第一章34 『報告があります』
「――てなわけで、俺達はカップルになった」
「そ、そういうことです」
ギルドからメンバーが帰ってきたのは、予想通り三日目の夜だった。
疲れたメンバーには衝撃の報告だったので、その翌朝、通常はルート会議の時間だが、報告があると切り出して、クライとミスティールはメンバーに付き合ったことを報告する。
「やっぱなぁ! 兄貴、おめでとうございます!」
「おめでとうございます、クライさん」
「ふむ。お似合いというか、なんというか……おめでとう」
レクシス、シェド、アスカの順に祝いの言葉が飛んできたが、メアリだけはプルプルと震えながら、目に涙をためてクライを睨んでくる。
「クライのアホ! 私が誘わなかったら、ミスティとだって会えなかったんだから! 本当は私に感謝すべきでしょ!」
「まあ、そうだけど……メアリはどうしても、異性として……な?」
「な? じゃないよ! わけわかんないよ!」
「か、彼女というより、親友ってポジションに近いんだよ。何かとマリーに似た部分もあって、重ねてるのかもしれないけど」
「友達じゃ恋愛に発展しないじゃん!」
メアリが半泣き状態で暴走を始める。
しかしこれには、他のメンバーも止められそうになかった。
そんな中、隣に立っていたミスティールが彼女へと歩み寄る。
「メアリちゃん、約束、憶えてるよね」
「約束?」
クライ他、レクシス達が首を傾げる中、メアリだけは思い出したように歯ぎしりし始めた。
「ミスティ、約束って?」
「はい。実は……二人で約束してたんです。どっちがクライさんと結ばれても、結ばれた方を応援するって」
いつの間にそんな密約を。
どうやら、俺の知らない所で恐ろしい取引がされていたようだ。
「メアリちゃん……」
「く、ぬう……絶対にクライは私狙いだと思ったのに! だって私の方がクライのこと知ってるし……この、ぬあああっ! おめでとう!」
絞り出すように祝いの言葉を口にすると、ちょっとばかし拗ねてしまう。
しかしメアリ、すまない。
お前のアタックがあったのなら、一つも気付けていなかった。
メンバーへの報告は、これにて完了した。




