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ネクサスセイヴァー  作者: 謎の生物
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第17話 これが一日、一善と言うやつか・・・?

掛かった時間の割に量は短いです。

 不機嫌な可憐と真心に内心、ヒヤヒヤしながらコレットに頼まれた通りに、彼女と同行し、コレットが生き残ってはいるが、村の惨状とこれからに対しての展望が見えない事からの絶望故に、放心している村人達に声を掛け、時に励まし、時に叱咤し、場合によっては気合を入れるためと称して、それでも愚図る村人の顔面に拳を叩き込んで、無理矢理立ち上がらせる姿を側で最後まで見守った。


 べ、別に愚図る村人の顔面に拳を叩き込んでいる時のコレットにビビッて何もしなかった訳じゃないんだからな!!

 まぁ、可憐も真心もその時のコレットにはドン引きしていたが・・・。


 村の人達も、この時は引き攣った表情になっていたから、この世界特有のモノだとは思わないが・・・この世界特有の行動じゃないよね?


 それからコレット達は生き残った村人全員と、これからどうするかを日が暮れるまで話し合い、結果として村の復興をする事で決まったが、それとは別に村がまたモンスター達に襲われた事も領主であるイリナに伝えねばならないので、使いを出す事も決定した。


 取り合えず、村人達の方針も決まり、日が暮れた事もあるので、その日は解散となった。

 

 しかしその後すぐに、俺が倒したモンスター達の亡骸や肉片は、この周辺に出没するモンスターの中では上質のモノばかりなので、手に松明を持って村人達は手分けしてモンスター達を手際よく解体し、薬や武器の材料となる素材と、食べられる肉に分けてしまった。

 

 見ている俺達が感心するぐらいで真心なんかは「ほへ~。」と間抜けな声を出すぐらいである。まさにこれこそ職人の技と言うべきかもしれない。


 それ以前に、モンスターの撃退後の村人達からは考えられない程、皆、精力的に活動しているので、そのギャップに戸惑わざるをえない。

 案外、そこら辺の切り替えの早さは、こういう危険な世界で生きているからかもしれない・・・。

 

 仮にもし、可憐や真心、そして行方が分からない愛ちゃんが殺されて死ぬ事態になり、そのままその相手と戦う事になった場合、この村の人達の様に、戦うと決めたら迷わず戦えるのだろうか・・・?

 十中八九、無理だろう。そんな事態が今の俺達の状況では十分に起こりえる事に、俺は思わず震えてしまった。

 可憐と真心は、村人達の行動に気を取られて、気付かなかったが、果たして俺はこの世界で最後まで彼女達を守り通せるのだろうか・・・?


 俺は村人達の行動が終わるまで、ずっとその事で葛藤する事になった・・・。




 「”絆の救世主”様、此度も村をお救い頂き、誠にありがとうございました。」


 モンスターの解体が終わったところで、村長が礼を言って頭を下げて来た。


 「あ、いや、村に入って来たモンスターは全て殲滅したけど、犠牲になった村の人達も多いみたいだから、こっちも声高々に村を救ったとはいえないので・・・。」

 「いえ、我々、村の者からしたら、あれだけのモンスター達を全て瞬く間に殲滅していただいただけでも感謝が絶えませぬ。」

 「は、はぁ、そうですか・・・。」


 村の人達は取り合えず納得しているみたいなので、俺がこれ以上、何か言うのもお門違いだと思ったので、俺も納得する事にした。

 そこに村長が躊躇いがちにも、


 「あの、その上で、このような事をお頼みするのは心苦しいのですが、”絆の救世主”様が討伐されたモンスターの肉の半分を我々に分けてくださらないでしょうか!!」


 そう言って村長は俺に土下座してきた。村長だけでなく、その場にいた村人達も一斉に土下座した。コレットまで土下座をしている。

 いきなりの村人達の頼み事と、その態度に俺だけでなく可憐と真心も驚きながらも、頭をこすりつけて必死で「お願い致します!!」と懇願してくる村人達に、その代表の村長に説明をしてもらう事にした。


 それによるとモンスターの襲撃で村に蓄えてあった食料の大半が焼け、食料不足の状態となってしまったそうである。


 無論、領主であるイリナには、食料不足の事も伝え、イリナ自身もそれを聞いたら、ちゃんと不足の食料も持ってきてくれるそうだが、使いの者が領主の元に着くにもどんなに急いでも人の足で行く以上、次の日になるだろうし、イリナもその報告を受けて物資を用意するにもすぐに集める事が出来る訳ではないから、どんなに急いでも1~2日掛かり、さらに村に来るまでまた2日ぐらいかかるそうである。


 「わし等も年寄りも含めて男衆も物資が届くまで食料は切り詰めるつもりですが、子供や乳飲み子を抱えている母親には、そこそこの食料を優先的に回さねばならないのでですが、今、村に残っている食料ではそれは難しいのですじゃ・・・。」


 それ故に俺=ネクサスセイヴァーの倒したモンスター達の肉を半分でも回してもらえると食料問題がいくらか改善されるらしい。


 俺としてはこれから尋ねようとする仙人への手土産の分だけあればよいのだから、別に肉を全部あげてもいいのだが、可憐と真心はどうかと思い、彼女達の方を見ると二人とも俺の意図を察し、


 「私は別に良いと思うよ。仙人に会った時に渡す菓子折り替わりの分のお肉さえもらえたら。可憐ちゃんはどう思う?」

 「私も真心ちゃんの言葉に賛成。そもそも、私達がお肉を手に入れようとしていたのは、帰る方法を知っているかもしれない仙人へのご機嫌取りのためだから・・・。でも私達が貰うのは一番上質で、一番美味しい部分をください。」


 二人の意見を聞いて俺は頷き、


 「と言う訳で村長、モンスターの肉は全部あげるから仙人への手土産の分だけ俺達にください。」

 「は、はい、畏まりました。ワシ等の願いを聞いて頂き、誠にありがとうございます!!」

 『ありがとうございます!!』


 村長は俺達の言葉に目を潤ませながら丁重に頭を下げて礼を言い、コレットを始めとした村人達も皆、頭を下げて礼を述べた。


 何かこういう光景を見ると凄く良い事をした気分になるな。とは言っても昨日、今日とすでに二度も村を襲撃してきたモンスターを撃退しているので、実際のところはもの凄く良い事をしているのだが・・・ふむ、これが一日、一善と言うやつか・・・?

こんなに時間が掛かった割に、これだけとは我ながら情けなくなってくるぜ・・・。

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