで助けに行くと言ってしまったが、確かに俺達3人が行っても助けられるとは思えない。俺がネクサスセイヴァーに変身し、可憐か真心の絆の力を借りても、軍隊相手に何処まで戦えるか・・・。
元の世界で読んだ過去のネクサスセイヴァー達の活躍と思われるラノベでは、万の軍隊を相手でも返り討ちにする強さを見せつける場面もあったが、どれもそれぞれの物語においても終盤の話であり、序盤ではそこまでの強さはない。
当然、俺も現段階では変身しても、そんなに圧倒的な強さはない。助けに行っても村を助けるどころか逆に俺達が殺される可能性がある。
いや、その前に今から助けに向かったところで、間に合うかどうかも分からない。
俺はどうしたらいいんだろう。悩んでいる所に華仙彩花が尋ねて来た。
「どうするのですか天道光?」
「どうするってどうしたらいいんだ?と言うかどうしてあなたはこの事を俺達に告げたんだ?」
「・・・ここで黙っていてもいずれは知れる事。その時に何故、教えてくれなかったと言われたくも無いので教えたまでです。それとどうしたらよいのか?と問いましたが、それもあなたの決断1つです。あなた達の思案している通り、助けに行っても助けられない可能性が高いでしょうし、そもそも今から向かっても間に合わない可能性が高い。逆に行かない決断をしてもあなた達はアンソン村を見捨てたと言う罪悪感と後ろめたさをずっと背負う事になるでしょう。」
「どちらを選択しても私達の望む事にはならないと言う事ですか?」
「そうです。どちらを選択しても望む展開にならない以上、後はどちらの決断があなた達にとって納得できるかどうかです。覚えておきなさい。これから先、このような決断をする事が何度も訪れる事になります。今回の決断がその最初であると言う事です。」
真心の問いにそう答えると華仙彩花は俺達に決断を促してきた。
どうするか悩んだ末、行っても助けられない可能性が強く、勝てるかどうかも分からないから行かないと言う考えに傾きかけたところで、ふと、アンソン村の事が頭に過った。いたのは数日だが、色々、世話になったのも確かであり、そう再認識できた瞬間、決断できた。
「・・・二人とも助けに行こう。」
「・・・助けに行くの光君?」
「ああ、数日とは言え色々と世話になったのも確かだからな。見捨てたら物凄く罪悪感が出るだろうし・・・。」
「でも、私達3人で助けられるの?変身したお兄ちゃんでもどこまで戦えるか分からないし・・・。」
「でも、俺達だって色々と助けられたアンソン村の人達を見捨てたら、後々まで後悔するだろ?」
「・・・それはそうだけど・・・。」
「だったら、行くだけ行ってみよう。後はその場で臨機応変に対応するしかない!」
まさに行き当たりばったりだが、他に方法がない以上、それで行くしかない。決断を決めた俺は数日間、世話になった仙女に振り向き、
「そう言う訳です。数日間、世話になったのですが、俺達はアンソン村に戻ります。」
「あなた達がそう決断した以上、私に止める理由はありません。行きなさい。」
「あの、彩花先生、数日間お世話になりました。色々とありがとうございます。」
「彩花先生、数日間、色々とありがとうございます。これからどうなるか分かりませんが行ってきます。」
「はい、後はあなた達次第ですが、また会いましょう。」
最後の物言いに、俺は何だか引っかかるモノを感じたが、俺は、俺達はそのまま寝ていた部屋を飛び出して最下層である1階へと転移できる魔方陣に飛び乗り、一階に転移するとそのまま数日ぶりの外に飛び出し、そのままアンソン村へと駆け出した。
ぼんやりと約一時間前のやり取りを思い出していたら、そこそこの休息していたらしく、先ほどに比べて息切れが収まっていた。
「そこそこ休んだので、そろそろ行くぞ!!」
「あ、うん!」
「あ、はい!」
真心も可憐も同意して立ち上がり、俺達はまたアンソン村を目指して駆け出した。
それからまた途中でへばったりして少し休憩し、しばし休んでまた駆けてを繰り返し、完全に夜が明けた7時過ぎぐらいに俺達がアンソン村に近づき、遠方にアンソン村が見えてきたが、数日間にモンスター達に襲撃を受けた時の様に、また、あちこちから黒煙が立ち上っているのが見えた。
「光君!!」「お兄ちゃん!!」
黒煙が上がっているのを見て真心と可憐が叫ぶ様に声を上げて俺を見た。華仙彩花が言った様にやっぱり間に合わなかったみたいだ。
とは言え、このまま曲がれ右する訳にもいかないので、そのまま村へと駆けて入ると、先日のモンスター達の襲撃の様に、あちこちで火の手が上がり、村人達の亡骸があちこちにあった。
そして前方の村の広場において、白色の鎧に身を固め、それぞれ剣や槍、斧と言った武器を手にしたエルサリア聖国軍と思われる無数の軍勢と、俺達に背を向ける形で、武器を構えてそれに対峙するレイナ=アレクレアとユズハ=アベノの姿があった。
こんな季節なので、皆様も体調にはくれぐれもお気をつけください。
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