表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
されど彼らはダンジョンに挑む  作者: 新増レン
第一章 「夢幻の探求団」
6/47

第一章5 『仲間を集めよう!』

 

 憧れの存在と対面したメアリだったが、鮮烈すぎる初対面に、居候先に戻っても頭を悩ませていた。


「んー、啖呵を切ってしまったけど……今考えると、物凄く失礼な言葉ばっか並べてたんじゃないかなぁ……。あぁ~~~~」


「ちょっと、帰ってきて早々に変な声上げないでよ!」

「あ、ごめん」



 メアリはひとまず、仲間を集めることにした。

 最低でも四人。そして最多でも四人。

 メアリは六名以上の団を結成する気はない。

 それは、黄昏の探求団がそうしたように、少数精鋭というものに憧れているからだった。



 彼女は現在、シェアハウスで暮らしている。

 探求団を結成した際には宿舎を借りられるが、今はまだ僧侶になっただけにすぎず、契約すら不可能だ。

「つーかさ、あんたまだここに居候する気? そろそろ金取るわよ」

「冷たいなぁ。私達の仲じゃない」


「最初っから初対面だったんだけど。あの夜、扉をうるさく叩いてきたあんたの事情を聴いて、あんたがすぐに出て行くって言うから泊めてやってんの」


「あはは……ごめん」

「まったく、僧侶の修業期間が終わってみればこれだもん。だから言ったでしょ? 勢いだけで探求者なんかになるなって」



 探求者は、夢を追うようなものだった。

 しかも、命を懸けて。

 当然、探求者にならない者もいる。そうした人々の方が割合的には多い。探求者となっても、稼げない人達はすぐにやめてしまうらしい。

 しかし、探求者の存在は嫌われているわけではない。

 ダンジョンにしかない材料や史料を持ち帰り、人々の生活に役立っている。探求者の収入は、そうした珍品の取引にのみ発生するのだ。



「あのさ、ものは相談なんだけど」

「断る。どうせ、探求者やらないかってんでしょ? ありえない。見ず知らずのあんたを泊めてやってんのに、人生まで面倒見らんないっての」

「だよね」

「そもそも、あんた、仲間にはあてがあるって言ったでしょ?」


 同居人(居候させてくれたアラサーの女性)は訝しげに見てくる。

「言ったよ。今日会ってきた」

「それで?」

「フラれた」

「……ま、男なんてそんなもんよ」


「何でわかるの?! 相手が男の人って言ってないのに!」

「経験よ。経験。何年独身のアラサーやってると、思ってんよ……くそ」


 そう言って彼女は少しだけ涙ぐんだ。

「とりあえず、今は仲間を探さないと。あのさ、もう少しだけ居てもいいかな?」

「い……いいに、決まってんでしょ? ここまで面倒見たんだし、一日も一か月も変わんないわよ」

「ありがとう!」



 翌日――。

 とりあえず、メアリはビギナーブックを頼ることにした。


「なになに? えぇと『仲間を求めるのなら仲介所に走れ! 仲介所は各国どこにでも存在するぞ。ただし、正規の仲介所を探すこと! これ重要!』かぁ……確か仲介所って」


 ビギナーブックを閉じて地図を開く。

 ちょうど今いる広場から少し歩いた先に仲介所があった。

「よし! 行ってみよう」


 メアリは迷わず歩き出し、遠くに見えた仲介所に入っていく。

 ギギィ。カランコロン。


「おう、いらっしゃい。受付はこっちだぜ」


 仲介所は簡素な造りの酒場で、受付のダンディな男性が一人と、テーブル席には探求者と思える人が大勢いた。

 男性に呼ばれてそちらを目指すと、他の者の視線を集める。

 しかしメアリは、彼らの射殺すような、舐め回すような視線に気づくこともなく、ズンズンと受付に歩いていった。



「よう。探求団を作るのか? それとも探求団を捜してんのか?」

「あの、仲間を募りたいんですけど」

「オーケー。じゃあ、要望と条件、それからお嬢さんのクラスを教えてくれ」

「えっと、僧侶です」

「ほう。僧侶で団を作る気なのか。なかなか面白いじゃねえか。そいで、条件は?」

「それはですね――」



 メアリが条件を口にすると、酒場が静まり返り、オーナーの男も一瞬たじろいだ。

 それから彼はニヤリと笑い、「オーケー」と言ってメアリの要望を書き連ねていく。


「今日から貼っておく。この条件を呑める奴がいたら、待機するように言っておいてやるよ。そうだなぁ、数日後にまた来てくれ。その時までに集まっていれば紹介するぜ。あぁ、それと、仲介料についてだけど」


「いくらですか?」

 メアリが訊ねると、オーナーは首を横に振る。

「初回はいい。次回、利用する時があれば、払ってくれ」


「そうですか? ならお言葉に甘えて……でも、次回はないですよ。条件通り、私は六人でしかダンジョンに挑みませんから」


「……はっはっはっは!!」

 その言葉に、オーナーは大声で笑った。

「何ですか?」


「いいや、すげえこと言う奴が現れたなって思ってさ。……そうかい。ますます面白いじゃねえか。最近は、あんたみたいな奴らが減っていてなぁ。正直、つまんなかったんだ」


「私もです」

「へぇ、あんたもその口か。……名前は決めてんのか?」

「名前、ですか?」

「探求団の名前だよ。折角だから、あんたの名前と一緒に憶えておこうと思ってな」

 そう言われ、メアリは満足げに微笑み、決めてあった団の名前を口にする。


「夢幻の探求団です!」


 迷いなく答えたメアリは、そのまま仲介所を後にした。



 メアリが去ってから、オーナーは彼女の要望と団名を掲示板に張り付ける。

 しかし、一部始終を見ていた者や、試しに条件を見た者は、誰一人としてオーナーに名乗り出ることはなかった。


「(ま、仕方ねえか。保身の連中にとっちゃ、あの名前は刺激が強いからな。……しかし、あの男の技量や力は、放っておいていいもんじゃねえ。何度か、大手の団が引き抜き交渉したって噂があったが、誰よりも先に嬢ちゃんが引き入れたってことか?)」


 新聞を広げ、オーナーは一息つく。

「(まあ、なんにせよ面白そうだ。果たして、あんな条件に賛同する奴が現れるかどうか)」



 ギギィ。カランコロン。

 一息つこうとしたのも束の間、客が入ってきた。

 深い海色の髪をなびかせる眼帯を付けた美女。佇まいから、凛とした雰囲気を纏っている。

 見る限りでは戦士のクラスで、剣を腰に差し、鎧を着こんでいる。高身長でスタイルの良い美女で、周りから声をかけられてる。

「(ありゃあ、かなりの腕だな。何の用やら)」


「いらっしゃい。団を作るならこっち。入るならそっちの掲示板だ」


「ふむ、そうか。礼を言う」

「あ、ああ」

 礼を言われて虚を衝かれたが、彼女は掲示板に足を運んでいった。

 すると驚いたことに、先程貼ったばかりのものに目が釘付けで、しばし凝視した後、こちらに歩み寄ってきた。

「どこか、いい場所があったのか?」


「ああ。夢幻の探求団という探求団に興味がある。いいだろうか?」


「……構わんよ。あんたが第一号みたいだ。ここにサインを。それと、この日にもう一度足を運んでくれ。団長を呼んである」

「うむ。了解した」

「(まさか、こんなにあっさり賛同者が来るとは)」

 女性はサインを書き残し、説明をした後に去っていった。



「(意外と、あっさり決まりそうだな)」

 そしてオーナーの予想通り、他の希望者も集まり、三日で希望の四名が集まった。

 ちなみに彼らの呑んだ条件とは――


 ○四名まで。

 ○僧侶・戦術士以外の方。

 ○この団には死神クライ=フォーベルンがいるので、彼を嫌う方は必要ありません。

 ○経験は問わず。

 ○退団歴は気にしませんし、こちらから退団させることはありません。

 ○入団した場合、退団することは出来ません。


 ――というものだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ