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ネクサスセイヴァー  作者: 謎の生物
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事の発端

 ふと思いついたものを少し考えて書き上げたのが、この物語です。

 異世界ヒーローモノとして楽しんでもらえたら嬉しいです。

 「お前は特別な力を持った存在だと言われたら信じるかしら?」

 

 俺、天道光てんどうひかるは、部室でのんびりとあるラノベを読んでいると部屋にもう一人いる目の前の背中まで伸ばしている長い髪にパッと見ただけでも分かる大きな胸が特徴の長身美麗で美少女、姫島静ひめじましずかのいきなりの質問に思わず「はぁ?」と返した。

 

 彼女、姫島静は俺達の通っている私立エルサリア学園の1つ上の先輩で今現在三年生だ。そして俺と妹の可憐かれんを含めて部活と認められる最低人数5人で運営されている第二文学部の部長でもある。


 第二文学と付いている様に、ちゃんとした活動をしている文学部と比べて、この第二文学は活動内容はネット小説を書いたり、同人誌を書いたりといい加減な活動しかしていない。

  それなのに部として認められているのは部長である姫島静の”力”の為である。彼女は学園の理事長の血縁者で、学園内でも多大な権力を持っており、皮肉も込めて学園の影の支配者とも言われているぐらいである。

 

 性格は悪い人ではないが、尊大で上から目線の話し方をするので、嫌っている人も多いが本人はどこ吹く風である。

 案の定、俺の返答に姫島部長は阿保を見るような目で俺を見、


 「阿呆面をさらしながら、阿呆な返し方をしないで、さっさと答えなさいな。」


 ときっつい返し方をしてきた。いささかムッとしないでもなかったが、それで文句を言ったところで、逆にもっと返ってくるだろうから、俺は質問に答える事にした。


 「いきなりそんな事を言われても、喜べるような性格はしてないですよ。」

 「つまらない反応ね。まぁ、逆に大喜びされていても、お前馬鹿ねと言っていたでしょうが。」


 俺の言葉に部長はつまらなげに答えたが、いやあんた、それだとどちらの反応をしても嘲りの言葉が返ってくるんじゃね?

 そう思いながらも俺はこの部長がいきなりそんな質問をする事に疑問を持ったので、その事を尋ねてみるととんでもない返答が返って来た。

 

 「そうね。お前にだけは言っておこうかしら。私はここ数日の間に異世界に行く事になっているの。」


 先輩って中二病だったのか・・・。俺のそんな心中を読み取ったのか、


 「別に中二病でもなんでもないわ。真面目な話よ。その世界に行ってやらなければならない事があるからよ。そもそも、この異界扉町いかいとびらまちは昔からそんな伝承が多くあるでしょうが。」


 先輩の言葉に俺は前者はともかくとして、後者に対してはああ、成程と思わなくもなかった。


 俺達の住んでいる異界扉町いかいとびらまちは大昔から失踪や行方不明者が多く、その上、この街は異界との境であり、異世界と繋がっていると言う伝承も大昔からあり、失踪や行方不明者の何人かは異世界に行ったと言う伝承も大昔からあるのである。

 実際、一年前の俺が一年だった頃にも当時の生徒会長と書記が行方不明となっており、その時も彼らは異世界へと行ったという噂が学園内だけでなく、街中でも大きく飛び交い、今でもその噂は話題に出るほどである。

 そう考えたら、この街はそう言う伝承が今も真面目に語られる迷信深い街ともいえるかもしれない。


 「そういう訳だから、天道、お前と、お前を含む部員たちと顔を合わせるのも当分ないわ。」

 「当分ないと言う事は、部長の言葉を信じるならば、またこの世界に戻ってくると言う事ですか?」

 「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。」


 部長は肩をすくめながら、苦笑しながらそう返してきた。しかし俺にはそれがどういう意味か分からなかったので思わず尋ねた。すぐに尋ねなければよかったと思ったが・・・。


 「どういう意味ですか?」

 「私が戻ってくるんじゃなくて、お前達が、正確にはお前がこっち・・・に来ると言う事よ。」

 「いや、それは無いですよ。」

 

 俺の即答に部長は少し面白くなさそうに鼻白んでから、


 「いいえ、そうなる可能性は大いにあるわ。先程言った様に、お前は特別な力を持った存在だもの。」


 部長の言葉に、今度は俺が内心でだが、またそれかと鼻白んだ。


 「今はいいわ。信じなくても。でも天道、お前は特別な力を持っている、この事だけは忘れないで。」


 部長はとても真剣な表情で俺にそう言い、そんな部長の様子に俺は少し気圧されてたじろいでしまった。

 息も詰まるような雰囲気の中、俺のスマホの着信音がなり、それによって空気が弛緩し、手に取ってみてみると相手は義理の妹の可憐からだった。

 電話に出ると


 「お兄ちゃん、今、部室?」

 「ああ、部長と一緒だ。可憐は今から部室に来るのか?」

 「ううん、行くつもりだったんだけど、ホームルームが遅くなったのと急な掃除当番で遅くなっちゃった上に、今日はスーパーの全商品10%引きの日だから、このまま私はお買い物に行くね。」

 「あ、そうなの。だったら俺も手伝うわ。カート引いたり、荷物持ったりぐらいできるから。」

 「えっ?いいの?」

 「ああ、だって俺達は二人だけの兄妹なんだから、こういう時は助け合わないとな。」

 「ありがとうお兄ちゃん。じゃ、正門の前で待ってるね。」


 電話を切るとニヤニヤとしながら部長が声を掛けて来た。


 「あらあら、可愛い妹のために一緒にお買い物だなんて、良いお兄ちゃんをしているじゃない。」

 「・・・否定はしませんけど、いま、可憐に言った様に俺達は二人だけ兄妹なんだから、こういう時、助け合うのは当然じゃないですか。」


 部長に言った様に、俺達には両親がいない。お袋は俺が小さい頃に、親父も2年前に事故で亡くなっている。

 ただ、親父の残してくれたそこそこの遺産や生命保険のおかげで、今の事はやっていけている。


 俺達の状況を知っている部長は、俺の言葉を聞いて「それもそうね。」と少しだけ優しい表情になった。

 いつも、そんな表情をしていたらーもっと校内でのファンが増えただろうになーと思いながら俺はリュックに筆箱などの荷物を入れて肩に掛けて立ち上がった。


 「そういう事なので部長、俺は帰りますね。」

 「ええ、分かったわ。」


 部長に一声掛けて俺は部室を出ようとしたところで、背後から部長の声が掛かって来た。


 「天道」

 「はい?何ですか部長?」

 「先程の話、忘れないでね。また会いましょう・・・・・・・・天道。」


 振り返って部長を見ると、まるで別れを言う様な表情で部長はそう言い、俺は部長のその様子に釈然としないながらも「う、うす、ではまた。」と部室を出た。

 帰りの道中、部長の事が頭から離れず、可憐からも心配された。


 そして、それから三日後、部長、姫島静は行方不明となり、校内を騒がす事となった。


 後に俺、天道光は思う。

 この姫島静との会話とその後の失踪こそが、俺達の命を懸けた異世界での大冒険、そして俺がその世界で”絆の救世主”-ネクサスセイヴァーーと呼ばれる存在となり、多くの戦いを駆け抜けていく事になる全ての始まりだったと言う事を・・・。

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