第一章28 『帰ってきた伝説』
防衛戦の終了を見守っていた最強の探求者カイウスは、今の勝負に笑みを浮かべた。
「やっと帰ってきたな、クライ」
その言葉に、近くにいた仲間も頷く。中には同じく笑う者もいれば、真剣な表情の者もいた。
「さあ、ベルハを迎えに行くとするか」
一方、巨大な斧を背負った強面の男も、不気味な笑みをたたえている。
「噂は本当だったか」
「すぐに接触しますか?」
「いや、接触することはない……。あいつは戻ってきた。それだけでいい」
「デリーウェルさん、それでいいんですか?」
「お前は、意見するのか?」
「い、いえ」
「……あいつは、オレの認めた男。これで死神を馬鹿にする者を狩らずに済む」
特別優待席では、歓喜の声を上げるメアリたちの後ろで、リリーゼとミカが懐かしそうに先程の試合を思い返していた。
「姫さん、間違いないってことだね」
「はい。一分未満には驚かされましたけど……この戦いを見て、彼を死神と呼ぶ者は減るでしょう。そして知らぬ者は再認識します。クライ=フォーベルンという探求者を」
「最近は、デリーウェルの野郎との小競り合いでつまらなかったけど、ようやく面白い男が、面白い連中と一緒に帰ってくるってことだな」
「ええ。ですが彼らはまだ、クライ様には相応しくないですね」
「姫さん、ヤキモチか?」
「い、いえ! ただ、彼らが力を付ける日が楽しみですわ」
そう言って、リリーゼは耳を澄ませる。
彼らの声を覚える様に、聴覚に神経を集中させる。
「クライ様は、彼らをどのような探求者に育て上げるのか。注目ですわね」